あらすじ
第30回(2014年)講談社エッセイ賞受賞
母親のダイナマイト心中から約60年――衝撃の半生と自殺者への想い、「悼む」ということ。伝説の編集者がひょうひょうと丸裸で綴る。笑って脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。
「キレイゴトじゃない言葉が足元から響いて、おなかを下から支えてくれる。また明日もうちょっと先まで読もうときっと思う」――いとうせいこうさん
「優しい末井さんが優しく語る自殺の本」――西原理恵子さん
大人気連載、ついに書籍化!
世の中、自殺について醒めているような気がします。
おおかたの人は自分とは関係ない話だと思ってるんでしょう。もしくは自殺の話題なんか、縁起悪いし、嫌だと目を背けてる。
結局ね、自殺する人のこと、競争社会の「負け組」として片づけてるんですよ。
死者を心から悼んで、見て見ぬふりをしないで欲しいと思います。
どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです。(「まえがき」より)
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Posted by ブクログ
この本を読んで深く感銘を受けた部分を以下に記載します。一人でも自ら亡くなることの無い社会を願っています。
「自殺する人は真面目で優しい人です。真面目だから考え込んでしまって、深い悩みにはまり込んでしまうのです。感性が鋭くて、それゆえに生きづらい人です。生きづらいから世の中から身を引くという謙虚な人です。そういう人が少なくなっていくと、厚かましい人ばかりが残ってしまいます。(略)本当は生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です。そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しずつ取り除かれていけば、社会は良くなります。(略)もしいまあなたが、自殺しようかどうしようか迷っているのでしたら、どうか死なないでください。そこまで自分を追い込んだらもう充分です。あなたはもう、それまでの自分とは違うのです。いまがどん底だと思えば、少々のことには耐えられます。そして生きていて良かったと思う日が必ず来ます。(略)みんな死なないでくださいね。生きていて良かったということはいっぱいあるんだから。」(352P~357Pを抜粋)
Posted by ブクログ
母親の自殺を機に自殺について書き始めた編集者の本。自殺をダメとは思っていない、もちろん死ぬよりは生きていた方がいいに決まっているが、しょうがない場合もある。競争社会で人を蹴落としてまで生きたくない、まじめな人・優しい人に対して、そんなことしちゃダメとは言えない。自殺者に向けた筆者のスタンスがとても共感できる。自殺について書くのは辛そうだが、殺伐としてなくてある種の明るさや清々しさもあって読みやすい。
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“あくまで勝ち負けにこだわるならば、どのような状況であれ、窓を開けた時にふっと入り込んできた小さな風に気持ち良さを感じられることができれば、その人の人生、勝ちである。”
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読み進んでいくにつれて先細りしていく人間性。でも、結局自殺をジョークにできるのは、身内が死んだ人か、自分が自殺しかけた人とか、そんな人だけだと思う。この作者は、そうだったということ。
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スエイさんのことは奥さんの神蔵美子さんの写真集(「たまもの」)で知ったのだが、
そこに写っているスエイさんはとても不幸そうで、一体どんな人なのかなあと思っていた。
自分を語るときに外せないキーワードが人それぞれにあるが、スエイさんにとってはそれが「自殺」だったのだと思う。
「笑える自殺の本を作ろう」という発想が素晴らしく、
事実こんなに暗くて辛い題材をたくさん集めているにも関わらず、この本は面白い。
それはスエイさんが「自殺」とがっぷり組んで、懐の深い相撲を取っているからに他ならない。
加えて、神蔵さんの写真集で垣間見たスエイさんのどーしょーもないところも正直に描かれているのもいい。
昔付き合っていた女の子のエピソードなど、ほんとうにどうしょーもなくて悲しくて、残酷なのに私は一番好きです。
この本を死にたかったときの私が読んだらどう思ったかなあ。
ヘビーな題材が続くので、真剣具合が悪いときにはおすすめしないが、
スエイさんがこの本で書きたかったことは「死なないでください」ということで、
それは確かな温かさを持って心に届いたのだった。
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母親が隣の家の息子とダイナマイト心中をしたという末井さんのショッキングな話から始まる。楽しく軽い感じで書かれているけれど相当ゲスいし重い内容。
Posted by ブクログ
ここまで自分のことをさらけ出して書ける人ってなかなかいないと思う。
競馬の話とか、先物取引で失敗した話、浮気した話まで。
昔のことを細かくよく覚えているのも凄い。
自殺に関しては、秋田県の人々がNHK受信料の納付率が高く、人目を気にするタイプであることや、富士の樹海に来る人は仕事が休みの日にくることなど、興味深い指摘がありました。
他の著書も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
自殺というテーマについて、母親がダイナマイト自殺した著者が、正面から切り込んだ一冊。
内容は重いしまとまりはないが、これまでにない切り口だった。
Posted by ブクログ
【生きづらい人】
生きづらい人ほど自分を追い込んでしまうのかもしれませんね。
でもそういう人ほど世の中には必要なのでしょう。
厚かましい人ばかりになったら、人間は戦争でもして滅ぶのではないか。
生きづらさの原因を無くしていくことが、世の中を良くすることなんだろうな。
沢山の普段接しないような人達の生き方を知ることができた。明日も生きていく勇気がもらえます。
Posted by ブクログ
本書は自殺を推奨するものでは全然ないが、自殺した、あるいはしようとしている人を全力で肯定しようとしているところが一風変わっているかもしれない。そして、紹介されている人(著者も含めて)の話は漏れなく面白い。これを読んで自殺を思い留まる人がいるかどうかは分からないけど、きっとこれを読んでる一時は他のことを忘れられるんじゃないかな
Posted by ブクログ
読み終わって、なんとなく生きててもいいんだな
ー、と思える本でした。
読む前から期待して読んだのですが
良い意味で肩透かしにあいました。ただ淡々と
進んでいって、ほんのりと暖かい本でした。
Posted by ブクログ
末井さんのお母様が青年とダイナマイト心中。
エッセイの中には、ご両親が自殺をした人、
ホームレス、アルコール依存症、いろいろな人が出てくる。<みんな死なないでくださいね。生きてて良かったということはいっぱいあるんだから>と末井さん。
秋田大学医学部法医学教室の吉岡尚文教授の言葉。
自殺予防には<社会の人たちが自発的にどうしたらいいかみんなで考えてみるとか>
若い人の自殺願望がニュースになっている。
末井さんの<生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です>
この言葉がみんなに届くといいな。
Posted by ブクログ
まえがきによると、著者は笑える自殺の本作りを目指したとの事。笑えるかどうかは別として、著者のおちついた独特の文体は優しく感じる。自殺を考えている人が一人でも多く本書を手にとって、思いとどまってもらえるよう願ってます。
Posted by ブクログ
母親のダイナマイト心中をネタにできるなんてあーあいいご身分だなと斜に構えていたところはある。
が、それにしても先入観で敬遠していた自分を罵りたい。
いや優しく教え諭してあげたい。
・同情なしの笑い話で自殺スパイラルから脱却。
・母の爆発が故郷から自分を吹き飛ばしてくれた。
・いじめの加害者は自分の癒しのために。
・世間サマは真の人間を嫌う。
・山浦玄嗣。ケセン語聖書。
・青木麓。両親が心中。
・パフォーマーから編集者まで。バブルに纏わる大借金。
・ホームレスパチンカーと友達。
・吉岡尚文。秋田県の憂鬱。
・早野梓。樹海で声掛け。
・神蔵美子。ダブル不倫相手→結婚相手の写真家。「たまもの」「たまゆら」「たまきはる」
・月乃光司。壊れものの祭典。
・千石剛賢。千石イエス。イエスは熱中していたので性欲はなかった。シオンの娘。
・永沢光雄。「AV女優」の。
ただひとりの語りではないのだ。
多くの人の証言を拾い集めていく。形式ばったものでなく。
自殺を真ん中に据えて、家族友達同僚恋人する人残された人やり遂げた人やり損ねた人主観的客観的笑い深刻などなど様々な切り口で、自殺や死に切り込んだり迂回したり。
こうやって読んだり表現したりすることで少しだけゆとりを持つという点で、作者も読者も同じ作業をしているという構成。
こんなに柔らかい作りなのにパワーを持つ。まさにいい本。会えてよかったという言葉がしっくり。
Posted by ブクログ
「自殺」「病気」「死」のついて、フラットな視点で、時に軽快に、時にシリアスに書き綴った本。母親のダイナマイト自殺についてや、自殺未遂経験者へのインタビューなど、衝撃的な話が多くて面白い。
自殺は悪いことでもない。いいこととも言えない。でも、誰にでもいつかは死がやってくるなら、それまで気楽に生きてた方がいいじゃないか、という筆者の慈愛溢れる(でも決して押し付けがましくない)姿勢が良いなぁと思いました。
Posted by ブクログ
笑って、脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります-。母親のダイナマイト心中から約60年。伝説の編集者・末井昭が、自殺についてひょうひょうと丸裸でつづる。『朝日出版社第二編集部ブログ』連載を一部加筆して書籍化。
意外と優しい感じ。
Posted by ブクログ
親族に自殺した人がいた末井さんが自殺に関することを書き綴ったもの。
出口のない状態になったとき、誰かに聞いてもらったり、読んでもらったりしたことでとても楽になったという末井さんの体験にとても共感できました。
Posted by ブクログ
ラジオで末井昭さんが
「真面目でやさしい人が自殺していくような気がする。
こんなひどい世の中でも生き残っている僕みたいな人間は
図々しい奴ではないかみたいな気持ちがある」と、
話されているのを聞き、
「自殺」を読みたいと思った。
自殺にまつわる自身の体験や
自殺未遂をした人や自殺防止に関わる人々の
インタビューをもとにし、
「頼むからちょっと死ぬのは待ってくれ」という
スタンスで書かれているという。
末井昭さん自身は
自殺をしようと思ったことはなく、
お母様が
ダイナマイト自殺をされたことを売りにしていると、
自分で笑いにされていたり、
本当に正直な方。
末井昭さんの人生は、
借金、ギャンブル、不倫などあって、
何度も脱落。
それにくらべると、
私は相当真面目に生きている。
なんとかなるもだなと、
読んでいると、
「きちんと生きなければならない」と
思い込み、硬くなっていた自分の気持ちが緩んだ。
私はギャンブルは大嫌いだし、
下品な部分をさらけだされるのも
気分よく感じないはずなのに、
素直に、笑えた。
驚くほど素直に書かれているので、
きれいごとを言ってないのが、
伝わってくるからだろう。
私は今まで、
自殺について、
人それぞれの個々の事情をほとんど考えたことはない。
いじめ、借金、鬱、病気、
齢をとり家族に迷惑をかけるからと自殺する人もいる。
私は幸せなことに、
死ぬしかない状況に追いつめられなかっただけ。
『ひとりで悩んで、考えても問題は解決しない。
だから、まず「死のうと思っている」と
周囲に言いふらして窓を開けることです』
と、末井昭さんはいう。
そんなこと言われても
「死にたい」なんて口に出せない人は
たくさんいるだろう。
それでもヒントをもらえる。
末井昭さんは、鬱で落ち込んだ時、
ブログで日記を書いて、
「読んでますよ」と言われて、
閉ざされていた心の窓が開かれた感じになり、
少し前向きな感じになれたという。
自殺をする人は、
ひとりぼっちで、真っ暗な窓のない部屋に
閉じこもっていて、
もう出られない気持ちになるのではないだろうか。
私も暗い部屋に、
入りこんでしまうことがある。
何がきっかけで、
窓を見つけることができるかよくわからないが、
いつも窓を見つけられるから、
生きてこられた。
窓だと思ったところ(人)が
窓ではなくて、よけい落ち込むこともあった。
それはその人と縁がなかったのだと諦めた。
友達がいなくて、孤独でも
暗闇から抜け出してきた。
私の窓は「時間」で、
時間が窓を開けてくれると信じてきた。
私は、私は絶望したことがないのだ。
これからも絶望がやってこないとは言い切れない。
自殺をするひとは、
絶望しかないと思いこんでしまうのではないだろうか。
ちょっと気持ちをよそに向けられるだけで、
死ななくてすむ人もいるのだと思う。
自殺を考えている人がいたら、
この本を読んで、
窓があることを知ってほしい。
もっと自殺のことを
もっと楽に話せるようになればいいと思う。
最後の
「みんな死なないでくださいね」
のことばがあったかい。
Posted by ブクログ
自殺をテーマにしたエッセイ。
著者自身の母親も自殺しているが、その自殺方法が特殊で、その特殊性をネタにしている。死ぬ人は死ぬ理由があるのだろうけど、残される方にもトラウマができるが、ネタにすることによって、母親にも、自身のトラウマにも成仏してもらうことができるようになるのかな。
すごく優しい文体で、前半部分は自殺について思うことを書いているのだが、その優しい文体とはうらはらに、著者の人でなしな部分も読めて面白かったですw
僕自身はまだ生きます。
Posted by ブクログ
タイトルと表紙から、もっと重々しい内容が連想されたが、末井氏の自伝的内容に自殺というテーマを取り入れながら、軽快なトーンで語られていた。エッセイといってよいだろう。自分のダメな部分をさらけ出すことが全体を支配している。ちゃんとした仕事や成果もたくさんあるだろうが、それらにはあまり触れられていない。
Posted by ブクログ
自殺したいと思った事が無いかと言われれば「ある」という答えになります。脳天気と思われている私でもあるので、世の中沢山沢山いると思います。人間関係や社会との関わりが複雑化した現代ではあらゆる事に憂鬱の種があります。昨日まで円満でも今日は死にたいとか、ありえない話ではないです。
本書は末井氏の母親がダイナマイトで心中した壮絶な経歴を生かしたエッセイです。不謹慎ではありますが、そのエピソードを一つの売りとして語る末井氏の柔らかい語り口は妙に心地よかったです。
お金で億の失敗をした筆者の言葉で「お金位の事で死ぬなんて馬鹿馬鹿しい」と言われると説得力抜群です。今後自分が大きな借金を負っても(負わないけど)強く生きて行こうと思えました。どんなに借金が有っても結局命までは取られないんですね。
Posted by ブクログ
何かで薦められていたんだと思うけど、言ってみれば期待はずれ。読んだいまとなっては読む前に何を期待していたのか定かではないけど、もっと自殺についていろいろ考えているような本だと思っていたのではないかな。でも実際は、末井さんの来し方や数人へのインタビューでまとまっていて話題は自殺に限らない。まあ、自殺だけでまとまっていてもどんよりしてしまうかもしれないけど。
自殺って思い込んだ人やいじめられた人、不幸な目に遭った人だけの特別なものでなく、わりとちょっとしたことで至ってしまうもののように思う。末井さんだって端から見ていたら無頼な生き方しているように見えるだろうけど、それでも心のなかではいろんなことを悩み苦しんでいる。まあ、そんな感じの読後感。
Posted by ブクログ
幼い頃に母親をダイナマイトによる爆発自殺で亡くした著者が、独特の温かい眼差しで自殺について語ったエッセイ集。
ともすれば重くなりがちなテーマではあるものの、母親の自殺のエピソードや、近親者を自殺で亡くした人や富士樹海の見守りをライフワークとする人へのインタビュー等、温かく、かつユーモラスな語り口が訥々と心に染みる。著者自身は自殺にまで追い込まれたことはないとはいうものの、自らのギャンブル遍歴や借金地獄、離婚と恋人との逃避行等、悲惨なエピソードも多いのにも関わらず、読み終わると不思議な読後感がある。
Posted by ブクログ
新聞書評を読んで購入。著者が「自殺」を意識せざるをえない驚くべき理由と、そこから目をそらさずキレイゴトじゃない言葉で綴られた何とも清廉・正直な人生観・人間観と言える自殺論。著者は「女子をこじらせて」の著者と同種類の業界人なんだが、自分とは何か、他人とは何かを見つめる深度に同じものを感じた。一見異様に感じだが、考えてみると正直で当たり前かもしれない、というような。
「使者を心から悼んで、見て見ぬ振りをしないで欲しいと思います。どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです」(「まえがき」より)に、この本のすべての価値が込められている。
Posted by ブクログ
自らの、自殺に関する強烈な体験を芯に、関わった人やそうでない人の自殺について、それから自分のその強烈な体験から始まった人生について赤裸々に書かれた一冊。
雑誌でこの方の現奥さんのインタビューを読み、更に夫婦でインタビューに答えている記事も読み、「この人一体どんな人なんだろう」と思っていたらこの本を出していたということで手に取りました。
「自殺を考えている人に思いとどまって欲しい」という思いもこめて書かれたということですが…正直この装丁とタイトル、ダイレクトすぎて手に取りにくいんでは、と私は思うのですがどうでしょうか?
私がこの本を持ち歩いていたら同僚がぎょっとして「すごいタイトルの本持ってるね!」と若干引かれました。
自殺によって周りの人間の人生をいかにゆがめてしまうのかということを考えさせられますね。
著者がインタビューした人が何人か登場しますが、みなさん中々強烈です。まぁ著者(とその現奥さん)の上を行く強烈な人はいないように思いますが。
楽しい話では決してないのですが面白い、といっていいと思います。でも誰にでも薦められる本ではないですね…