あらすじ
「わからないじゃありませんか」とベルはつとめて平然としたふりをして言いました。「もしかすると、私に与えられた恐ろしい運命には、それが恐ろしく見えるのと同じくらい幸福なもう一つの運命が隠れているのかもしれませんわ」(本書より)
* * *
ディズニー映画で有名な「おとぎ話」は、本当はこんな物語だった! 美女と野獣との「めぐりあわせ」に秘められたいくつもの謎が明かされてゆく……森の奥深く、バラに囲まれた魔法の宮殿を舞台に、16歳の美少女ベルと守護妖精たちがくりひろげる華麗なるファンタジー。
本書は、フランスの作家・ヴィルヌーヴ夫人が書いたオリジナル版にもとづいた、本邦初訳の完全版です(1740年の初版に挿絵はありませんが、今回は、ウォルター・クレインの作品を特別収録しました)。世界的に有名なフェアリーテイルであると同時に、醜さと美貌、愚かさと才気、邪悪と善良さなどがキャラクターに属性として与えられ、愛をめぐる考察が行なわれる文学作品。いわゆる民話としてではなく、意識的に恋愛心理を追究した「恋愛論」としても楽しめる一冊です。ヤングアダルト小説の読者にも配慮したルビつき。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ディズニーアニメや映画、ミュージカルなどで広く知られる「美女と野獣」の原作として、前にボーモン版の短編をよみましたが、こちらの方が「元祖」であるようで、ボーモン版は本作を「子供向けに要約したもの」だということが分かりました。
なるほど、大きなあらすじに変化はありませんが、本書の方がディテールまでこだわって作られていることが良くわかります。ベルの内面的な美徳や、ベット(野獣)の特性についてなど、設定が良く考えられていて作品世界の「厚み」を感じる一方で、登場人物(種族)の「妖精」の存在が物語を複雑にしているように思いました。
キリスト教圏ならではなのでしょうか、王権と妖精(と、妖精の世界における要請同士の力関係や秩序)が複雑に絡み合っているため、またその説明が一人の妖精のセリフで語られているために状況を理解しづらく、ラストの長台詞部分は一部読み飛ばしてしまいました。
わかりやすく、楽しめるようにアレンジされたアニメ版やミュージカル版などから作品に触れることをお勧めしますが、さらに興味を持った人には「原作」として本書も紹介したいと思います。
Posted by ブクログ
あれえ、こういう民話読んだ気がするけど、似たようなのがあったかな。
おとぎ話のようなのに、途中で、ディズニーランドのパレード並のものが出てきて面白かったです。
ベット、はじめっから紳士。
Posted by ブクログ
20170120
オリジナル版、面白かった。
一部の流れはほぼボーモン夫人と同じで、二部は結婚することになってからのその後が描かれてて、わりと長かった。
野獣がなんで野獣になったのか、野獣さんが説明してくれてスッキリ。でも読んでから気づいたけど、どこかの解説で読んだかもしれない。
文章も読みやすく、一気に読めたけど、もともとわかりにくい文章なんだろうなぁと思える複雑さだった。
いや、翻訳しにくい文章なのかも。
妖精の話がわかりにくかった…
ボーモン夫人がざっくり削ったエピソードは大胆だけど、わかる気がした。笑
Posted by ブクログ
ディズニー作品の『美女と野獣』は幼少期から何度となく見てきて大好きな作品だったが、原作を知っておきたいと手に取った。
2種類の感情を並列的に感じた。1つは「さすが美女と野獣、ストーリー展開が面白すぎる」というもので、肯定的な感情。もう1つは逆で、それは原書ならではであるが、「ディズニー版と違ってモヤモヤさせる部分が多々あって残念」である。
モヤモヤする部分は何か。
圧倒的に気になるのは、登場人物もナレーションも、美貌や財を過剰に重視している点。
とりわけ「美貌」を褒める部分が幾度となくあり、対抗する肝心の野獣の醜ささえも、最終的にベルは克服せずに終わる。夢の中のイケメンにばかり惹かれて。
正直なところ、あとがきにおける解説が秀逸すぎてここで繰り返しても仕方ないのだが、本書のタイトルやテーマからして、美という基準が重要な要素であるから取り沙汰されるのはやむをえない。
ただ現代的な価値観の多様化やルッキズムに対するネガティブイメージがインストールされてしまっている私としては、ベットやベルの(育ての)父を応援する気持ちが強く、楽しみ切れない。
同様に、女王が身分違いの結婚を受け入れられないと騒ぐ点や、ベル親子が大量の財宝を好きなだけ行李に詰め込んで持ち帰る部分もまた、前者は身分制社会、後者は金品に対する浅ましさを感じさせてしまう。ベルの父も「奴隷を雇うことが出来て仕事をせずに済んだ」と喜んでいる。
価値観というものが時代によってこれだけ変わるものかと驚きを感じた。
そしてもう一点、ベルはその美徳でもって成功したシンデレラストーリーだとずっと思っていただけに、「実は妖精とのハーフ」「実は王家の血筋」というやんごとなき身分であった事実に心底ガッカリしてしまった。
それをいったら悟空も幽助もゴンも「最強の血筋」だし多くの創作作品に共通する設定なのではあるが、一般人たる自分としては凡人の成功譚に惹かれてしまうのである。
モヤモヤポイントその4としては、これは王侯貴族の身分からくるものではあるが、生活をオペラ鑑賞などの娯楽ばかりで過ごしている部分も怠惰で非生産的に感じる。そういった楽しみを否定はしないが、観劇し、夢の中の邂逅を待つばかりのベルの宮殿での生活には、人間的魅力を感じにくい。
以上の4点より、本筋としては面白いが、モヤモヤさせられるのである。
それに呼応して、改めて上記のモヤッとポイントを見事に覆い隠したディズニー版の秀逸さに感嘆するばかりである。
Posted by ブクログ
ベルが高潔すぎて、俗っぽい人間の感情を持たないので、人造人間かよと思いながら読み進む。はあ、実は王女様だったらしく、納得。要するに美智子様みたいなもんで、そりゃ美人でたぐいまれない高潔さを持った設定になるわね。後半は今まで日本で普及している版でごっそりはしょられてる箇所で、妖精が力を持ち王国にかなり関わってくる。妖精には出来ないことはないらしい。でもなんかな、解明できない未知のことは都合つかなくなると「妖精のせい」ってなんだかな。おじゃる丸も妖精だしな。物語は会社に行くのがイラつく位、引き込まれましたよ。
Posted by ブクログ
原書タイトル『La Belle et la Bête』(la Bête:愚か者・獣)
1740年 ヴィルヌーヴ夫人によるオリジナル版。
一般的に広まっているのは子供用に書き直されたボーモン夫人版で、ディズニーアニメなどはボーモン夫人版をベースにしている。
オリジナル版の初の校訂版が2008年というから、いかに忘れ去られた存在だったかわかる。
「訳者あとがき」が興味深かった。
オリジナル版の野獣は、見た目どころか「愚か」というハンディまで負っている。才気や知的な魅力すら封印され、ただ「善良さ」のみでベル(美女)の愛を勝ち取らなければならない。
そのルーツは、17世紀の「タンドルの地図」(タンドル:無償の愛、愛情)に見ることができるという。
この寓意図でタンドルの地へ到達するには「好み」「評価」「感謝」の三通りの方法がある。
本書が目指したのは、物語にするのが最も難しい「感謝」の道。ただし、そのベルでさえ本当の意味で「感謝」の道を踏破したとは言えない。
Posted by ブクログ
昔、ボーモン夫人の「美女と野獣」は読んだ事があった。
でも、オリジナル版というものがあると知って、映画もある事だし読んでみようと思った。
なるほど、結構話が入り組んでるというか、登場人物も多く読み進めるのに苦労した。
ハッピーエンドだからいいけど、妖精がいろいろ絡んでいるのね。
もう1回ボーモン夫人のを読んでみなくっちゃ。