あらすじ
自分を成長させてくれた、大切な二十四冊。カズオ・イシグロ、北村薫、スティーヴン・キング……彼らの本はまさに“人生の写真アルバム”。女優、コメンテーター、作家として活躍し、芸能界きっての読書家として知られる著者の、感動の読書エッセイ。 わたしの仕事部屋には、壁一面の本棚がある。不思議と目に飛び込んでくる本は毎日変わる。本は日によって目には見えない光を放ち、わたしを惹きつける。どれもこれもわたしのこれまでを伴走してくれた本たちだ。中でも大切な転機を、あるいは危機を救ってくれた二十四冊について本書で綴っている。少し大げさに言うなら人生の本棚。この二十四冊は、自分の成長の瞬間が収められた写真アルバムと同様だ。そして自分のアルバムみたいな本棚は、きっと誰もが持っている。読み終えた本を、あるいはこれから読む本を並べた本棚は、持ち主の生きてきた軌跡であり、これからの人生の一部になっていくかもしれない。そんな本が放つささやかな光は、人生の行方を照らし、時に道しるべになってくれると思う。(「切実な読書」――あとがきにかえて より抜粋)
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Posted by ブクログ
さらっと書いているように見える文章だけれど、すごい決意をもってこの本を書いたのではないだろうか。
なにしろ家庭の問題からコンプレックスまで、赤裸々に書かれているので、読んでいるこちらの心までざわざわしてしまうほどだった。
人と接するのが苦手で、本のなかに自分の居場所を求めること。
私は単純に物語の世界に入り込むことが楽しかっただけで、居場所を求めて本を読んでいたわけではないけれど、思春期の、自意識過剰な時期はやはり本の中でだけ心が解放されるような気がしたものです。
”頼ったり甘えたりしないのは、我慢することにつながる。だけど極度の我慢は、自分が何を欲しているのかをわからなくしてしまう。我慢の加減は、とてもむずかしい。”
という文章のあとに紹介されているのは、茨木のり子の『倚(よ)りかからず』
児玉清さんとの交流も、大切な記憶と共に記されていて、『週刊ブックレビュー』を懐かしく思い出しました。
最初は司会の児玉清さんの読書量、幅、深さにただただ感服していたのですが、アシスタントだった著者が、毎週必ず、紹介される4冊を読んでいること、そのほかに自分の好きな本もきちんと読んでいることに驚いたものでした。
その週によって、専門書だったり分厚い本を紹介されることもありましたが、著者は必ず事前に読んで収録に臨んでいました。
読まずに番組に参加する自信がなかったから、と著者は書いていますが、その自信のなさ、自分の足りないものを知っているということが、その後大学の通信課程で日本文学を学び直すことに繋がるのです。
出来ないことを知ること。
出来ない自分をさらすこと。
出来るように努力すること。
きっと彼女はこうやって生きてきたのでしょう。
強くて、賢くて、誠実な人なのだということが、この本を通して伝わってきました。