あらすじ
身近な食材なのに、実はわからないことだらけの肉。畜産肉のシステム化された生産や流通の過程から日本の自然が育んだバラエティ豊かな野生の獣肉まで、多数の写真とともに日本の肉食文化の奥深さを紹介する。
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Posted by ブクログ
現代の肉食について。
狩猟の実際の現場を見てきた著者ならではの興味深い話。
シカの刺身は美味しくて、毎年猟期のはじめに、シカの刺身にあたってのたうち回る猟師が大勢いるとか、ウサギをフンごと鍋に入れる集落もあれば、フンを入れない集落もあるとか、タヌキの肉は臭いけど、アナグマやハクビシンの肉は臭くないとか、1990年代頃にまだイヌを食べいてた集落があったとか、本州ではイノシシの皮を刃物で剥がし捨ててしまうが、九州と沖縄ではバーナーで毛を焼いてこそぎ落とすのが普通、とか、面白い。
その方面の専門書には及ばないが、畜産肉に関しても書かれている。食肉処理施設の様子と肉屋さんの仕事。
肉屋さんの哲学
「ブタの命に対する責任感、従業員に対する責任感、そして生産者、消費者に対する責任感。実に多くの責任感を持ちつつ日々肉を提供するのが肉屋さんの仕事なのです。」
文献記録や宗教との関係、肉食の歴史的変遷などは、記述は少なめ。
Posted by ブクログ
なんとなく、「日本で肉食が始まったのは明治時代になってから」といういめーじがありましたが、それが大きな誤解だったことが分かりました。
たしかに、言われてみれば旧石器時代から狩猟は行われていたわけですし、牛や馬、豚を食べていなかっただけで、いわゆる「ジビエ」と言われるような鹿肉や猪肉は食べていたわけですね。
本書では日本で様々な動物が食べられてきた歴史を振り返りながら、現代の食卓にのる肉について、「畜産肉」と「狩猟肉」に分けて紹介されています。
また、かつては商店街にあった(わたしも薄っすらと記憶にありますが)枝肉を吊るした肉屋も紹介されています。笑い話で、「スーパーに並んでいる切り身の魚しか知らない子どもが、水族館で生きている魚を見て『魚じゃない者が泳いでいる』と驚いた」というものがありますが、肉についてはよりそれが顕著な気がします。
「生きている動物」が、どのようにして「食肉」となったのか、かつての被差別部落問題と合わせて触れているところも、分かりやすい解説で印象的でした。
特定の思想宗教ではない限り、日常生活の中で何かしらの肉は日々口にしています。その肉がどのようにして食卓にやってきたのか、日本の食肉を安定的に確保するためにはどのようなことが必要なのか、考えるきっかけになりそうです。
今夏に食べた鹿肉のカタと猪肉のジャーキーなどのジビエ料理は下処理が丁寧だったこともあって臭みもなくて柔らかく、とても美味だったことを思い出しながら読みました。
Posted by ブクログ
身近な食材なのに、実はわからないことだらけの肉。畜産肉のシステム化された生産や流通の過程から、日本の自然が育んだバラエティ豊かな野生の獣肉まで、多数の写真とともに日本の肉食文化の奥深さを紹介する。
最後の最後に,「廃棄物処理法違反」という言葉を見るなんて…。
Posted by ブクログ
言われてみれば当然ですが、日本人も旧石器時代から肉を食べているということに、日本人の肉食文化は近代以降だと思っていた私は、妙な新鮮さを感じました。
現代では家畜のお肉が一般的ですが、それは近代以降の話。この本では、鹿や猪といった野生動物を食べることについて、多く書かれています。
今年は熊による事故が多いので、野生動物の増加や猟師さんの減少など、タイムリーに感じました。
Posted by ブクログ
ちくまプライマリー新書289~日本は半世紀で肉の消費量が十倍になった。縄文時代から落とし穴猟は行われ、シカなどの動物を追い込んで捕っていた。肉食禁止令はそれだけ肉食が行われていたことの証である。仏教の戒律に背いて殺生をする理由は①肉を得るため②皮や毛を利用するため③田畑を守るため。そして屠殺・屠畜という営みは欠かせない。関東ではウマが、西ではウシが活躍。それらを肉とするほか、ブタ・ニワトリ・ヒツジ・ヤギも。狩猟肉としてはクマ・シカ・イノシシ・ウサギ・タヌキ・アナグマ・(ムジナ?)・クジラ・海獣類。中間に位置するのがイヌ・ネコ。1990年代まで東北でイヌ食いの記録があり、ネコは2000年あたりのネコ捕り婆が最後。ウシ・ブタは大型獣として処理され、ニワトリは別ルートの小動物専門の施設で肉となる。狩猟の現場では大変。早く内臓を抜かないと臭くなるが、運び出す人手が足りない。年寄りだけになって、捨てられる。罠猟でも檻の中で動き回る獣を殺さないと運び出せず、泥と血で汚れる~肉食が広がるとアメリカの飼料農家が儲かる仕組み! タヌキが美味いか不味いかは食べた固体の状態に因るものだった。ジビエって簡単じゃないなぁ