あらすじ
お待ちかね、「最前線の映画」シリーズ第3弾! 『天気の子』はなぜ雨を止めなかったのか? 『ジョーカー』はなぜ、チャーリー・チャップリンを観るのか? 『ノマドランド』の街はなぜ消えたのか? どうして『万引き家族』では「スイミー」が語られるのか?……近年のヒット映画の中に作り手たちが込めた「暗号」を町山智浩が鮮やかに解き明かす。
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Posted by ブクログ
アカデミー受賞作品「パラサイト」「ジョー
カー」、パルムドール受賞作品「万引き家族」
これらの映画は製作された国は異なりますが、
ある共通点があります。
格差社会をリアルに描いているのです。
日本でも最近問題になっている格差社会は、
世界中で発生し、やはり問題となっています。
「我々はみんなひとつのグローバルな経済の
中に生きている」からです。
その格差社会の中で生きる人々の希望や絶望
を映画では、どのように描かれているのかを
とても丁寧に解説します。
すでにそれらの作品を観た人は納得すると思
います。
まだ観ていない人は必ずそれらの作品を観た
くなる一冊です。
Posted by ブクログ
今の御時世、フィクションに対し「何を描かんとしているか」ではなく「自分の善悪基準に則っているか」でモノ申す人間があふれている。そんな社会に対し、敢えて鋭く挑戦的な問いかけを行った映画たちを取り上げている。『パラサイト/半地下の家族』『ジョーカー』『万引き家族』『天気の子』などの話題作は、話題になるだけの強烈なドラマツルギーが存在していたのだ。好き嫌いが両断されるくらいの。
Posted by ブクログ
シリーズの中で今作は今までにないほど激しい意志を感じる。リアルタイムの問題提起だからということもあるが、アカデミー賞をはじめとして全世界的な映画界の潮流が資本主義の矛盾について語りだしているということが、かなりの危機感を持って重く受け止めなければならないのだろう。
「天気の子」で極まったまるで慟哭しているかのような評論が胸に突き刺さる。
ダルデンヌ兄弟作品は予想しうる重たさに怯んでu-next のお気に入りにマークしつつ何年も見ることができなかった。ケン・ローチ作品も「天使の分け前」が軽い傑作だったぶん、そのギャップになかなか手を付けられずにいた。
本作に背中を押されようやく見ることができた。見る前と後では予想以上に世界の見え方は変わった。感謝。
Posted by ブクログ
最前線の映画を読む、の中でも特に社会的な視点で切られていて面白かった。
町山さんの本領発揮。
日本作品にあまり馴染みがなかったので、近年のヒット作が
意外にもアニメも実写も格差を背景にしているのは嬉しい気づき。
町山さんが解説すると、どの作品もすごい名作に見えてくる。
クロエ・ジャオは、近年ローチなどと並ぶ社会派として括られがちだけど、
むしろ作風はテレンス・マリックのクリスチャン的芸術性、抒情性...というのがすごく腑に落ちた。
新たな出会いとしては、ベルギーのダルデンヌ兄弟が興味深い。
『ロゼッタ』での、とられることを嫌がる被写体を追う映画という発想が面白い(第四の壁破りともまた違う。カメラに意識的だが嫌う)。
メモ:
ダイレクト・シネマ=カメラの存在をできるだけ消す。
被写体がとられていることを意識しない。⇔シネマ・ヴェリテ(被写体が、撮られていることを意識してカメラに語りかけてきたりする)
Posted by ブクログ
町山さんの本は時折垣間見える感情を抑えきれない文が好きなのですが、本作はそれが顕著だと思いました。それはやりきれない社会への思いの表れなのでしょう。中でも「天気の子」の章は、自分が感じていた印象と大分異なっていたので、改めて観たくなりました。
Posted by ブクログ
扱われる13作品中、10作は観たことがあった。
どこの国でも格差が拡がっていて、ストライキなんて起きない日本は特に労働者が軽視されて資本家や経営者のやりたい放題なんだなと感じた。
Posted by ブクログ
このシリーズ、やっぱり面白い。観る前に読むような本ではなく(多くはしっかりネタバレしている)、観た後に読んだならば、さまざま発見と新しい視点を貰えるだろう。
今回は13作品のうち9作品は公開時に鑑賞済み。私はそれなりに深読みしていたつもりだったのだが、映画のバックグラウンドの知識が全然不足していたし、観察もかなりの部分で見落としがあったことが判明した。
⚫︎『パラサイト半地下の家族』ポン・ジュノ監督のフィルモグラフィーは追っているつもりだったけど、日本未公開の『白色人』『支離滅裂』などを知ると、ずっと同じテーマを描いているタイプの作家だということがよくわかる。
⚫︎『ジョーカー』幾つかの「謎」部分が一刀両断で解説された。そう言われれば、そうとしか思えない。
⚫︎『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督は、社会問題を告発しない。彼らを美しく、詩的に描くことに全力を注いでいる。←だから、映画評を書こうという気も起きなかったのか!
⚫︎『バーニング劇場版』ミステリとしての見方が間違いだということを、説得力持って示してくれた。全てメタファーだったのだ!
⚫︎『わたしは、ダニエル・ブレイク』見落としていた格差社会の構造をかなり解説してくれた。1人だと思っていたけど、沢山の労働者がそのままの役で出ていた。『家族を想うとき』と重ねて、ケン・ローチの真っ直ぐ敵を見据えた告発映画だった。
⚫︎『万引き家族』是枝裕和監督のフイルモグラフィーから解説。ポン・ジュノ監督と同様、描いていることはずっと同じ。
⚫︎『天気の子』帆高は『ライ麦畑でつかまえて』を読んで家出して東京に行ったのか!予想通り、これはかなり社会に物申す作品だった。
改めていうことでもないけど、映画は高校生にもわかるように(ということは普通の大人にもわかるように)、物語の背景を説明しない(2時間で、全ての世界を出し切らないといけないから)。多くは1の台詞を聞いて、3くらいはわからないといけないし、それを求められている。だからこそ、映画は面白いのだけど、やはりこういう解説書は大変役に立つ。慎重に見ていたつもりなんだけど、相当見落としていた。「1」と「3」は読んだので、やはり「2」も読んでおこうと思う。
Posted by ブクログ
いつもマニアックすぎて未視聴の映画がおおいんだけど、今回は
・パラサイト半地下の家族
・ジョーカー
・ノマランド
・家族を想うとき
・万引き家族
・天気の子
とこんなにあったので見応えもばっちし。
この解説書を読んでからも一回観たくなるわ。
「万引き家族」のあの浜辺のシーンの樹木希林の口の動きの”ありがとう”はアドリブだったとは…。
家族になってくれてありがとうって意味もあったのね。
あの表情は妙に印象的ないいシーンだった。
Posted by ブクログ
町山さんの解説は謎解きミステリーと同じだ。
ジョーカーや万引き家族、パラサイト、ノマドランドといったアカデミー賞受賞作の謎を解いてくれる爽快感。
ケンローチ監督の、ストレートな格差への怒りがどのように映画に結実されているか、よくわかる。
この本で紹介されている映画でまだ見ていないものも、謎解きの謎を知ったうえで観賞するのも楽しいと思う。
Posted by ブクログ
いつの間にやら、シリーズも第3作目。
町山智浩さんの映画評は、分かりやすいし、周辺情報が凄い。
観てない作品とその周辺の関連作品も観たくなる。
要は、読む度に観たい作品が増えていくのだ。
次作もあるなら、勿論、読む。
星は3つ。3.5とか。
Posted by ブクログ
『ジョーカー』『パラサイトー半地下の家族』『万引き家族』など観た映画もけっこう入っていた。それぞれの映画の話だけでなく、その映画をとった監督のデビュー作あたりから話を始めて、その作品が撮られる背景、監督の思想まで説いてくれるので、興味深く読めた。タイトルの映画だけでなく、この監督の別の作品も観てみたいなと興味をひかれるものもあった。ただねぇ。それぞれの作品に貫かれたテーマは、格差と貧困。家族を抱えて憂き世を渡る身としては、決して他人事ではなく、考えるべきことと思うんだけどさ。いや、それだからこそ、なおさらそういう話を立て続けに読まされると、だんだん気が滅入ってくる。特にスウェーデンとかインドとか、知っているけどなじみのない国の話となれば、その国はみんながそういう状況にあるのか、とすら感じてしまって、つらくなってくるんだよね。だから、読み進めるのに、ちょっと時間がかかったな。夢ばかりみて生きていたいわけじゃないんだけど、つらい場面ばかりみるのもまた、ちょっとしんどいんだよね。