あらすじ
このヒロインには、何もかも話したくなる。
おたふく顔、東北出身の32歳。弁当屋の看板娘、原之内菊子には特殊な能力がある。その顔を見た者は皆、“自分語り”が止まらなくなってしまうのだ。悩み、グチ、恋心……菊子の前では、隠していたホンネがダダ漏れに。
崖っぷち編プロ「三巴企画」の戸部社長は、菊子の力に惚れ込み、インタビュアーとして採用する。ただ頷いているだけで次々に特ダネを取ってくる菊子だが、ヤクザの組長の取材をしたことから、とんでもない事件に巻き込まれてしまい――!?
大ヒットした『猫弁』シリーズやロングセラー『あずかりやさん』、映画化された『猫は抱くもの』(犬童一心監督、沢尻エリカ主演)などで読書ファンの心を掴んでいる大山淳子の新たなる傑作。
大爆笑でにじんだ涙がいつしか温かい涙に変わる、前代未聞の“おしゃべり小説”!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自分は人の話を聞くのが好きだし、人に話すのも好きだ。
つまり雑談というコミュニケーションが好きだ。新聞記者のインターンをしたのも、きっとそれが関わってると思う。
人に何か聞くときは大体にして好奇心と興味が理由なので、「自分はあなたの話を聞きたがってますよ!」と伝える為に相槌をうつのだけど、主人公の原之内 菊子に相槌は必要ない。ただ、「はあ、へえ」と言ってるだけで一方的に相手が話してくる特殊な体質だ。
作中に根っからの悪い人ってのは出てこなくて、みんなどこかにユーモラスが備わってる。
自分が練馬在住なので練馬のにんじん畑の話には笑ってしまった。作品中に優しさが溢れてるから安心して読み進んでしまった。
物語の終盤に今までは聞く専門だった菊子さんが延々と語るシーンがある。
彼女には語る相手が必要だった。
会話をキャッチボールだとか、ラリーみたいな例え話をたまに耳にするけど、そんな同一テンポのやりとりなんてそんなに存在しない。
片方が喋り倒す時だってあるし、聞いてばかり時もある。
でもどこかで聞き手と話し手がフェアにならないと、関係性や信頼が崩れてしまう。
作中メインの話し手「桐谷」が終盤、菊子さんについて全然聞こうとしていなかった事に気づいて探しに行くのだけれど、いざ菊子さんも再開するとチームメイトとして迎えていれてるに留まっていて、とても自然だった。
上京してからずっと探していた居場所を見つけた菊子さんを想っただけで泣いてしまった。大人になってから上京した自分と、きっと重ねてしまったんだと思う。
聞く・話す
あまりにも日常にありふれた2つのコミュニケーションについて、もう一度考える事が出来た物語です。