あらすじ
国民の誰もが権力を手にしたとき、「炎上」―デジタル処刑は生まれた。それは新しい日本の“祭り”である!かつてマスコミだけが独占していた情報発信は、SNSの出現以来、ネット使用者全員のものとなった。権力はデジタル技術のおかげで、全員に平等に配られたのである。SNSでの情報発信は、個人が自由に、自分一人の判断で行なえる。すなわち、他人を殺し得る武器を、個人一人の判断で行使できるのだ。本書はジャーナリストと大学研究グループが組んで、ネットで「炎上」または「ヒット」したさまざまなケースを解析し、“祭り”の法則を解明した注目の書!紙と同時電子化!
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Posted by ブクログ
筑波大学で小峯さんと逸村先生・池田くん・落合くん(今は先生)・善甫さん(こちらも今は先生)たちがやっていた共同研究の成果をまとめた本。
2014年に神戸の国際学会で発表していた内容を、小峯さんが一般書向けの文章に落とし込んだもの。
いくつかの「炎上」案件を選んだ上で、その関連する発言すべてをポジティブ・中立・ネガティブのいずれかに分類し、炎上がどういう経緯を辿ったかをグラフ化する+その顛末の途中でどういうコメントが出ていたのかその内容も逐一、見ていくという、かかる時間と作業内容でたまる鬱憤を考えるだけでも気が遠くなりそうな研究の成果がまとめられている。
少ないサンプルに絞ることで量的なことと質的なことの両方ができているのが良い。追試はやりたい人が、他の事例で量的にやってみればいいって話でもある。
量的な成果として、炎上(というかある発言がその後、拡散していく過程)は「上昇し続ける」(ポジティブな評価がつづく)、「下降し続ける」(ずっとネガティブな評価が続く)、「上がって下がる」(最初はポジティブな評価があったが途中から反転)、「下がって上がる」(最初はネガティブな評価が続くが火消しに成功)に分けられる、としている。
その話自体も面白いんだけど、その後の各事例についてコメントの移り変わりを見ていくとことかが・・・大変生々しいというか、結構な数「標的が自殺するまで追い詰めろ」的なコメントがあるというのは、そうだろうとは思っていても、実証されるとエグいな。
小峯さん自身が必ずしもWebどっぷりな人ではない(というか、全然ない)せいもあって、SNSの発信を突き放して見られているところもこの本の特徴かも知れない。人の下衆さをはっきり指摘できているところとか。
来週、ちょうどリテラシー関連のコマやるし、この本も紹介しておこう。
あ、あとタイトルの格好良さが凄いよね。「考現学」と持ってきたか。