あらすじ
鉤十字のピッケルが導くのは、絶望か頂か――
第2次世界大戦前、ヒムラーはひとりの兵士に史上初のエベレスト踏破を命じた!
虜になる作品。エベレストの頂(いただき)と登山家の内なる狂気へと読者をいざなう……なんというプロットだろう。見事と言うに尽きる。
――サー・ロバート・スワン(作家・人類初の徒歩による北極点及び南極点踏破者)
1938年。ドイツ猟兵部隊のヨーゼフ・ベッカーは卓越した登山技術を使い、
仲間と共にけわしい山を越え、ユダヤ人の国外逃亡を助けていた。
だが、ある日彼らは捕縛され友人たちは罠にかけられ命を落とす。
ただひとり生き残ったヨーゼフにヒムラーから指令が下る。
それは、ナチスのために人類初のエベレストを制覇しろというものだった――。
現代。ニール・クインは山に魅入られた男だが、
いまでは金のために山岳ガイドをしていた。
今回の仕事は少年冒険家のエベレスト登頂に付き添うことだったが、
少年は亡くなり危うく遭難しかけたところを救出される。
彼に残ったのは山中で発見した、鉤十字が刻まれた1本のピッケルだけだった。
そして、そのピッケルが彼の運命を大きく変えてゆく。
歴史ミステリと山岳小説の頂点!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
またまた格調高いタイトルに惹かれました。原題はSUMMIT。エベレスト登頂の厳しさが大変リアルに描かれてゾクゾクします。カトマンズの克明な描写も、まるでその場所にいるかのような気分になります。プロローグから、写真を撮ったのはあの人?写ってるのは彼?と色々想像を膨らませますが、そんなに単純ではないかも。二つのストーリーがどう絡み合うのか、構成が見事すぎて期待感MAXで下巻へ。
Posted by ブクログ
ハリー・ファージング『汝、鉤十字を背負いて頂を奪え 上』竹書房文庫。
山岳冒険小説の上巻。竹書房文庫はごくたまにやってくれるから、油断出来ない。キャロル・オコンネルの『マロリーの神託』以来の掘り出し物ではなかろうか。エベレストをテーマに現代と1938年とが交互に描かれ、わくわく、じりじりする展開が続く。この先は一体どうなるのか。下巻に急ぎたい。
現代。山岳ガイドのニール・クインは少年冒険家・ネルソン・テイト・ジュニアのエベレスト登頂に付き添っていたが、不慮の事故で少年を死に至らしめてしまう。少年の父親の逆鱗に触れ、命を狙われるクインだったが、エベレスト山頂付近で見付けた鉤十字が刻まれた古いピッケルの謎に少しずつ迫る……
1938年。イギリス人登山家・ヒラリーとシェルパのテンジンにより人類史上初のエベレスト登頂が達成される50年前。ドイツ猟兵部隊のヨーゼフ・ベッカーは仲間と険しい山々を越えてユダヤ人の国外逃亡に手を貸していたが、ナチスに捕縛される。自らと家族の命と引き換えにエベレスト制覇を命ぜられたヨーゼフは苛酷な挑戦に身を投じる……
夢枕獏の『神々の山嶺』にも描かれた誰が初のエベレスト登頂を果たしたのかという興味深い謎をさらに大きくしたような非常に面白い山岳冒険小説である。