あらすじ
法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマ。彼女がまだ修道女になる前、モラン師が学院長をつとめるタラの学問所に入学した時に出合った、フィデルマ最初の事件「化粧ポウチ」、フィデルマが学問所の最終試験として出された事件の謎を解く「痣」、ドーリィーの資格を得、修道女になってからの事件、三晩続けて聞かれた死を告げるバンシーの声の正体「バンシー」、有名なローマ第九ヒスパニア軍団の鷲の謎にフィデルマが挑む「消えた鷲」など全6編を収録。若き日のフィデルマに会える、人気シリーズ日本オリジナル短編集第4弾。/解説=大矢博子
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Posted by ブクログ
フィデルマがモラン師のいるタラの学問所に入学し、最初に解決した盗難事件を描いた「化粧ポウチ」他6篇を収録する、フィデルマ・シリーズの短篇集4作目。
最初の2作「化粧ポウチ」と「痣」はフィデルマの学生時代を描いた作品なのだが、こんな圧迫面接どころか圧迫〈日常の謎〉をやってくる法律学校があっていいのか? 権威ある大法官と問答するプレッシャーだけならいいけど、わざと遅刻させて精神を追い詰めるために学生のドアを押さえつけることが正当化されるのは最悪なので、フィデルマはモラン師に試験の定義から見直すよう提言すべき。
「死者の囁き」「バンシー」「昏い月 昇る夜」の3篇は古代アイルランドの法と経済がホワイダニットの鍵になる、フィデルマらしい"いつもの味"の作品たち。「昏い月〜」はロス船長が再登場するのが嬉しく、判決シーンはフィデルマ版「ヴェニスの商人」のようで面白かった。
そして今回一番楽しかったのは、ローマ貴族が偽史づくりにフィデルマを担ぎ上げようとする「消えた鷲」。ブリテン島の歴史とローマ人の誇りとフィデルマの冷笑が絡み合い、歴史ミステリーとして面白かった。『蛇、もっとも禍し』では宝探しとフィデルマの冷静さが相性悪いなぁと思ったが、今回はうさんくさい捏造貴族にピシャリと鉄槌を食らわすスカッとケルト!な展開だったのでしっくりきた。
フィデルマ・シリーズも、読んでいないのは邦訳最新作の『憐れみをなす者』だけになってしまった。水戸黄門のように安心できるミステリーなので、これからも邦訳が続くといいなぁ。