【感想・ネタバレ】チベット 自由への闘い ダライ・ラマ14世、ロブサン・センゲ首相との対話のレビュー

あらすじ

チベットの悲劇――中国の暴虐と人権弾圧の恐るべき実態を今こそ日本人は知っておかねばならない。中国に侵略・弾圧されているチベット。宗教などの自由が厳しく抑圧され、拷問さえ横行し、人びとはとてつもない苦境に置かれている。中国の力がますます強大になる今、日本人は「チベットの真実」を知らねばならない。「チベット人がチベット人らしく生きられるかどうか」は、そのまま、「日本人が未来にわたって日本人らしく自由に生きられるかどうか」に通じるのだから。チベット仏教の最高指導者にして、中国の弾圧から逃れチベット亡命政権を樹立したダライ・ラマ14世。チベット亡命政権が置かれるインドで生まれ、ハーバード大学に進学しながら、祖国のために亡命政権の首相となった若き俊英ロブサン・センゲ。両指導者との対話から浮かび上がる、驚くべき真実――。 「中国共産党の侵略は、一定のパターンで行なわれる。侵略は、嘘と猫なで声から始まる。目指すべき地に足を踏み入れるや、獅子身中の虫のように一挙に広がる。取れるものは取り、滅ぼせるものは滅ぼしていく。中国共産党の支配下に置かれた周辺民族は、現実にそのような悲劇に見舞われている。チベットではチベット仏教が厳しく弾圧されている。民族の誇りが根こそぎ奪われ、それに抵抗する者は圧倒的な力で物理的に粛清・鎮圧されていく」(「序章」より抜粋)

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Posted by ブクログ

こういう真実を知ることは大切だなと感じた一冊。読んで良かったし、安倍総理がこういう活動をしていたと知り、少し支持したいという気持ちが増えた。

読んでいて気になったポイント

⬛️人種差別や虐殺の歴史
まず、チベットの人達の拷問と虐殺は、文化大革命ではなく、その三年前に行われています。チベットの寺院の98%が壊され、10数万人いた僧侶の殆どが殺され、残ったのは僅か数千人。しかし中国は人権問題ではなく、文化大革命のせい、と歴史を歪曲しようとしています。拷問内容なども悲惨なものが多いですし、現在の人種差別もひどく、漢民族かチベット民族かで給料もちがい、失業率も異なります。


⬛️シンポジウムへの中国からの圧力
今回、櫻井さんを委員長に開かれたシンポジウムは、国会議員に対して中国政府が議員の選挙区を調べて有力な支援者に圧力をかけてくるなど、かなり汚いこともやられたそうです。それ故に議員ではなく櫻井さんが代表となったそうで、ダライ・ラマを呼べるアジア諸国はほぼ無く、日本はそれだけ自由を象徴した国であるということに誇りを持てました。


⬛️政治に翻弄されるチベット
アメリカのCIAが一時期中国対策のためにチベット人ゲリラ部隊を作っていたこと、そのアメリカの支援が打ち切られた後、数十年たってオバマ首相が支援金の形で復活させたこと、ジャスミン革命が中国でも起きそうになっていたり、中国での仏教信者が増えていることなど、時代と共にチベットに対する支援や政治的な環境が変化しつつあることもわかりました。同化政策により漢民族と一緒にされてアイデンティティを失わないことを祈ります。また、香港のデモは変わりゆく中国の象徴のひとつに思いました。


⬛️ダライ・ラマやセンゲ首相の言葉
厳しい環境にいるチベット人ですが、ダライ・ラマの頭の良さと懐の深さ、センゲ首相の不屈の精神に感動します。インタビューの中で、まずダライ・ラマ14世はこう話しています。

「中国の指導者たちの動機は 、誠実なものだったかもしれない 。だが知識と現実感の欠如 、思い違いのため 、彼らは誤った政策を実行したのです 。自由な国で自由に情報を得られる状況であれば 、指導者個人を批判することもできるでしょう 。しかし中国の場合 、彼らの生き方全体 、すなわち教育や洗脳 、歪曲された情報という点に 、より注目する必要があります 。」
つまり、共産党員も被害者だという話をしています。命を奪われかけた張本人のダライ・ラマ自身が人を否定せず環境から見ていくことに感動します。

そしてセンゲ首相は差別について、
「もし問題を解決できるなら 、なぜそれについて悩むのか 。もし解決できないなら 、なぜ悩むのか 」と 。自分で解決できない問題なら 、悩んでも仕方ありません 。前に進むだけです 。」
と述べています。なんという不屈の精神。

自分より圧倒的に過酷な環境で生きてきた2人がこのように語る内容に、感銘を受けました。


私がチベットのためにできることは本当に微力ですが、こういう本を読み、事実を少しでも理解して関心を持つことが大事だと思います。

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2019年09月11日

Posted by ブクログ

あまりに不当なチベット弾圧。虐殺。
それなのに、自分を虐げる中国に対しても、批判するのではなく、良い点は認める、その度量の広さに感銘をうけた。
チベットの置かれた厳しい立場がよくわかった。
だから、分離独立を求めない、中国の一部で良い。ただ文化、民族を認めてほしい、とそういうことだったのか……。
んな過酷な運命を受け入れる懐の深さ。前向きに生きていこうとするチベットの方達。本当にすばらしい。
(この本には仏教のことはあまり書かれておらず、日本の仏教との違いも触れられていないので、この本を読んで仏教について興味を持った人は池上彰の『仏教って何ですか?』を合わせて読むことをおすすめします。)

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2021年05月17日

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