あらすじ
演劇人生の核となった、泣き笑い留学日記。
イギリスでの俳優教育の何百年にもわたる蓄積をもらってこようと、ロンドンのギルドホール音楽・演劇学校に留学することにした鴻上尚史氏。英語で行われる授業に備えてみっちり勉強し、準備は万全――のはずだった。が……、そこは、想像をはるかに超える“英語の戦場”だった!
日本ではすでに名の知れた演出家にして作家である著者が一念発起、39歳で挑んだ1年間のロンドン留学。聞き取れない英語に苦戦しながら、イギリスはじめ世界各国から集まった20歳前後の俳優志望者たちとともに、ぴちぴち黒タイツを身につけ、学校生活に邁進していく。真剣に“鬼ごっこ”をし、歌い、踊る。週末ごとに動物園に行き、そこで観察してきた動物の真似を大真面目に披露する。さらには布になったり、火になったり、新聞紙と一体になったり――。たまに演出家としての視点が顔を出すものも、あくまでも生徒に徹し、悩み、考え、イギリス流ワークショップに取り組んでいく著者の、素直で涙ぐましい姿が、独特のユーモラスな文体で綴られる。一方で、時折浮き彫りになるイギリスの階級制度や差別意識。そして、著者が思う、俳優という職業の厳しさと残酷さ、素敵さ。その後も演出家として日本の演劇界をリードする著者の心の原点となった泣き笑い奮闘記。若いクラスメイトたちとともに汗を流した、愛しい日々の記録である。
文庫化にあたり、文庫の装画も担当した、ラーメンズ・片桐仁との特別対談も収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
演劇界では有名な著者が、1人の生徒としてロンドンの演劇学校に留学したときの話。
イギリス英語を学ぶ難しさや、文化の壁など、さまざまなハードルが生々しく迫る。
演劇教育についての話もあり、演劇と語学に興味のある人にオススメ!
Posted by ブクログ
文庫で読みました。
鴻上さんとイギリスに留学した気持ち。
英語が分からなくて、悪戦苦闘…
その中で頑張る鴻上さん…
外国人に囲まれて生きるということ、
演劇を学ぶということ、
どちらも体験したことがなかったので、
読んでよかった。
最後の後書きまで読んで欲しいです。
鴻上さんと、レイモンド•ワーミングさんとの友情に胸が熱くなりました。
スティーヴン•キャンベル•ムーアって、
『チェスター動物園をつくろう』の牧師さんじゃないか!同じ学校通ってたのか!
という発見もありました。
おもしろかった〜。
Posted by ブクログ
この本が単行本で出版されたのが2000年、何故か18年後に文庫化。とっくに文庫化してると思っていた、小学館の文庫新刊一覧で見つけたときはてっきり新装版かと(笑)39歳で英語もイマイチ話せない著者が、ロンドンの演劇学校での一年間の留学を綴ったエッセイです。出版された2000年に読んだ時の笑いと、鴻上さんの留学時の年齢を超えてしまった今現在の自分とでは笑いが変化していることに気が付いた。39歳で留学とは体力的にも脳みその皺的にもすごいです。いい本です、とにかくいい本です。ちょっと大英帝国に行ってみようかしらって気になりました(個人的に)。
Posted by ブクログ
プロの演出家なのに生徒として英国留学!?こういうのっていいですね。で、1年間の学生生活をとても新鮮な鋭い視点で描いてくれています。おもしろい!自分もこんなチャレンジをしたいなあって心を揺さぶられます。
Posted by ブクログ
舞台演出家の鴻上尚史氏が1997年にロンドンの名門演劇学校に1年間留学したときの日記。
もう20年も前の話か!と驚いたけれども古さも感じず、鴻上さんの文章自体がとてもユーモアがあって、笑えるし、気楽に読めてかつものすごくおもしろかった。
イギリス名門演劇学校の授業とはどんな内容?っていうおもしろさはもちろん、英語を習得することとか、イギリス人と日本人の気質の違いとか、英日の教育や社会、演劇などの違いとか、すべて興味深かった。例えば、授業のあととかに「質問は?」といわれると日本人はたいてい黙っているけど、イギリス人は、たいした内容でもなく、質問ですらない単なる感想を延々としゃべったりする。それはそういう教育を受けているからで、感想を口に出すことで「存在する」ことを示すのだ、とか。
イギリスで標準語を話す人はとても少なくて、とくに中流階級以下になるとほとんど話せないとか。階級によって受ける教育も違うので、ちゃんと体操を習ったこともなくてだから体がかたい、だとか。。。。
鴻上さんと一緒に授業を受ける俳優をめざす生徒たちとが親しくなって無二の親友のようになっていくのもけっこう感動的。イギリスの俳優をめざす人たちのリアルな悩みや苦しみなどがわかるのもよかった。ときに鴻上さんの演出家ならではの視点だから見えることもあったり。
演出家は役者の感情を扱うことで権力をもってしまうことに注意しなければならない、とか、戯曲や演出、演技の話ももちろんとても興味深かった。