あらすじ
現代日本人の意識の深層は江戸時代と地続きであることが明らかにされつつある。したがって江戸の思想を支配していた三教――神道・儒教・仏教――にこそ、我々の内面の問題を解く鍵がある。幕藩体制に組み込まれた仏教。近世の思想界において主導的立場に立った儒教。国学の勃興と明治維新のイデオロギーとして機能した復古神道。これらはいかに交錯し、豊かな思想の世界をかたちづくっていたか。我々の基盤になっている思想の原風景を探訪し、その再構成を試みる野心作。
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Posted by ブクログ
近世とは、思想に関して、なんと刺激的な時代であったか。
今から見れば、誤った理解もあったが、ナショナリズムを基底にしながら、それぞれの思想が生き残りのために、論を尽くした時代であったのだ。
わたしの大きな問題意識としては、これから宗教はどうなっていくのか、また、戦争中になぜ日本はあのような体制に陥ったのか、の2点がある。
そのために、キリスト教、仏教に関する書を広く読み進めて来たが、本書によって、問題意識は整理されるとともに、さらに先へと視線は上向くこととなった。
新書で、このような本格的な江戸思想史への入り口を世に放ってくれた、著者と出版社に心から感謝したい。
Posted by ブクログ
江戸時代の思想を神道・儒教・仏教の三教から俯瞰することを企図した本。新書ではあるが,ボリューム・内容ともに重厚であり,非専門家にはなかなか骨が折れる。
しかし,江戸時代の思想史は我々の近代と地続きであり,この近世の錯綜した思想を踏まえないと明治以降もわからないこともまた事実である。
体制に取り込まれて「葬式仏教」になってしまった江戸時代の仏教が意外と深いところまで思想を深めていたことや,体制の教学となった儒教・儒学の多様性,そして国学や水戸学に流れ込む復古神道と「日本イデオロギー」と言うべき関係性,そして表題にはなっていないが,西洋の学問とキリスト教への対応などが,縦横無尽の引用から明らかにされていく。刺激的な一冊である。