あらすじ
不審な火事が原因で意識不明となった歌舞伎役者の妻・美咲。その背後には二人の俳優の確執と、秘められた愛憎劇が――。梨園の名探偵・今泉文吾が活躍する切ない恋愛ミステリ。
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Posted by ブクログ
「ヴァンショー」「タルトタタン」で作者を知っていた私としてはサラッとした文章のイメージだったが、どうしてどうして…こちらが本性?というくらい熱く、語ってくれている。歌舞伎に惚れ込んでる感がビシビシ感じられて本当に読んでて楽しかった。名門の御曹司と一般のお家からの努力家が配されているけれど、わかり易い対決ではなく、きちんと「二人道成寺」に合わせて二人が存在している。そして「摂州合邦辻」をなぞって進むことにより、御曹司芙蓉さんの奥さま美咲さんの心情が響くのがたまらない。これを読んで、この2作の歌舞伎を観たらものすごくわかって面白いと思うほど。これは本当に良かった!
匿名
タイミングが良かった
奇しくも今月歌舞伎座では、娘道成寺がかかっており、前半と後半で二人の役者がそれぞれの娘道成寺をやる。
女形の根底の一部が見えたような気さえする作品だった。
早く歌舞伎座で娘道成寺を見たくなった。
Posted by ブクログ
恋。恋の話。好きになりすぎると苦しい。相手が絶対に自分を好きにならないとわかっているからこそ苦しい。 美咲は、実を利用して、想いを伝えようとしていたのかな、それとも実の「好き」が自分より強い気がしてしまったのかな、揺るぎないような。恋じゃないからっていうのがあったのかも知れないけども。 歌舞伎なのがまた、切なさが出ていたのかも。 誰の好きもつながらないのがずっと切ない。悲しい。
Posted by ブクログ
梨園の事件を扱う今泉文吾シリーズの一つ。今回の元ネタは「摂州合邦辻」。迂生は古典芸能は詳しくないので、少し呆れたくらい、えげつない話である。これをモチーフに梨園の御曹司の、若い妻が狂恋した相手は誰かが、物語的な謎となる。ミステリ的には、彼女を意識不明にした火事はほんとうに事故だったのか? になるだろうけども。ただ、そっちの方向からのみで評価をされると、正直辛い。ロジックもトリックもない話なのでね。だからミステリとしての評価を離れて、真相の切なさに共感できる人向き。