あらすじ
生まれ育った松本から出ることのないまま大学生になった僕は、
附属図書館のくたびれたソファで寝るか、
数少ない友人の広崎と吉岡さんと慣れないビールを飲んで
時間をつぶす毎日を送っていた。
季節とともにまわりはどんどん変わっていくのに、
あの日のことを忘れられない僕は、ずっと動けずにいて――
友情、淡い恋心、ちぐはぐな心とからだ――
痛みと絶望の先に差すかすかな光のまぶしさに胸がひりつく、著者新境地の青春小説!
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Posted by ブクログ
久々に読んだら小嶋陽太郎のイメージをガラっと覆す小説でびっくり。もっと軽妙で前を向いたポップな小説を書く人のイメージだったのだが、この本は軽妙さやポップさは(ないとは言わないが)影を潜めている。
主人公と親友とそこに現れた一人の女の子。そういう三角な関係が2つ。大学生の市川君と中学生の佐野君の視点で交互に章立てされて話が進む。どちらもまっすぐな友情物ではなく、かなりの登場人物それぞれの背景からして曲者で、一角を成す女の子との関係もそうとうに曲者。
話が進むにつれて張られた伏線になんとなく気付いてくる。その伏線は決して目新しいものではないのだが、それでも回収されるときの衝撃は鈍くドンっと響く。ミステリーじゃないので「あっ」と驚く必要はない。そうかこういう回収による表現もあるんやと、衝撃におののきつつ感心する。
読後にタイトルの意味と、第一章が唐突に始まる意味が分かって、それでまた感動する。小島陽太郎、やっぱただものじゃない
Posted by ブクログ
市川と佐野、2人のストーリーが交互に描かれており、市川は大学生、佐野は中学生と関連性が無く、最初は「この2人に共通するのは三角関係って事かなあ?」などとぼんやり考えていました。
ですが、途中から市川=佐野であることを間接的に匂わせる表現が入ってきて、最後の晃との会話の部分で確定した…って感じでしたよね?
途中で同一人物であると気付いた時は震えました。笑
市川でのストーリーも、佐野でのストーリーも、
最初はただただ"日常"感が強く、穏やかな気持ちで読めていたのですが、段々と不穏な空気が混ざって来て…最終的に1番怖かったのが、佐野が父の部屋を見て奥村の家に行かなければならないと思い浮かび、雷雨の中自転車を漕いで奥村の家に向かい、インターホンも押さずに家に入っていくシーン、あのシーンは本当に鳥肌が立ちました。
そのシーンの際はぼやかされていて、
結局奥村が死んだ、という事実しか明かされていなかったのですが
最後の最後で、晃と市川が2人で話しているときに奥村が晃に覆い被さって…とその時の事が明らかになった時も驚きました。というか奥村は沖田の"利用すべき敵"を殺した通り魔事件の犯人なんでしょうか?そういう話が上がってましたけど、結局ぼや〜っと終わりませんでしたか?
誰か教えてください!!!
あと、アレですね。広崎。
彼もすっごいですね。
市川と広崎が最後に話した日、あの時にはもう大学を辞めていたんですね。衝撃すぎました。
今度、バドワイザー飲みながら
はっぴいえんどの曲聴いてぼ〜っと散歩でもしようかと思います。
Posted by ブクログ
この作家さんの作品もはじめて。「ぼくのとなりにきみ」など、中学生にどうかな?と思っていたのだが、この本をどなたかの本棚で発見し、書かれている感想もなかなかだったので最初に読むことにした。
まず、中学生には少し重い内容かな、と感じた。
身近な人の死を二度に渡り経験し、その記憶から前へ進めない主人公。終盤まで雨雲が低く垂れ込めたような重苦しい流れだが、最後の最後に光が差してくる。
交互に出てくる登場人物の名前はなんだろうと思っていたが、途中からそうだったのか、と分かる伏線である。なかなかワザあり。
Posted by ブクログ
2人の主人公を別人だと思わせたかったのだとしたら失敗してると思います。普通に同一人物として読んじゃいます。厭世的な雰囲気は好きだけど、ちょっとナルシストっぽいかな?