あらすじ
水尾市の市会議員である鐘崎義介は酒造会社と市政に批判的な新聞社を経営するやり手。だが、温泉で出会った女・カツ子が自室の西洋風呂で見せる、若く奔放な姿態に溺れる。地方の名士である男は、都会的なものの虚飾に魅せられて破滅の道をたどり、やがて殺人を招き寄せていく! 地方政界に渦巻く欲望と利権を描くとともに、“アリバイ崩し”にも挑んだ本格推理長編。
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Posted by ブクログ
「松本清張」の本格推理長篇『梅雨(ばいう)と西洋風呂』を読みました。
『西郷札 傑作短編集〔三〕』、『私説・日本合戦譚』に続き「松本清張」作品です。
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水尾市の市会議員である「鐘崎義介」は酒造会社と市政に批判的な新聞社を経営するやり手。
だが、温泉で出会った女「カツ子」が自室の西洋風呂で見せる、若く奔放な姿態に溺れる。
地方の名士である男は、都会的なものの虚飾に魅せられて破滅の道をたどり、やがて殺人を招き寄せていく!
地方政界に渦巻く欲望と利権を描くとともに、“アリバイ崩し”にも挑んだ本格推理長編。
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鬱陶しい梅雨の季節に発生した殺人事件のアリバイ崩しを描いた本格推理長篇です、、、
とはいえ、殺人が起こるのは、終盤になってから(全300ページの261ページ目)… それまでは、酒造会社と地方新聞社を経営し、水尾市の市会議員である「鐘崎義介(かねざきぎすけ)」の視点から、彼の経営する地方新聞社での市政批判や広告料、賛助金名目での恐喝まがいの資金集め、記者として雇った「土井源造」の成長と裏切り、波津温泉で出会った若く魅力的な娘「カツ子」との艶話、地方政界でのドロドロとした派閥争い等々が描かれ、読む側の気持ちは「鐘崎義介」の殺意が徐々に高まっていく気持ちとシンクロしていきます。
そして、殺人事件が発生してから興味は一転してアリバイ崩しに移ります… 「土井源造」の死亡推定時刻に、「鐘崎義介」には明確なアリバイがありましたが、大降雨の中、早朝から出かけるという、新聞の取材とはいえ不自然と思える行動をしており、第三者に証言させるための作為的な行動によるアリバイ工作が疑われるものの、死亡推定時刻が変わらない限りは起訴することができない、、、
法医学の知見がないと全く想像できないトリック… 死亡推定時刻を偽装するトリックが使われていましたね。
そのヒントになっているのは、本書のタイトルにもなっている梅雨と西洋風呂、、、
「カツ子」が愛用していた西洋風呂での行動(身体をくるくると回転させて血液の循環を良くする)がトリック考案の伏線となっており、その季節を梅雨時期にしたことにより死体を風呂に浸けたことを隠すことができたんですね… へぇー、って感じでした。
動機の部分で社会派推理が愉しめ、アリバイ崩しで本格推理が愉しめる作品でしたね。