あらすじ
本書は、これまでに光嶋さんが設計した《凱風館》も含む8つの住宅と、いつか建てたいと思っている自邸、合計9つの住宅をめぐる物語をまとめたものです。書き下ろしのテキストに加え、各住宅の写真と間取り図、そしてお施主さんたちからいただいた生の感想文も収録したことで、少し変わった「作品集」になりました。この物語を通して、世界に一つだけのそれぞれの家がつくりあげられるまでを、一緒に体験していただければと思います。これから家をつくる方にも、そうでない方にも、暮らしの原点である住宅を見つめなおすきっかけを、きっと与えてくれる1冊です。
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Posted by ブクログ
この本は、筆者が設計した9つの家を、それぞれの住人や関係者の目線から語り口調で紹介するというスタイルで進行していきます。
なぜなら、筆者は設計士として、住宅を作るということは、住居者のライフスタイルについて考えることと同義であると考えているためです。
ところで、私は、DIYが好きで、全てのものを自分で作りたいと思う性分なのですが、どうやらそう考える人は少ないらしく、周りの人から何故買わずに作るのかと聞かれて、答えに困ることが多かったのですが、この本を読んで、私の思考を代弁してくれているかのように感じて、嬉しかったです。
p105 「家の本当の機能は人間の生活を守るシェルターだ。あるいはより快適に、自由に生きようとする道具でもある」
つまり、家には2つの側面があって、シェルターのような商品として考えたときには前者、自分のライフスタイルを表現するための道具として考えたときには後者の側面があり、私は後者として捉えているということ。
p108 住空間に「ひだ」が多く、住まい手がつい何かしたくなるような家は、いつまで経っても完成することがない。ずっと未完のままということは、住宅という機械(道具)を常にいろんな角度から操ることを住まい手が試し続けている証でもある。いつも考えて、自由に変容する空間を楽しみながら、絶えずつくり続けること。そうすると、住宅が日常空間を彩るメロディを奏でることができるだろう。
つまり、私がモノを作ったり、作ったものをスクラップしたりリビルドしたりリサイクルを絶えず考え、常に何かしらを作ろうとしているのは、人生のライフスタイルの変容に応じたより快適な住環境へのアプローチであり、自由の表現方法だから、楽しいんだということが、理解できました。