あらすじ
「私と一緒に『西遊記』を旅しましょう!」。全アジアで千年もの長きにわたり親しまれている、玄奘と孫悟空たち一行の旅の物語。“人・本・旅”が生きる糧となると説く著者が、壮大なユーラシアの歴史や人々の営みから、「君たちはどう生きたらエエのか」を、若い読者に向けわかりやすく示す。
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Posted by ブクログ
私はこの本で初めて出口治明先生を知り、大ファンになった。
よく行く書店でふとこの本が目について、手にとってみたら、『西遊記』が成立した背景や中国の歴史から書かれていて、すごく興味がそそられたので購入。
日々なんとなくパラパラめくっていたけど、今回ちゃんと全部通して読んだ。
素晴らしいです。
出口先生、尊敬してやみません。
経歴を見るとビジネス畑の人としか思えないのに、なぜか歴史の造詣に深すぎるという不思議な人。
優しく丁寧にわかりやすく説明してくれるこの本で、すっかりファンに。
この先生についていけば、バラバラだった知識がつながって世界の歴史が体系的に、深くわかるようになるかもしれない、と思わせてくれた。
この薄い本一冊で、中国の歴史だけでなく世界の歴史、文学史、思想・哲学・宗教史、ひいては人生論まで語られていて、知的好奇心が刺激されっぱなし。
そして読書の楽しさ、古典の面白さもひしひしと伝わってきて、ワクワクしっぱなし。
『西遊記』はもちろん、古典をいろいろと読みたくなった。
なにより心をつかまれたのが、「読書に教訓を求めない」という話。
「本で何かを学ばなくてはいけない、教訓になるという考え方はどうか捨ててください」
「本を何冊か読んだくらいで、仕事ができるようになることを期待するなんて、そもそも人生をなめています」
「自分が面白いと思う本を読むのがいちばんです」
面白い本こそ、記憶に残り、人生の糧にできる、のだそうだ。
これでいいのだ!
Posted by ブクログ
「西遊記」全10巻を読み終えたので、こちらの本で旅を振り返ってみました。背景として中国の歴史を頭にいれて読むと、西遊記の世界がまた広がる感じがします。
遊牧民が作った唐の国。国を治めるために仏教の力を借りたこと。三蔵の旅は本当の話で17年かけてインドからお経を持ち帰ったこと。ちょうどそのころは、中国もインドも平和な時代だったから旅が可能だったこと。西遊記の話は、三蔵の旅の記録をもとに宋の時代に講談として語り継がれ、明の時代に現在の西遊記の形になったこと。なるほどなぁ。
仕事ができるようになるために本を読んではいけない。そんなことで仕事ができるようになると考えることは人生をなめている、という出口さんの言葉も印象的でした。本は楽しむために読むこと。楽しめた本こそが、人生のどこかで役にたつ。なるほどなぁ~。
Posted by ブクログ
孫悟空と言えば、西遊記よりドラゴンボール。最遊記というマンガも昔読んでたな。西遊記は1度も読んだことがなく、世代も違うのでドラマも観たことがない。天竺を目指すことくらいしか知らなかったので、今度子ども向けの短いものでも読んでみよう。
出口さんが解説する歴史的背景や、孫悟空や三蔵の魅力に加え、「古典は間違いない」とよく仰っているので今年こそは古典をもっと読みたい。西遊記とは関係ないが、「読書に教訓を求めない」が響いた。好きな本を楽しみながら読むのが一番。
Posted by ブクログ
中学生に向けて語られた講義をまとめたものなので簡単です。古典がおもしろくないのは、時代背景を知らないからだとおっしゃっていて、中国の歴史を語られているところが一番おもしろかった。講談のような形式で伝わった話しなので一貫性がないとのことである。細かい解説により、何故、孫悟空が猿なのか、石に閉じ込められていたのか?。何故、弟子は三人なのか?。色々わかって楽しい本ではあります。
Posted by ブクログ
出口治明さんは、ボクが好きな著者の一人だ。とても良心的な方なのだと思う。しかもわかりやすく共感が持てる。ビジネスは「数字」「ファクト」「ロジック」であるという出口さんの言葉は、ボクは会社でも使っている。
さて、出口さんが語る『西遊記』だが、出口さんの語り口の特徴の一つは、歴史を俯瞰的に見る視点で出来事を捉えていることだ。玄奘三蔵がどういう時代に生きていたのか? どうしてインドまで行く必要があったのか? 孫悟空は英雄キャラではなく、なぜ、ハチャメチャキャラなのか? などなど。一方で出口さんは、人間の本質をそんなに偉いものではないと捉えている。欲望もあれば、野望もある。そんな感情的なものに支配されながら織り成す出来事が歴史を紡いでいると捉えている。まるで、その場にいるような肌感覚で人間の感情や行動を見ている視線もあるのだ。この、人間の能力はそんなに大きな差がある訳ではなく、本質はチョボチョボ(どんぐりの背比べ)という前提で物語を現場感覚で語りながら、一方で俯瞰的視線で歴史を見る。これが出口さんの歴史観の特徴ではないだろうか。
読書については、こんなことも言っている。
読書をしたら出世に役立つとか、教訓が得られるとか、そのような
考え方はどうか捨てて下さい。本を何冊か読んだくらいで仕事がで
きるようになれると思っている人に、僕はいつも「人生なめていま
せんか?」と言っています。そんなことはあるはずがないのです。
「こうすれば絶対に成功する」と書かれた本を読んだからといって、
直ちに成功するわけではないことは、少し考えれば誰にでもわかり
ます。すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなるのです。
人類の歴史は、そんなにスマートなものではない。歴史に整合性を求めたって仕方がないともいう。バトルがあって手に汗握る展開があったほうがワクワクするものだ。また、建前を主張する一派と、外野からヤジを飛ばす一派がいるからこそ、バランスが保たれ息抜きができる。その結果、秩序を継続的なものにできる。二重構造(=多様性)を持つものが強いということは、歴史が証明していると出口さんは言う。
リーダーがメンバーに整合性を求めすぎるのは窮屈だ。人間はそこまで立派な生き物ではない。ひとりひとりの意見も態度も違う。もしもリーダーがメンバーに整合性を求めすぎると、組織は不寛容になり衰退してしまうだろうともいう。
本著のすばらしところの一つは、この『西遊記』を高校生と議論しているところだ。若い高校生に出口さんは、この西遊記のポイントは「仏教」と「お笑い」だと思うという。このあたりが分かりやすくていい。ボクは会社の若いメンバーにも出口さんの本を勧めているが、こんなところが理由だ。