あらすじ
厳しい国際包囲網の中、なぜ彼らは核兵器や米国にまで届くミサイルを開発できるのか。国連安保理の最前線で捜査にあたった著者が直面したのは、世界中に巣食う犯罪ネットワーク、それを駆使しての数々の非合法ビジネス、そして組織の中核で暗躍する日本人の存在だった――北朝鮮の急所を抉り出すスクープノンフィクション!
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Posted by ブクログ
【226冊目】国連安保理の北朝鮮制裁委員会専門家パネルに2011年から2016年までの5年間勤務した筆者が、自らの捜査体験談を記した本。
論旨中、印象に残ったことを箇条書きにすると、
● 国連の制裁が採択されたとしても、それが実効的たらしめられることは全然別の話なのだということが分かった。専門家パネルの視点からしか書かれていないが、国連の制裁がいかに各国の各種サボタージュ(意図的である・いないにかかわらず。)によって骨抜きにされているのかが分かった。これは、北朝鮮を支援しているロシアや中国だけの話ではない。日本も有効な法整備を怠っているという点でサボタージュしているとみなされる。
● 東南アジア各国は北朝鮮と国交を結んでおり、北朝鮮のマネロン等に利用されていることは知っていたが、アフリカにまで北朝鮮の交友関係が伸びていることは初めて知った。貧しい国はソ連製の旧式兵器を購入するわけだが、これを修理するようなノウハウは北朝鮮ぐらいしか持っていないらしい。なぜなら、そこまで旧式の兵器をいまだに使用しているのは北朝鮮を始めとする貧しい国ぐらいだから。
● 国連がいかに機能不全に陥っているかが、筆者の愚痴と共にこれでもかという頻度で描かれる。専門家パネルといえども各国の政治的立場を持ち込まれ、北朝鮮の支援国である中国から来た同僚がいかに筆者の業務を妨害してきたかもしばしば描かれるし、メンバーの枠が既得権益化している英仏のメンバーも、やる気も能力もない職員として描かれている。
実務家であった筆者が体験談的に書いている本なので、実務家が読むと興味深く思えるかもしれないが、研究者や一般の読者には冗長に思えるかも。