【感想・ネタバレ】専制国家史論 ──中国史から世界史へのレビュー

あらすじ

自律的な団体性を欠いた社会と、意思決定の集中化した巨大な政治的統合。これは専制国家の指標である。中国はいかにしてその体現者となり、今日に至ったのか。本書は、封建社会を通過して近代国家へと展開を遂げた日本との比較検討をふまえ、中国という国家の特質をつぶさに炙り出す。グローバル化の進展とともに社会の団体的結合原理が解体し、政治決定の集中化が急激に進行する現代にあって、中国のもつ歴史的様態は、はたしてどのような示唆を与えるのか──。多分野の成果を取り入れ、人類史的視野から国家像を描出した渾身の論考。

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Posted by ブクログ

 今ある先進国というのは大概が、前近代に封建制を経由してきているのだけど、中国は古代から近代まで長く専制国家が続いてきた。その辺が、政治経済の面で中国に、他の先進国と比較して、どのような特徴をもたらしたかという分析。たしかに中国ほど長く専制国家が同一の領域で繰り返されてきた地域も世界中で他にないわけで、その観点で考察するべきことは多い。
 著者の論旨では、封建制のように社会が階層構造をとると階層内での自治や共同体意識が生まれるが、中国の場合は専制国家対個人といった形で階層が低次になり自治や共同体意識が育まれにくい。
 そのため、会社などの団体による個人の意思の領有が弱くなる(各職員の職務への忠実性が信頼できない)ため、制度やサービスの信用が低くなり、強い個人主義/自分で何とかする社会になる。政治面でも党派による党員への意思の統制が自主的には期待できず、個人崇拝や力による強制に頼りがちとなる。
 一方で、個人対個人のコネクションは他の社会に比べて重要度を増す。中華民国時代に至っても、多くの社会サービスは個人またはコネクションのある個人の集合により各個の名声のために寄付として提供される形をとっていた。封建制でもロータリークラブとかあるじゃんと思ったが、それよりも個人の名前に負うところが大きく、実施内容も通常の西洋先進国であれば行政から提供されているような規模だったりするらしい。
 着眼点は面白いし、近世の中国史に関する調査は労作だと思うけど、マクニールとかダイアモンドとかに比べるとやっぱり根拠調べの点で物足りないところが多かった。これが日本の人文系の限界なのか。

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2018年05月02日

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