あらすじ
時を遡ること20年前の1997年10月11日、総合格闘技イベント「PRIDE.1」で実現した「最強プロレスラー」高田延彦対「400戦無敗の男」ヒクソン・グレイシー。日本の総合格闘技の礎を築いたと言っても過言ではないこの世紀の一戦は、いかにして実現し、その舞台裏では何が起こっていたのか。高田延彦、ヒクソン・グレイシー、榊原信行を筆頭とする関係者への延べ50時間以上に渡るロングインタビューをもとに、ノンフィクション作家の金子達仁氏が、その知られざる物語を書籍化。20年の時を経たいま、初めて明らかにされるその真実とは――。
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1997年10月11日。
東京ドーム。
高田延彦vsヒクソン・グレイシー。
二人の格闘家が、プライドをかけて世紀の一戦に臨んだ。
1ラウンド4分47秒。
腕ひしぎ十字固め。
勝負はあっけなく終わった。
1990年代前半、「最強」の称号を欲しいままにしてきたプロレスラー高田延彦は、この日の惨敗によってすべてを失う。
「プロレスの恥」とまで罵詈雑言を浴びせられることになる。
一方のヒクソンは「400戦無敗」の肩書き通り神格化されていく。
そして、無敗のまま格闘技の舞台から静かに去っていく。
あの日から20年。
最悪の状況の中、死刑台に上る心境でリングに向かった高田。
憧れの日本で、これまで経験したことない大舞台に上がったヒクソン。
様々な困難を乗り越え、舞台を整えたプロデューサー榊原信行。
高田の親友・大相撲元関脇の寺尾。
その他、様々な関係者への丹念なインタビューにより、運命的な当日までの流れ。試合後スタートする壮大な物語が掘り起こされていく。
スポーツノンフィクションの雄である筆者が、書きながらこんなにときめいた物語はないと言い切る渾身の一書。
Posted by ブクログ
一時代を築いた格闘技イベント「PRIDE」。全盛期は、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、エメリヤーエンコ・ヒョードル、ミルコ・クロコップ、ヴァンダレイ・シウバ、桜庭和志、五味隆典、といった絵になるファイターを擁して有力な地上波コンテンツとなり、大晦日の夜には格闘技という潮流を築いた。そのPRIDEの起源となったのが、プロレスラー高田延彦がヒクソン・グレイシーに惨敗した試合であったことは格闘技ファンの中では有名な話である。本書では、高田とヒクソンの闘いの場となるPRIDE.1が実現されるまでの話が描かれている。
著者は、スポーツジャーナリストの金子達仁。この人は、人から話を聞きだすのが相当にうまいのだろう。出世作となった『28年目のハーフタイム』では、日本代表の中田英寿や川口能活から他の人では聞けない話を引き出していた。高田延彦からは自伝の執筆を依頼され、『泣き虫』を執筆した。今回はその流れで榊原信行、UWFの安生、鈴木健、そしてヒクソン・グレイシー当人までインタビューをしてじっくりと話を聞き込んでいる。そして、そうした話をまとめるためのぐっと引き込む話の展開がうまい。そして、グレイシー一族まで含めた話は十分に厚みのあるものであった。
あの闘いが実現するきっかけとなる高田延彦と榊原信行の出会いは、本当にそんなことが起きたのかと思えるほど運命的だ。その高田が、なすすべもなく敗れたその日、その試合の実現に奔走した榊原信行の思いが今の時点からは思い至らぬほどネガティブなものであったことは印象的だ。そして、ヒクソン・グレーシーがその勝利を喜ばなかった理由もまたさらに印象的なのである。
取材の中では、榊原氏その人からPRIDE消滅の経緯も話を聞いているという。きっとPRIDEのその後についても本が書かれるはずだ。話を聞いたからには書かれるべきだとも思う。そう遠くないうちに。
Posted by ブクログ
高田さんと榊原さんとの初めての出会いでお酒を交わし合ってから意気投合までのエピソードが面白かった。
途中気まずい関係にもなりながらも今もRIZINで繋がっているこの最強コンビが好きです。
高田延彦VS武藤敬司 があって一線を超えずにあのプロレスの結果だったからこそ、高田延彦VSヒクソン・グレイシーが開催されてPRIDEが誕生した。
そしてPRIDEは今考えるとMMAの教科書的大会だったしレジェンド選手もたくさん生まれた。
本書はヒクソン2までが書かれているのだが、あまり聞いたことのないヒクソン・グレイシーへのインタビューが面白かった。
ヒクソンがグレイシー一族の中でどのような立ち位置だったのか?
エリオの子供の名前にはRから始まるKが含む、ONで終わる名前が多いがヒクソンは全てが入っている。さらに、その息子でRIZINでも活躍しているクロン・グレイシーはRとKとONのみの名前であることに鳥肌が立ちました。
あの高田VSヒクソンがあったからこそ、今のMMAがあるのであって、メイウェザーVS天心に引き継がれていくのだな。
Posted by ブクログ
『泣き虫』でおなじみのスポーツライターの金子達仁による、高田対ヒクソン戦に迫った一冊。
高田側の証言は真新しいものはなかったが、ヒクソン側の証言は中々ないので新鮮だった。
続編に期待
単なる高田とヒクソンのお話だけなら、星3つだけれど、最後の最後で実はプライドの幕引きのお話などを榊原さんから聞き出せたというくだりの話が出てきて、情報を小出しにされた感を最後に感じてしまった。
そういう意味では、本書で語られていない内容の方が読みたい気を湧かせられたので星2つ。
あるかどうかわからないが続編に期待します。