あらすじ
勇猛で大胆不敵な王・璋紀帝は、狩りの最中に池のほとりで黄金の美しいかんざしを拾う。持ち主である青年・若蘭にかんざしを返して欲しいと乞われるが、若蘭の美貌に熱情と独占欲を感じた璋紀帝は、そのまま彼を自らの後宮に攫い……!? 華麗な王宮で、昼も夜も奪われる身体と注ぎ込まれる快楽。いつしかそれは、甘い愛の色を帯び、心に火を付ける……。情熱と欲望と官能のラブロマンス!! (※本作品はイラスト入りです。電子書籍化して配信するにあたり一部単行本と異なる仕様がございます)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
面白かったです。
どうしても読みたくて古書を取り寄せたところ、とても良い状態の本が届き、余計に気持ちよく読めました。
内容についてですが、いかにも遠野先生らしい艶っぽいお話です。ですが、古代中国風の国が舞台で、「覇帝」と呼ばれるだけはある若く猛々しい皇帝が主人公なので、全体的には「硬派」の雰囲気の作品のように感じました。
天界から舞い降りてきた天人にひとめ惚れし、略奪するように攫い、自分の後宮に入れてしまった皇帝。
そんな皇帝の強引さを畏怖しつつも、強引さの中に見え隠れする不器用な優しさに惹かれてゆく心優しき天人。
二人の心が次第に近くなってゆくプロセスがよく伝わってきました。ラスト、天人を寵愛していた天帝が彼を取り戻しにくるのですが、美しき天人は天に戻るより皇帝の側にいることを選択します。
-悔いはないのか?
問う皇帝に天人若蘭が答えた言葉。
-私は、ただ欲しいものを選んだだけです。
天帝を「捨てた」のではなく、より「欲しい方」を選んだだけ。
文章中には「本来であれば選ぶことと捨てることは表裏一体のはずだが、あえてそれを一方だけから見る心の持ちよう」と表現されています。
若蘭のこの言葉が天帝への嫉妬とライバル心に燃えていた皇帝の心を見事に鎮まらせたのです。
とても良いお話でした。
若蘭の心がどれだけ皇帝に暴虐の限りを尽くされたように見えても、最初から最後まで離れなかったのは、やはり皇帝のふるまいが一見粗暴に見えても、心底では常に若蘭を気遣っていたからではないでしょうか。