あらすじ
80年代の上野界隈でネオンを輝かせていたフィリピン・パブ。
父親の経営する店の人気者だった姉は、AV女優として成功したけれど……。
麻美ゆまにインスパイアされた表題作の他、「午前零時の同窓会」「月夜の群飛」「鶯の鳴く夜」「吉原浄土」を収録。
石井光太は『物乞う仏陀』や『遺体――震災、津波の果てに』など、この世界の非情なる現実を見つめて、われわれの振舞うべきスタンスを、真摯に問い続けています。
ここ十数年で風俗業界も大きく変わりました。かつて女性が生きるための最終手段だったものが、いまや“普通の貧困”によって、生活費を得るために体を売るようになっているのです。過酷さの質が変わったのかもしれません。
『世界で一番のクリスマス』で、石井光太が描いているのは、東京・上野界隈にある風俗業界で必死に生きようとする女と男たち。
女性用デートクラブ、無許可営業のデリバリーヘルス、廃墟と化したラブホテル、風俗嬢の駆け込み寺となるクリニックなどを舞台に、男女のせつない心情の遍歴を、丹念にたどりながら見つめています。
表題作の主人公は、AV女優の姉を持つシングルマザー。上野駅ホームで撮影した本書のカバー写真にも協力してくれた伝説の元AV女優、麻美ゆまに、石井光太がインスパイアされて書いた作品です。
クリスマスの夜の奇跡を、お楽しみください。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
石井光太さんの小説、東京上野の風俗業界を題材にした5編のストーリーが収録されています。
『午前零時の同窓会』女性用デートクラブの依頼は、高校時代の同級生、彼女は事故により車椅子生活になっていた…。
『月夜の群飛』韓国デリヘルの進出により、営業が立ちゆかなくなる上野界隈のデリヘルは営業形態を見直すのか…。
『鶯の鳴く家』ラブホテル営業の裏側、従業員同士のつながりとそれがもとで起きた悲しい事件とは…。
『吉原浄土』風俗嬢行きつけのクリニック、性病の他妊娠中絶などの診察にもあたる…。
『世界で一番のクリスマス』元AV女優の姉と脳性麻痺の子供を出産したシングルマザーの妹…。
この時期にぴったりな表題の『世界で一番のクリスマス』(そうちょっと前に八月、で、次に読もうとしているのは三月だったりします(汗))より、読んでみてぞっとしたのは『吉原浄土』でしたね…。誰もしたくて妊娠中絶するわけではないのに…ラストはゾッとしました。この業界に縁があるわけではもちろんないけれど、悲しくも切ない、そしてちょっとたくましさも感じるストーリーでした。
Posted by ブクログ
1980年代の上野界隈。
上野の夜に働く男女。短編5話。
出張ホスト、デリヘル、韓国エステ、ラブホテルの従業員、HIV感染、堕胎、AV女優などなど。