あらすじ
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先崎学・中村太地が20世紀の名勝負を語り尽くす!
将棋史に残る名局を紹介、解説した本は数あれど、それだけで対局者の深い読みや心情まで読み取るのは難しいものです。
そこで、プロ棋士2人にその名局を肴に自由に語り合ってもらったらどうか、というのが本書の出発点です。
その場合、2人のプロ棋士は実力はもちろん、対局者の機微を言葉で伝えられる方で、なおかつ互いに心を開いて話し合える間柄でなくてはいけません。
そこで生まれたのが本書「先崎学&中村太地 この名局を見よ! 20世紀編」です。
テーマとして語れるのは以下の13局です。
第1局 木村義雄名人VS大山康晴八段
第2局 大山康晴名人VS加藤一二三八段
第3局 升田幸三九段VS大山康晴名人
第4局 中原誠十段VS大山康晴永世王将
第5局 中原誠名人VS大山康晴十段
第6局 森けい二七段VS内藤國雄九段
第7局 米長邦雄棋王VS中原誠王位
第8局 米長邦雄棋王VS大山康晴王将
第9局 真部一男七段VS佐藤大五郎八段
第10局 大山康晴十五世名人VS米長邦雄二冠
第11局 大内延介九段VS森けい二王位
第12局 先崎学五段VS村山聖五段
第13局 羽生善治名人VS谷川浩司竜王
それぞれ将棋史に残る名勝負であるるとともに、将棋の内容も面白いものばかり。これらを題材にお二人に語っていただくことで棋士の対局時の心情や読み筋、大局観に触れることができます。
楽しく名局観賞しながら棋力アップにも全将棋ファンにオススメの一冊です。
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Posted by ブクログ
好きな棋士は?と聞かれれば、森雞二と答える。(「鋼鉄のマシュマロ」こと力戦派の森安秀光の将棋も好き)
初めて森の棋譜を見たのが、確か高校時代に新聞の棋聖戦予選(だったと思う)で、まだ七段の森が昼休みを返上して対局室の明かりもつけずにヨミに没頭する姿を観戦記者が「闇夜の棋士」と表現したのが印象的で、特に逆転勝ちが多い(逆に言えば序盤から作戦負けになる)ため、「終盤の魔術師」との異名も。実際、「中盤まで4:6の分かれなら私が有利」と終盤戦に絶対的自信を持っていた。それ故に勝利に対するこだわりもハンパなく、対局中の控え室モニターに向かって「間違えろ」と相手に念を送っていたらしい(「週刊将棋」記事によると、その甲斐あってか相手が何度か悪手を指したらしい)。人の目を気にせず己の最善手より相手の悪手を念じるところがいかにも人間くさい。
そんな森将棋に本来のゲームとして持つスリルとワクワク感を感じとったのが、先崎学八段。「一葉の写真」では森将棋の魅力に心酔していたのがよくわかる。そんな森贔屓の先崎が紹介する名局案内なので、読まない訳にはいかない。共著は中村太地で二人とも米長邦雄門下。18歳離れた二人は飲み友でもあるらしい。
森将棋から選局されたのは、あの歴史的大逆転劇で有名な二上棋聖とのタイトル戦第一局(芹澤博文氏の30譜にわたる新聞観戦記も有名)ではなく、内藤國雄九段との昇級をかけた順位戦B1の持将棋指し直し局が選ばれている。終局は持将棋をはさみ翌朝の3時45分という熱戦で森が魔術師ぶりを発揮して逆転勝ち。(ちなみに選ばれた13対局の内、森のもう1局は順位戦での森王位対大内延介九段戦で、大内の勝ち)
その大内延介先生とは引退後に新橋で彼の所蔵品である将棋盤や駒の展示即売会がありお会いしてお話させてもらいました。それから数年で訃報を聞き驚きました。
そんなことを思い出しながら読みました。
P.S.
森先生と大内先生は、まだ二人とも若手時代に森先生が大内宅に押し掛けて1日何十局も指していたそうです。晩学の森先生は棋譜並べではなく、実戦で強くなった棋士です。42歳で谷川浩司王位に挑戦した時、「体で覚えた将棋をみせる」と語って見事に奪取。ちなみに、弟弟子の郷田真隆九段は破天荒な森将棋とは真逆のプロ棋士が憧れる格調高い正統派ですが、「いい手は指が覚えている」と兄弟子を彷彿とさせる名言を残しています。
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【1988年、第29期王位戦に谷川浩司王位の挑戦者として登場した際マスコミに、「身体で覚えた将棋を教えてやる」と発言し谷川を挑発。下馬評では当時名人だった谷川が有利との見方が大勢だったが、3-3で迎えた第七局、十八番のひねり飛車で谷川を破り、王位を獲得した。次期谷川がリターンマッチを挑む際「あれだけやられたのにまだ懲りないのですか」と再度挑発し話題となった。番勝負は1勝4敗で森の防衛失敗となった。(Wikipedia)】
【先崎学は十代の頃森の将棋に心酔し集中的に並べたという。プロになった先崎は、当時低迷していた森との対局に当たって坊主頭で現れた。ただし、河口俊彦に「彼は君と指せるからというので坊主になってきたんだ。しっかりやれよ」と教えられるまで森本人すら「なにか坊主にならないといかんようなまずいことをしたんだろう」としか思っていなかったという(河口『人生の棋譜 この一局』新潮文庫)】