あらすじ
「日雇労働者の町」と呼ばれ、高度経済成長期に頻発した暴動で注目を集めた大阪のあいりん地区(釜ヶ崎)。現在は高齢化が進むなか、「福祉の町」として知られる。劣悪な住環境、生活保護受給者の増加、社会的孤立の広がり、身寄りのない最期など、このエリアが直面している課題は、全国の地域社会にとっても他人事ではない。本書は、貧困の地域集中とその対策を追った著者による現代のコミュニティ論である。
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Posted by ブクログ
初めて足を踏み入れた時、頭をよぎった疑問ーなぜこのような街なのか、行政は何をしているのかーへの答えを知るために手に取った本。
複合スラムから高度経済成長期に伴いドヤの街になり、バブル期には賑わうもバブル崩壊の煽りを最もナイーブに受けて福祉の街へという歴史がよく分かった。
そして、貧困を一つの地域に止めることによるメリット(セーフティネットを重点的に充てやすい)とデメリット(差別などで再チャレンジが難しくなる)も理解した。
財政が厳しい大阪市が生活保護を無制限に支給できるわけではない。匿名性が高く訳ありの人々にとっては過ごしやすい地域であるあいりん地区に生活保護者が流入する状況は全く好ましくないが、再開発で駆逐してはいけない(地価が上がればこの人たちは路頭に迷う)。
今の貧困者に再チャレンジと福祉を当てがいつつ、少しずつ変化を加えていく長期的な政策が行政に求められていると思った。
Posted by ブクログ
釜ヶ崎(あいりん地区)の今日までの歴史、出来事を、日本社会のそれと照らし合わせて解説されている。
地域としての釜ヶ崎、あいりん地区(行政によって作られた地域)がどうして生まれたのか、政策によって、振り回される人々。
福祉制度にも労働政策にも乗っかることができない狭間の人々、セーフティネットとしての民間活動があるが、そこには質の保障や法による統制ができないことがあったりする。
結局、不利益を被るのはそこに住む一人ひとりの住民。
Posted by ブクログ
大阪の西成区と言えば天王寺や難波へのアクセスもよく、近年は西成特区構想により急激に発展を遂げ続けている地域だ。海外からの渡航者向けの宿や飲食店、バーなどが立ち並び若者にも人気の商業エリアになっている。今でこそその様な華やかなイメージのある西成区であるが、一昔前は路上生活者が溢れ、職を求める中高年男性で溢れる場所であった。「あいりん地区(釜ヶ崎)」という呼び名を誰もが耳にした事がある、かつてのこの場所は、日雇い労働者が集まるドヤ街が中心の街であった。そしてバブル以降の長期の景気低迷に入ると、街にはその日の生活資金さえ持てない浮浪者で溢れかえる。更には麻薬の密売や賭博、売春行為の温床となり、暴力団がその背景で暗躍するなど、治安状態もかなり悪い状況にあった。状況が変わったのは橋下徹氏が大阪市長として掲げた、前述の特区構想による所が大きいが、依然として世帯平均年収が335万円と、これは大阪府内72市区町村で最下位の72位となっている。全国平均と比較しても168万円低く、年収300万円未満の世帯が全体の約68%を占めるなど、周辺地域と比較しても所得水準は極めて低い地域であると言える。
本書はこの西成区の前身であるあいりん地区の成り立ちを歴史から辿り、日本社会が抱える構造的な問題について、将来に向けた課題と解決方法について考察する内容となっている。筆者自身がこの地区の貧困問題を解決する側の仕事に従事していたことから、リアルに日々の状況を見ながら感じたことや未来に向けての中身のある提言をしている。一時期は東京でも新宿西口や川崎駅周辺に路上生活者が沢山いたこともあるが、近年はそうした場所もきれいに整備され、街中でダンボールで組まれた寝床を見る機会は極端に減った。そこに居た人々は今は何処にいるのか、行政がどの様な対策を行なったのか、普段あまり意識した事は無かったが、日本社会に確実に存在している際貧困層の人々。労働意欲があっても働けない人や身体的に働けない人、働く気力さえ失われてしまった人、様々な理由や原因がありつつも、決して彼らを責める事は出来ない。日本社会の構造的な問題がそこにはあり、景気の良し悪しで常に過不足する労働力を補ってきた彼らを良い様に扱ってきた社会が、それを無視する事は許されない。社会保障政策は昨今の選挙においても主要なテーマの一つとして、政党の主張を比較する上で重要な判断指標となる。だが具体的な中身についてはやはり地域ごとに異なるであろうし、地方自治体が個別具体的な施策で解決すべき課題に思えるかもしれない。だが日本の景気と産業構造を常に一番下の土台から支えてきたのは、かつての彼ら(今は職を失いつつも、日雇いかつ低賃金で所謂3Kと呼ばれる現場で働いてきた人々)である。日本という国家、そしてそこに住まう国民全体で共有すべき課題である。
とは言え社会的に弱い立場に対して、何を財源にどう再配分していくかは難しい問題であることには変わり無い。直近選挙ではどの党も消費税廃止を訴えるが、それを財源に福祉に成功した北欧各国の例もある。世界の常識が必ずしも日本にそのまま適用できる訳ではないが、問題はその使い方だ。仮に最低2年の停止期間を経た後に国民に再び消費税再開に納得いく説明ができるであろうか。問題課題の先送りにならない様、国民の目で監視していく必要があるだろう。そしてそうした財源を補いながら本書が伝える「あいりん地区」の様な問題を上手く解決し、本当の意味で国民全員が安全で安心して暮らせる社会を築く必要がある。日本国憲法第25条の「生存権」に基づき、「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を全うできる社会を力を合わせて作っていかなければならない。それは社会を知り強く問題意識を一人一人が持たなければならない。そうした意識を呼び覚ます一冊だ。
Posted by ブクログ
一人旅で西成区に寄ったことがあり、あいりん地区で暮らす人に興味があった。
どのような人がいて、行政はどんな支援を行なっているのか、歴史も交えて知れた。
Posted by ブクログ
大阪の西成区、あいりん地区の歴史、社会保障のあり方、様々な論点で論じている。
家族単位のスラム街から、バブル期の日雇い労働者としての街、バブル崩壊後のホームレス化、2000年代の生活保護への移行。
サポーティブハウス スタッフが無償で生活のサポートをしている。専門職ではない。公費の補助が進みにくい。
貧困ビジネスとの線引きが難しい。
現在は、確か星野グループがホテル建てたり、外国からの宿泊客が安宿を求めて来たりと、色々変換期か。
売春も淘汰されて、住み良い街になるといいが、なにせ昔を知っている人は地価が安くても絶対住みたくない場所だろうなぁ。
Posted by ブクログ
大阪のあいりん地区について、その歴史からセーフティネット、再開発計画等まで丁寧な調査に基づいて詳述している一冊。耳にしたことはあっても、その背景等については無知だったので大変興味深かった。
貧困地域というイメージが強いあいりん地区だが、反面多層的なセーフティネットがあり、貧困者への福祉という意味では先進地域といえる。これから全国の他地域にも大変参考になると思う。
現在進行中の西成地区再開発によって、今後社会的弱者の方はどのようになるのか、注視していきたい。
Posted by ブクログ
かつて釜ヶ﨑、今はあいりんと呼ばれる日本有数の貧困地区を、これまでの歴史や改善に向けた取り組みを通じて、赤裸々に明らかにした一冊。
日頃、貧困と向き合うかかわりをしていますが、貧困に陥ったのではなく生まれながらの貧困というべき人たちを支援するというのでは別次元の違いがあると思うだけに、これからどのような対策を打ち出すのか、注目していきたいと思います。