【感想・ネタバレ】ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社」の見つけ方のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【みきまるさん株式投資本オールタイムベスト第64位】

大和住銀投信投資顧問のシニアファンド・マネジャー、苦瓜達郎氏の本。

苦瓜さんって、ペンネームかと思ったら本名なのか。

氏が運用するファンドは以下の二つ。

「ニッポン中小型株ファンド」
組み入れ上位銘柄(2017年02月02日)
1位 黒崎播磨 2位 オーデリック 3位 アサックス 
4位 ヨンドシーホールディングス 5位 稲畑産業 6位 アサヒHD
7位 ファーストロジック 8位 TPR 9位 ノダ 10位 ハマキョウレックス

組み入れ上位銘柄(2017年11月末)
1位 LIXILビバ 2位 ニチハ(ガラス土石) 3位 TPR 
4位 コーナン商事 5位 ニチアス(ガラス土石) 6位 MCJ
7位 河西工業 8位 愛三工業 9位 ジャックス 10位 アサヒHD

「大和住銀日本小型株ファンド」
組み入れ上位銘柄(2017年06月12日)
1位 グリーンズ 2位 シノケングループ 3位 富士通フロンテック 
4位 ニチリン 5位 アイ・ケイ・ケイ 6位 萩原工業
7位 ノダ 8位 ニッピ 9位 イハラサイエンス 10位 オーデリック

氏は株式市場のことを「横暴で、下品で、間違いだらけ」という。
しかし、そんな株式市場を信用していると言い、そこには
本来あるべき適正な首位順に戻す「引力」があると述べている。
その引力を信じているからこそ、氏のファンドが好成績を収めているのだ。
26年以上の経験から、2008年の金融危機に遭遇しても
長い目で見ればいずれ株価は戻る、というスタンスを貫いていられたという。

この信念に基づく投資スタイルこそ、
「適正と考えられる株価よりも割安に放置されている銘柄を買い、
適正水準になるのを5年でも10年でも待つ」という
正統派のグレアム流バリュー投資だ。
もちろん、売買のタイミングはいっさい考慮しない。

第2章 私の投資哲学 より
●投資で考えるのは、「いつ」ではなく「いくら」か
・投資対象になりうる企業をリストアップし、それぞれの銘柄について
「適正な価格がいくらか」を考え、自分がつけた適正価格と実際の株価の
乖離率が高い銘柄、つまり、より割安度が大きいと考えられる銘柄から順に
機械的に買っていく。
・そして、株式市場の「引力」を信じつつ、適正な株価に戻るまでじっくり待つ。
●PBRよりPER重視。
・「高成長ではないものの伸びしろはあり、さほど大きなリスクがない安定成長銘柄」の場合はPER15倍程度が目安
・「あまり伸びしろはないものの、日本経済全体なりの業績を上げそうな銘柄」の場合は10倍程度が目安
・「例外的な高成長企業」の場合50倍程度で計算することもありうる
・「株価は間違い続けている」という前提に立てば、同業他社との比較や、過去のPER水準との比較は意味がない
●主戦場は「中小型株投資」
・中小型株はいったん動き出すと値動きが大きく、儲けが大きくなりやすい反面、損失も大きくなりやすいのが特徴
・中小型株の対象となる中堅企業と呼ばれる規模の会社は企業の全体像が見えやすく、「伸びている事業は何か」「その要因は何か」がわかりやすい
・一つのビジネスの成長がストレートに業績に結びつきやすく、株価上昇にもつながりやすい
・よって、大型株投資よりも中小型株投資のほうがシンプルで勝ちやすい
●中堅企業は健全でおもしろい
・市場規模が小さく、世界中で何百人、あるいは何千人だけがやっていればいいけれど、確実に必要とされるビジネスをやっている中堅企業が無数にある
●バリュー投資かグロース投資家か
・自分がグロース投資を行わないのは、グロース投資の世界があまりよく理解できないから
・グロース投資は「自分は他人より賢い」という前提に立っている。市場参加者が興味を持ち、注目し、企業価値以上に高い株価が付いている銘柄を買うということは、「自分はより正しい判断ができる」と信じていることに他ならない
・バリュー投資は「他人より自分はバカだ」という前提に立っている。市場参加者が見落としていたり気づかなかったりして評価が低いままになっている企業について、他人の評価を無視して株を買うことだから。

第3章 「すごい会社はこうして見つける」より

・初めての企業との面談では、その企業の沿革を聞く。
企業というものは「現在形」で理解するのではなく、「現在完了形」や「現在進行形」で捉えることが重要。
・過去の失敗談を語りたがらない企業は評価が下がる。
・「伸び始めのニッチなベンチャー企業」と「成熟した安定成長企業」は、株価が割安であれば目のつけどころとしてはおいしい。
ケーススタディ①セリア(100円ショップ)
・ダイソー、キャンドゥに先駆けてPOSシステムを導入(2004年)
・POSデータ活用による本部主導の店舗管理が成果を出し始める(2009年)
・投資を始めた2006年度の株価は200円台、2017年8月末時点で6,000円台
ケーススタディ②ステップ(学習塾)
・学習塾経営は、無理な成長を狙わないことがポイント
・学習塾には「少子化」という問題があり、業界全体では衰退していくことは間違いないが、だから学習塾なんてダメだとは思っていない。
・少子化というキーワードだけで企業の先行きを語ることにさほど意味はない。
・ステップに関して言えば、入塾希望者を選抜しているため、今のところ少子化の影響を受けていない

第4章 中堅企業はこんなに面白い

●数百人規模の企業が活躍するニッチな世界
①食品加工機械メーカー
・柔らかいものを機械で扱うという食品ならではの困難を乗り越えて
独自に開発されてきた食品加工機械は少なくなく、
市場は小さくても一定の支持を得て堅実にビジネスを成長させてきた企業は多い。
・力のある食品加工機械メーカーは機械メーカーの中では
相対的に業績の安定しているケースが多い
・投資対象としての魅力は株価水準しだいだが、注目に値する業界であることは間違いない。
②ブライダル業界
・「少子化」という言葉のイメージが強烈すぎて、市場全体では大きく伸びることが見込めないため業界として見捨てられがち
・自分に言わせれば、これほどニーズの細分化で勝負してきた業界もなかなかない
・ブライダル業界は、デフレ時代を必ずしも価格を下げることなく乗り切り、むしろ収益性を高めて成長してきた珍しい業界
・生き残っている企業の中に高収益なビジネスモデルを展開しているところがあることに気づけば、投資対象としての可能性も出てくる
●ビジネスモデルで勝てる企業の条件
①インターネット業界
・一般消費者を直接自分たちのサービスに誘導できる仕組みがあるインターネット企業は強い
・逆に、グーグルに従属しているネットサービスは危ない
・グーグルだけでなく、フェイスブック、ツイッター、LINEなどなにかのサービスに従属している企業は、そのサービスがコケたとき、施策を変更した時にモロに影響を受ける
・単なる広告収入ではない課金ビジネスができるかどうかがカギ
・ニッチで大手が手がけていないものの、確実に一定のニーズが見込める小さなサービスを立ち上げるのが成功につながる道のひとつ
②不動産業界
・いま不動産業界で生き残っているのは、一線を守り、やってはいけないことをしなかった企業
・生き残っている企業がプロとしての相場観を持ってビジネスをし、きちんと利益を上げているのであれば投資対象となりうる

最後に、苦瓜氏が奨めるのは「気絶投資法」。

「個人投資家が株式投資で勝つには、株式市場がボロボロになったときに買い、
そのまま気絶したようにそのことを忘れてしまうのが『王道』です。」

グリーンブラットの「魔法の公式」しかり、
これができるのは、自分の投資スタイルを100%信じられる人だけだろう。

一線で活躍しているファンドマネジャーが書いた本として、
本書はピーター・リンチの「株で勝つ」に匹敵するかもしれない。
他の日本人ファンドマネジャーも、こんな本をどんどん書いて欲しい。

しかし、2017年の歴史的な上げ相場にあって、
苦瓜氏の基本に充実なバリュー投資を実践する人がいるかどうかはやや疑問。
そして、10月の日経16連騰という歴史的な相場を経て本書が発売されたことは
なにか裏があるのではないかと勘ぐってしまう。

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2018年01月15日

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