【感想・ネタバレ】ゲノムが語る人類全史のレビュー

あらすじ

◆考古学ではわからなかった「世界史」の最先端◆

ヒトゲノム計画以降、急速な進化を遂げたDNA解読技術によって、
私たちは数万年前の人類のゲノムも抽出・分析できるようになった。
それにより、遺骨や遺跡の存在が不可欠だった従来の歴史学は一変。
ゲノムの痕跡を辿ることで、骨さえ見つかっていない太古の人類から
現在の私たちへと繋がる、祖先の知られざる物語が解き明かされた――

・ホモ・サピエンスはネアンデルタール人と何度も交配していた
・DNAにのみ痕跡を残す、知られざる「幻の人類」が発見された
・狩猟から農耕への移行を加速させたのは、二つの突然変異の出現だった
・現存する全人類の共通祖先は、わずか三五〇〇年前、アジアにいた
・ヨーロッパを二度襲ったペスト菌はどちらも中国からやってきた


【目次】
■序 章 人類の歴史はDNAに刻まれている
■第一章 ネアンデルタール人との交配
■第二章 農業革命と突然変異
■第三章 近親相姦の中世史
■第四章 人種が消滅する日
■第五章 遺伝学は病気を根絶できるか?
■第六章 犯罪遺伝子プロジェクト
■第七章 ホモ・サピエンスの未来
■解 説 ゲノムで辿る日本人のルーツ 篠田謙一(国立科学博物館人類研究部長)

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Posted by ブクログ

遺伝子から分かるいくつかのトピックスについての本。
もちろん、この手の本では定番になっているネアンデルタール人やデニソワ人との交配についても書かれている。

王族の遺伝子の話など、話題がヨーロッパに偏っているところは背景の理解が薄い日本人が読むにはつらいところだ。ただ、ヨーロッパには家系図の記録が豊富だという意味でアドバンテージがある。ハプスブルク家などで幼くして死んでしまう子供が多かったという事実は、ハプスブルク家がどれくらい重要な家系であったかよく理解していないながらも、遺伝的な問題がヨーロッパの歴史に影響を与えたということを教えてくれる。
また同じくヨーロッパの歴史的な部分での知識を欠くところでもあるが、最初の植民よりほぼ外部との交流がない四十万人程度の少数の国民という特殊な環境におけるアイスランド人の遺伝的特性の説明は歴史的背景が分からなくても面白い。

こういった遺伝の話をするときに、離れがたく課題になる人種や優生学の問題について、著者は人種というものはないという立場を取る。その意味では、一部で悪名が高いニコラス・ウェイドの『人類のやっかいな遺産』についても明確に反論をしているが、科学的な装いを取ることができるために同時にやっかいな問題である。これに対して、ルウォンティンの人種間の差異は人種内の差異よりも小さいという説を引いているが、これは『交雑する人類』でデイビッド・ライクが、個人のDNAを検査すれば明らかにどの人種のカテゴリーに入るのかをほぼ確実に当てることができることから、逆に科学的事実の解釈を我田引水する例として批判する。これらは微妙な話であるが、著者の姿勢もまた人種の話から逃げているように思われる。

遺伝子の話としてヒトの遺伝子数がまだわからなかったころに科学者の中で行われた数当ての賭けの話が紹介されている。結果、解読された遺伝子の数が想定していたよりもずいぶんと少なく(二万超)、これはカイチュウやバナナ、ミジンコよりも少ないことが大きな驚きをもって迎えられた。また、ゲノムのほとんどが遺伝子ではなく、「ジャンクDNA」だったことも同じく驚きであった。このジャンクDNAの領域がどのような影響を与えるのかについても新しい課題である。

最後に犯罪と遺伝子の関係が語られる。こちらも氏か育ちかや優生学の議論につながり、ナイーブな議論である。第二次世界大戦のオランダの飢餓状態のときに生まれた子供に関するエピジェネティックスの話も定番になりつつある。

広く遺伝子に関わる話が語られたが、『人類全史』と名付けるには少し包括さが不足している。ちなみに原題は”A Brief History of Everyone Who Ever Lived: The Stories in Our Gene”である。

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2019年01月02日

Posted by ブクログ

読んでいるときは、何が言いたいのか、ちんぷんかんぷんだったが、読み終えてから目次にある各章の見出しを読むと、何だかわかった気に。ゲノムと言うと、構造を編集できるか否かに関心が勝手に及んでしまうが、そのようなことには触れていない。

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2018年02月15日

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