【感想・ネタバレ】ウエストウイングのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ネゴロ、フカボリ、ヒロシ。
会社員ふたりと小学生。本当だったら出会う可能性のない3人が、ビルの忘れられたような空間ですれ違いながら出会う。仕事や勉強からの、ほんの少しの隠れ場所。全編通して名前は知らない誰か同士だ。

三人ともなんとなく先を見通せず、それでもなげやりになはならず、日々を生きている。このぎりぎりな真面目感が好きだ。同じビルに集う人たちも魅力的。

すごく大きな出来事は起こらない。とも見えるけれど、実際に起こったら確実に人生を終えるまで覚えていそうなことが起こる。その描かれ方がやっぱり面白いなと思う。何が起きても、世界も自分もどうにかして対処し、そのときもその後も淡々と時を刻んでいくんだ、という強烈なメッセージ。

いちばんの大きな出来事は何より、隠れ場所の古い配水管にたまった水から発する菌を吸った3人が、徐々に体調を崩していくことだ。隠れ場所はついに発見され、未知の菌騒動となり、3人は検疫で陽性となってしまう。入院で隔離される3人。ビルも解体されそうに。
自分の責めではなくとも、奪われていくこと。ここも本当に淡々と奪われていく過程が描かれる。そんなときも、時は同じように刻まれる。一緒に絶望的になる。

絶望からのラストの解放感。やっぱり劇的ではないところが最高だ。3人が顔を合わせる。隠れ場所の人たちかなと推測しあう、でもそれを明かすなんてことはしない。ビル解体のための重機は動かない。

3人と一緒にほっと息をついて物語を終える。やっぱり最高だ。

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2024年04月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。津村先生の長編の物語です。
特別な事件やハラハラするような出来事は起こらないのですが、日常をこんなに面白く物語に出来るのが好きで、他の作品も好きだなと感じています。
今回も登場する人物それぞれに物語があって、ネゴロが新人に対して感じる苛立ちや
ヒロシの大人な考え方や絵が上手なところ、はたまたフカボリの不幸な出来事に立ち合ってしまう体質など、、読んでいてクスクスと笑ってしまいました。特に、地下道が水没してしまった際に「渡し」がいるというシーンが可笑しかったです。
3人は最後まで出会わずに終わってしまうのかと思いましたが、無事に会えてビルを遠くから見守るような姿が想像できました。消しゴムはんこをヒロシから貰ったときのシーンも心を打つような感じがして印象に残りました。

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2024年03月21日

Posted by ブクログ

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映画のスパイダーマンシリーズのヒロイン役の女優(キルステン・ダンストとエマ・ストーンのことと思われる)がいずれも可愛くないという意見を否定し、特にキルステン・ダンストの方を気に入っているヒロシ。ヒロインが微妙とは当時から散々言われていたが、僕もヒロシと同じくキルステン・ダンストが好きだったので、それだけでヒロシのことが大好きになった。 豪雨の夜の章はこれから何度も読み返すだろうなと思う。この章だけでもこの本と出会えて良かったと思う。あの章は、フカボリが翌日に出勤するところまで続いているのも良い。
3人と一緒に自分もあの部屋に入り浸っていたわけなので、検疫のくだりでは本気で「えっ!?僕もヤバいのでは!?」と思った。

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2020年10月16日

Posted by ブクログ

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老朽化した雑居ビルを舞台に、そこに通う人々のあれこれを書いた話だけれど、こういうテーマで想像する小説とは手触りが違った。
トラブルが起きてもあくまでも地味で、湧き起こる興奮もなく、主人公三名はいつも頭の中で静かに考えるタイプだし、盛り上がりそうな場面でも作者は決して盛り上げる様子がない。最後まで何もない小説と言ったら語弊があるかもしれないけれど、あえて平静に描かれる日常は自分の日常にも近くて、無理なく馴染んでくる。これはとても高度なことが行われている気がする。
ヒロシ視点の時は特に、ハッとするようなことが書いてあり、彼に教わることが沢山あった。まだ子どもだけれど大人の部分があって、それは両親が離婚して母親の元で暮らしている事情からそうならざるを得なかったのかもしれないし、もともとの気質なのかもしれない。はじめは「小学生か」とあまり興味が出なかったはずなのに、ヒロシの存在がこの物語に必要不可欠であることは確かだと思った。
最後まで読んでみて、なんて言ったらいいのか分からない気持ちになって、でも「このまま生きてみてもいいのかも」とぼんやり思うような、そういう話だった。生活が続くことって、きっとこういうことなんだ。

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2023年12月23日

Posted by ブクログ

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老朽化した雑居ビルの物置き場で、互いに素性は知らぬまま、メモを介した物々交換を通して、繋がりをもった女性事務員、塾通いの小学生、若手サラリーマン。それぞれの日常がモノローグで語られ、各自のもつ閉塞感が伝わってくる。一方、豪雨による非常事態を通して、ビル内の他の人たちともそれぞれに関わりを深めていく。余裕のある人はいないが、そんななかで一定の距離を保ちつつ、他人同士がささやかに繋がり合う温かみにほっとする。ただ、モノローグが饒舌体というか、思考の垂れ流しのようで、私には読みづらかった。面白いのだけど、疲れた。
『エヴリシング・フロウズ』に、小学生・ヒロシの成長した姿が描かれている。

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2019年08月06日

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