あらすじ
庭に薔薇の花が咲き乱れるこの屋敷で、一緒に赤ちゃんを育てられたら……。
エミリアは奇跡のような妊娠を果たした――不治の病で逝った夫が体外受精専門クリニックに遺した精子を使って。ところが、ある日、出向いたクリニックで取り違えの事実を告げられる。おなかにいる子の父親が亡夫ではなく、知人の大富豪サムだなんて!独りで不安な彼女は、田園地方にあるサムの屋敷にたどり着いた。クリニックの院長からともに説明を受けたあと、“困ったことがあったら、いつでも来ていい”と言ってくれていたから。優しい出迎えといたわりの言葉に、エミリアの気持ちは激しく揺れた。ハンサムで精悍なサムに強く抱きしめてほしいけれど、赤ちゃんと私に対して何の義務もない彼に迷惑はかけられないわ……。
■いかにもイギリス作家らしい繊細な物語を紡ぐC・アンダーソンの新作をお届けします。身重のエミリアは、やむなくサムの屋敷で暮らし始めますが、けなげにも仕事と住む家を探そうと努めます。そんな彼女を見かねたサムは庭の手入れをしてほしいと申し出て……。
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Posted by ブクログ
良かったです。
体外受精で稀に起こる取り違え事件がきっかけで、急接近してゆく男女。その一組の男女が互いの過去を乗り越え、心からの信頼関係を築くまでを描いています。
男性も女性も、とても優しくて前向きな人たちで、読んでいる中に自然と応援したなるような恋愛でした。素敵だと思います。ただ、不妊治療中の取り違え事件は、あってはならないものだし、「素敵」で済むような問題ではありません。
これは小説だから、当事者同士が結ばれてハッピーエンドで終わりましたが、現実問題として考えた場合、どちらかに恋人や配偶者がちゃんと生存している場合もあります、そうなると、素敵どころか修羅場にしかならないですね。
(ちなみに、ヒロイン側の夫は亡くなり、ヒーロー側に恋人はいませんという設定です)
あとは内容とは関係ないのですが、文章表現が素晴らしいなと感じました。特に中盤辺りは「長文」と「短文」を重ねることで、大変メリハリのある文章になっており、テンポが良いというかリズミカルで勢いのある仕上がりは、読みやすく大変勉強になりました。
これは原文もさることながら、翻訳された方の力も大きいのかもしません。
良い作品に出逢えたことを感謝します。