あらすじ
〈クリニックを開業するのは、患者さんたちの身体といっしょに人生の風景を眺める、冒険旅行になぞらえられるかもしれない。よく知っている地形に見えても、往々にして分け入った小道が開けて、日々新たなパノラマをのぞくことになるのだ〉ルネサンス期、魂がどこよりも近くにあると考えられていたのが、唇だった。形を変えただけで息が温かくなったり冷たくなったりするのが、生命力の証拠だと思われていたのだ。また一七世紀の天文学者たちは、星の見え方をもっとよく知るために、目の構造に注目した。私たちの身体は、いつでも世界を知るための冒険の入り口だったのだ。スコットランドの総合診療医フランシスは、ときに救急医や従軍医として、さまざまな患者を診てきた。顔半分だけが麻痺した女性、手のひらを釘で打ち抜いた大工、直腸にケチャップの瓶が入った男性……。本書はそんな患者たちとフランシス、そして人体の解明に挑んだ偉人たちの冒険の物語だ。小説のような文体に人体をめぐる薀蓄を交えた、「読む人体図鑑」とも呼べるノンフィクション。さあ、人体をめぐる旅に出よう。
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Posted by ブクログ
医療エッセイとのことだが、非常に文学的な本だと思った。同時に本格的でもある。挿絵も著者のこだわりが感じられ、芸術的。本文にもあるように人体をある種の芸術作品と受け取る方なのだろう。人体に敬意を持って接していて、素晴らしいなと思った。
Posted by ブクログ
うっとりしながら読んだ、スコットランドのお医者さんのエッセイ。訳者が「音でも聴きたい」とオーディオブックを手に入れたほどの名文で綴る、人体にまつわる古今東西の四方山話や患者のエピソード。ブンガク的に書ける何かのプロの作品は、本と向かい合う時間をとても豊かにしてくれる。
Posted by ブクログ
人体の構造について医学用語を使い、その構造の説明があるんだけど、まぁ難解…。器官、臓器ごとに章が分かれていて、それぞれ1人以上のエピソードがあり、そこでより現実的に感じる。
1回目は難しいなと思いつつ読み進め、1回で終わるのはもったいない気がして、2回目読むと、すんなり頭に入ってくる。
医学の歴史、医療の歴史、治療の歴史が興味深い。合間合間に入ってくるギリシャ神話や、古典、聖書の挿話。これが、すんなり入って、なぜここにその挿入話が来たのかわかるのが、教養ある人なのかなと、本編とは関係ないことも考えた。