あらすじ
芥川賞候補となった話題作、そしてその後の物語――。
小説家の千紘は、編集者の柴田に翻弄され苦しんだ末、ある日、パーティ会場で彼の手にフォークを突き立てる。休養のため、祖父の残した鎌倉の古民家で、蔵書を裁断し「自炊」をする。四季それぞれに現れる男たちとの交流を通し、抱えた苦悩から開放され、変化していく女性を描く。
芥川賞候補作「夏の裁断」と、書き下ろし三篇を加えた文庫オリジナル。
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Posted by ブクログ
思った以上に良かった。夏の裁断だけだったら、きっと振り回されるだけの話で辟易としてたと思うけど、秋冬春とぐねぐね曲がった回復の道を辿る様な感覚でとても良かった。つまり評価された夏より秋冬春が私的には好き。主人公が心理学専攻だった設定により、精神的不安定さが論に基づいて表現されているのが◎ポイント。
はじめての島本さん作品。細かく感覚的な部分が書かれていて、主人公と同一の体をもったかのように読める。引き込まれる。他の作品も読んでみたい。
夏の裁断:何が本当で何が嘘なのかわからなくなった。特に後半。ただ、千紘の主観だから嘘も本当もなく、そう感じたらそれが本当になるのだろう。千紘の主観が積もったものが過去であり、それに囚われているのだから。
柴田さんの洗脳するやり口と、千紘の振り回されっぷりはすごい。猪俣くん相手だと一歩引いて感じだり考えたりしてるのに、柴田さんにはできずに視野がとても狭くなっているのがよくわかる。柴田さんの話は主観が強すぎて、読んでいて車酔いする感覚。
清野さんの、他人とは距離を置く不思議な関係ではあると思う。生い立ちも影響して恋とか愛とか相手と混ざり合うものは苦手なのかな、と。
奪いもしない与えもしない相手といるのは、自分も強く自立しなければ不安定になる。関係性に名前があったってずっと繋がれるわけではない。
囚われていた過去やひっかかりのある人間関係に向き合うまで成長して、自分なりに新しく解釈(意味付け)をすることで前に進むことができてスッキリした。すぐには変われないけど、自分と向き合い考えて行動するとこれからどう生きていくかは変えられる。と思える小説。
Posted by ブクログ
主人公は女性小説家で、作中で祖父の本棚を整理している。そんな彼女は本作で複数人の男性に出会い、そのなかには肉体関係を持っているが、過去のある出来事もあって、男性との接し方がぎこちなく、男性側のわがままに振り回される。本作は4つの短編で構成されているが、いずれも大人の男女関係を克明に描写されている。
Posted by ブクログ
過去に受けた傷と、その克服について、
書かれた本だったかと思います。
千紘は幼い頃に性加害を受けたことがトラウマとなり、自己と他人の境界線が曖昧になって、自ら傷つきにいってしまったりと、自分を守ってあげていないような気がしました。
作中で何度も行われる自炊も、作家である千紘が裁断機の刃を本の背表紙に当てるのは、自傷行為の暗喩のような印象です。
自分でも自分を傷つけて、他人の男からも傷つけられて。。夏の章は中々苦しかったです。
ただ、秋冬春にかけて、自己と他人の境界線の引き方を学んでいけたのかなと、
自分が心地良いように過ごせる生き方が見えてきたような兆しがありました。
過去の性加害最低野郎とも、それを知ってた上で過去も今も守ってくれなかった最低母親とも、
破壊衝動的なとんでも最低編集者とも、
まさに裁断なのです。
王子と、猪俣君と、清野さんは、千紘が自分軸で動けるように必要な出会いだったと思います。
最後のシェイクスピアの名言も良かったです。
“A rose by any other name would smell as sweet ”(バラはどんな名前であっても、その香りは変わらない)
清野さんとの関係に説明できる名称は無いけれど、
お互い会いたいと思い続けることは美しいし、それは愛し合っていると言えるのかなと。
人間関係の本質を考えさせられるような一冊でした。
Posted by ブクログ
千紘や清野さんにいろんな過去があったように、王子が思っていたよりしっかりとした考えを持っていたように、他人の全てを知る事ってなかなか難しくて、それぞれみんな悩んだり考えたりしながら生きている。
清野さんへの気持ちを「夕暮れが綺麗で寂しくて愛しいのに似ている気がします」と言った言葉がとても美しいなと思った。
千紘の沈んだりしながらも徐々に前に向いて進んでいく姿がとてもよかった。
教授の優しさもじんわり心に沁みた。
Posted by ブクログ
区切りがないと、関係性に名前がないと、約束がないと、不安でいてもたっても居られない
自分に価値がある人間かどうかが分からないから、いつも謙遜してしまう
主人公ほどの過激な世界ではなくとも、多くの同世代の女性が感じたことのある葛藤や哀しみなのでは、と思い、胸がキュッと苦しくなった
漠然と幸せになりたいって思うけど、色々な幸せのかたちがあることを教えてくれる人は少ないし、自覚するのにもパワーが必要
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初めて心から、幸せになりたい、と思った。
私は清野さんじゃない誰かと付き合って、正しい約束をして、そして、幸せになりたい。
Posted by ブクログ
柴田は本当に腹が立つ男で、厳しい制裁を受けてればいいなと思う
でもその他の男性と千紘の関係についてもモヤモヤする
過去のトラウマを乗り越えるために無意識にしてる行動かもしれないけど柴田と似たり寄ったりじゃないかと感じる所もあった
書き下ろし三篇があって良かった
Posted by ブクログ
意味が欲しい。自分が一緒にいる意味が。
島本理生先生王道。過去に大人の男の人に虐げられ、助けてくれない母親をもったがために不安定で男の人に流されてゆく主人公。
正直、またかと思いつつも、変わりゆく主人公を見届けました。
良い春を迎え、最後まで読んで良かった。
そして、また手に取ってしまうんだろうな、島本理生先生の本。
救われていく様を見て、私自身も救われているのかも。
三冊目
島本理生作品は10年以上前に「リトルバイリトル」を読んで以来3冊目。いずれも好みではない。電子書籍化も少なかったのでずっと読んでこなかったが、直木賞受賞後、電子書籍化が増え、クーポンもあったので「ファーストラヴ」とこちらを読んでみた。「ファーストラヴ」の方が断然良かった。
特にこの夏の裁断は、何が言いたいのかよくわからない箇所があったり唐突に過去の回想が始まったりと読み辛く、作者の技術力や表現力の不足を感じる。
主人公の性的トラウマと母娘の信頼関係の破綻は、作者のお気に入りの設定なのか。
島本理生作品をすべて読んでいる訳ではないからわからないが、この設定にはもう飽きた。