【感想・ネタバレ】おいぼれハムレットのレビュー

あらすじ

<「長ろうべきか死すべきか」で評判をとりました、後日譚でございます。>――知の巨人・橋本治、まだまだ本気でふざける!落語世界文学全集ついにスタート。

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Posted by ブクログ

長い落語である。
真冬のデンマーク。真夜中、城壁のてっぺんには、北風が吹きつける。「うー、さぶい。さみい! 出ねェなァ」と言いながら、父の亡霊を待つ、ご隠居のハムレット。それにお供するホレイショー。ともに齢80を過ぎている。のっけから、落語の名調子。
『ハムレット』の原作通りのオールスターキャスト。みな高齢だが、それぞれ自分の文脈、自分の世界で生きているのがすごい。大臣のポローニアスなんか、108歳だもんね。尼寺に行ったはずの娘オフィーリアも70過ぎてるし。でも、筋書きは一応原作に即して進行する。違うのは、だれも死なないことか(みな棺桶に片足を突っ込んでるけど)。
物忘れ、記憶違い、勘違い、遠い耳(でも悪口はよく聞こえる)、よろよろ、よぼよぼ、ふがふが。お互いに、だれがだれだかわからなくなりかけている。同じ名前の父親なのか、息子なのか、孫なのか(原作でもハムレットの父親はハムレットだったもんね)。そんな老人たちの交わす会話の妙。ことばのキャッチボール(あるいはすれ違い)に、笑いを通り越してただただ唸りまくる。さすが橋本治。
もしシェイクスピアがこれを知ったら、怒ったか抱腹絶倒したか(後者かもね)。でも、芝居でないところがよかったね。ちゃんとした落語だもんね。
(橋本治の「落語世界文学全集」はこの1巻で終わってしまった。もっと読みたかったのにな。残念至極。)

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2025年05月07日

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