あらすじ
ジェロントロジーとは、高齢化社会のさまざまな課題を解決することを目的とする学際的な学問。体系的な学びを通して、自分の生き方と社会のあり方を変えていく。今なぜジェロントロジーが必要なのか? 異次元の高齢化社会を生きるための「知の再武装」とは? 現実と向き合い、知的格闘を続ける著者が熱く語る、新・学問のすすめ。
私は「高齢化によって劣化する人間」という見方を共有しない。もちろん、老化による身体能力の衰えを直視する必要はある。だが、人間の知能の潜在能力は高い。心の底を見つめ、全体知に立ってこそ、美しい世界のあり方を見抜く力は進化しうる。「知の再武装」を志向する理由はここにある。
──(「序 ジェロントロジー宣言」より)
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Posted by ブクログ
民主制をとる国家において、最近異変が生じている。たとえば、英国におけるブリジットの問題のように、ギリギリEU残留を国民が選ぶだろうという多くの予想を裏切る選挙結果になる。これは、投票権をもつ若年層がEU離脱に反対であるのに対して、比較的多数である高齢者が優位にたったためではないか、といわれている。その結果、EUに残った場合に得られたであろう利益を英国は失ったかもしれない、というのである。
民主制そのものにおいて、選挙という制度は選挙の結果において、国民の意思の総体という擬制がされていて、よくもわるくも実は国民の総体における意思決定は正しいはずだ、という擬制がそこではされることになる。
ところが、国の明暗を左右する選挙のような場面で国民の意思決定が、比較的多数においてこれから未来を担っていく層の利害を害する形でなされることは、それが多数決だからといって問題がないのか、という悩みがこの本の根底にはある。
実は、日本でもその傾向はないとはいえないからである。
そもそも、選挙において、自由な意思決定がなされているか、どうかははなはだ疑問である。簡単に煽られ、操られるあやうさが絶えずある。しかし、それを繰り返していくと、社会を成り立たせている力をだんだんと削いでいくことにもなっていく。
この本では「知の再武装」をとき、「高齢化によって劣化する人間」とういう見方を共有しない。どのように高齢者層を豊かにしそれによって社会を豊かにするか、の提案の書である。
社会の構造がAIや、気候変動、人口問題、…
などによって揺さぶられ続けている。生き抜く力をどのように手に入れるか、という志向の本でもある。
Posted by ブクログ
【ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く】寺島実郎著、NHK出版、2018年
「今度、札幌に行くから食事をしよう」
と誘っていただき寺島実郎さんと本当に久しぶりにご飯をご一緒した。
初めて会ったのは早稲田を卒業する年だった。
三井物産のオフィスに緊張して行ったのを覚えている。
それから10年以上お会いすることはなかったが、再会したのはソフトバンク社長室の時。様々な会合でご一緒し、グッと距離が縮まった。復興支援財団の評議員もお願いして就任してもらった。
校長になってからは初めての機会だった。
「荒井くんが頑張っているのは各方面から聞こえてくるよ」とおっしゃっていただいて驚いた。
普段なら寺島さんの話に耳を傾ける一方だったが、気がついたら教育のこと、高校のこと、を沢山話していた。
あれだけアウトプットされる方は、インプットの量も質も桁違いにすごいのだ、と別れてから思い至った。
本書のタイトルになっている「ジェロントロジー:Gerontology」とは「老年学」と訳される。高齢者にまつわる学問領域で、身体、心、生活、社会などを分析している。
本書で、団塊の世代が社会のお荷物にならないためには「知の再武装をすることだ」という寺島さん。
同時に、僕達団塊ジュニアのこともすごく心配されていた。どの組織でも中堅マネジメントになった40代が今の変化に対応できていないそうだ。
僕は小学校まで昭和の教育、中学校から平成の教育を受けたが、日本の教育の一つの帰結のような気がしている。
では、令和の教育とはどうなのか。
寺島さんは多摩大学の学長でもあり、沢山の示唆を頂きました。
本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
#ゆたか読書