【感想・ネタバレ】散歩する侵略者のレビュー

あらすじ

真治と鳴海の夫婦は、ちいさな港町に住んでいる。亭主関白ぶって浮気する真治、気づかないふりで黙っている鳴海。だが真治が、3日間の行方不明ののち、まったく別の人格になって帰ってきた。脳の障害――医師はそう言うが、子どものように素直で、「真ちゃん」と呼ばせてくれる新しい真治と、鳴海はやりなおそうと思った。だが静かに、町は変容していく。“侵略者”が、散歩しているから。地球侵略会議はファミレスで。鳴海と真治の夫婦、そして侵略者の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

薄く読み易そうだなと軽い気持ちで手に取ったが、冒頭3ページの衝撃、戦慄。
胃液をなんとか飲み込んで一呼吸おいてから本編へ。

侵略者が人間から奪うもの、それは概念。奪った概念を蓄積して人間らしくなっていく地味な設定。作中の街人A視点で見るならば、散歩しているだけの地球侵略者史上最も被害の少ない物語だが、読者には恐怖を与え続ける。

読むという概念が奪われたら、本を読むことができな、、いや、読むことができないという思考にも至らないから読めない喪失感もないのか、、、と、物語に入り込みながら読み進めると、本質まで辿り着くにはかなりのニューロンを駆使しなければならない。それに追い討ちをかける圧倒的な背景描写と、読む人に任せた心理描写。つまり脳汁が半端なく溢れ出る。

ラストは
彼女の愛の概念を奪った侵略者の感情が1秒ごとに移り変わり怒涛に押し寄せてきて、気付いたら鼻を啜っていました。

私史上最も心を抉られた最高の一冊でした。ぜひ冒頭3ページだけでも読んでほしい。

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

映画を先に観た。鑑賞時の衝撃が冷めないうちに此方の小説も読んだ。所々違う箇所があるけれど、何方の結末もとても心に残っている。

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2023年04月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とてもすごいことがおこってるのに、主人公夫婦のリアル感がしっかりしてて、SFすぎないというか、読みやすい。終わり方は読後すぐより、読み終わって少し経ち思い出した時の方がせつなく感じる。かろやかに、私的に世界は救われたのか。宇宙人は最後に報われない片思いの感情を得たのだ。

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2018年07月06日

Posted by ブクログ

読み終えて、まずラストシーンがとても印象深い。演出家の前川知大氏の作品だけあって、演劇のエンディングのような切れ味でした。SFだけれども主人公は主婦で、宇宙も科学も全く登場しないという風変わりな小説。超常的な現象により、人間の心の内面が徐々に浮き彫りにされていく。「この先、どうなっちゃうんだろ?」とグイグイ引き込まれ、あっという間に読んでしまいました。

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2017年09月18日

Posted by ブクログ

宇宙人が地球を侵略に来るSFだが、
主軸は冷めきった夫婦関係を続ける鳴海の心の動きにあるか
普遍的なテーマに見えるものの、大胆奇妙な設定を生かしてオリジナリティ溢れたものになっていて良い
最後の問答と決断のシーンは非常に切なく美しく、心を打たれた
一方で、主軸以外の部分は少し物足りなさも感じ、設定が面白いだけに少し残念にも思った
元が舞台作品との事で、どのように表現されているのかはとても気になる

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2022年02月23日

Posted by ブクログ

昨年、同作の演劇をシアタートラムで鑑賞したが、どちらもとても良かった。劇団の表現力。ある「概念」を盗む、ひとつの着想から羽ばたく想像力。

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2018年01月08日

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舞台作品の小説化だけど本人が書いたからかノベライズ感はなく小説の特性を意識した内容になってある。なので、ちゃんと面白いし、舞台や映画でも観てみたいと思う観じ。舞台や映画で観たいではなく。どうなっていくのかなとおもったけどなるほどって感じで面白かったかな。

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2017年12月18日

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地球を侵略するために人間から概念を奪って成長する宇宙人たちと、3日間の行方不明になった後、まったく別の人格になって帰ってきた夫に不信感を抱く妻・鳴海の物語。

劇作家・前川知大が率いる劇団イキウメの舞台『散歩する侵略者』を、自ら小説化した作品。2017年には黒沢清によって映画化された。

映画でも思っていたが、宇宙人が人間から概念を奪っていくという設定がもう既に面白い。序盤の金魚を咀嚼したあと、同居する息子夫婦を殺害し、自殺したおばあちゃんの話のように《知識がない状態》でも十分怖いし、不気味。一方で、終盤の《知識を得た状態》もまた違った恐ろしさがあり、一冊の中で様々な恐怖を抱くことができる。

また概念を奪うという哲学的な物語ではあるものの、「愛」という人類誰しもに共通する普遍的なテーマを扱っており、結果としてすごく響いてしまった。映画→小説と来たので、次は舞台を見てみたい。舞台でも金魚食べるのかな。

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2024年11月05日

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ネタバレ

死んだ縁日の金魚を咀嚼するおばあちゃん――。唐突で不気味な冒頭から「どういうこと!?」と一気に引き込まれる。鳴海が愛の概念を真治に奪ってもらうというラスト、なるほど。黒澤清監督による映画も観てみたい。長澤まさみは鳴海のイメージと違うけれど。

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2024年07月24日

Posted by ブクログ


舞台作品を小説化した本作。
長澤まさみ主演で映画化もされたそう。

3人の宇宙人が地球人の体を乗っ取り、会話をした相手からその「概念」を奪っていく。
「家族」の概念を奪われた妹。
「所有」の概念を奪われた引きこもりの青年。

概念を奪うシーンの描写が独特で、これは舞台や映像で見てみたいなと思った。

ラストは「そっちか〜」という感じだった。
愛ってなんだろうね。

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2022年01月14日

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舞台版と異なるが登場人物の気持ちの描写が細かいので、恐怖や焦り戸惑いがより伝わってくる。
小説としては少々読みづらい。

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2021年04月24日

Posted by ブクログ

映画を観たのでこちらも。面白かったです。
地球を侵略するために人間の概念を奪っていく理由はまだ解りませんでしたが。。
真治は概念を奪っていってどんどん人間っぽくなっていきますが、天野とあきらはそうでもなく…やはりガイドの違いなんだろうか。それとも、入っている人間の年齢差による経験値の差かな。
でも愛を奪ったことによってそれまでの全てが更新されるのすごいな。人の根底には愛があるんだろうか?
そして愛を知ったらそれはもう宇宙人ではない。このお話の後が気になります。映画では描かれてたけど。
「太陽」もそうだけど、この「散歩する侵略者」も、舞台を観てみたいです。

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2020年07月20日

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最後にたどり着くのは愛
失ったら取り戻すことができないし
失ったことに気付くこともできないし
愛って悲しい。生き物を弱くする

読んでいる途中はうーんだったけど
読み終わっておおーとなった

ところで映画版のチラシみたけど
マイプリンス長谷川博己が出ていますが
もしかして桜井の役なのかな
なんか六角精児みたいな人想像しながら読んでたよ
まあでもちょっとおかしい痛い目見る
すったもんだな役って
意外と長谷川博己に合っているよなあ

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2019年01月14日

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内臓や骨ごと輪切りになった鯉の甘露煮 心を守る防衛本能 若年性のものは進行が早く 暖簾に腕押し 連発する脱力系の質問が イニシアチブ イグニッションキーを回す ハザードランプを消し アップルミント ローズマリーですら駄目だったから。変な味する、とか言って。子供かっつーの 明日美あすみ 真治ははまるで、生涯を懸けた数式の答えが間近に迫った数学者のようだった。 惨劇のあった場所は、不思議とそれなりの雰囲気を纏う。先入観と言えばそれまでだが、禍々しいオーラを感じる人は多い。 利口発明に語るこの少年に 「調査。この世界固有の概念を収集しに来た」 地球侵略会議はファミレスで 防風防砂のために海岸線に植えられた黒松は 挨拶に属するものは鸚鵡返しが一番だということも経験から理解した。時間や季節天候に関する呼び掛けは、情報交換としての意味はなく、合言葉のようなものだ。返答を間違えると敵と見なされる。 青年は目の前の頭の弱そうな男に妻がいることに一瞬軽い敗北感を覚えたかが 禅問答は嫌いじゃないよ コミュニケーションが言葉だけではないということは薄々感じていたが、表情の使い方は中々難しい。分からない時は同じ表情を作るに限る。挨拶の鸚鵡返しと一緒だ。 真治のステレオタイプな責任感は、彼に一家の主を演じさせ、自分自身を窮屈な場所に追いやった。真治の豪放磊落な振る舞いは、彼が子供であることの証明にしかならなかった。鳴海が求めていたのはそんなことではなく、もっと単純な、共同作業に過ぎなかったのだ、養ってもらおうなんて思ってない。 なーんか背伸びのしどころ間違ってんだよねー でもやっぱ幅広い年齢層から収集しないと偏っちゃうしね 「だって言葉は色んなのがあるだろ、欲しいのはその概念の理解だからね。理解そのものを頂くんだよ。それが俺達の能力」確かにそうだ。「言葉」を「Word」に変換する為には、そこに共通の概念の理解が必要になる。翻訳とはそういうことだ。欲しいのは言葉ではない。 「言葉は腐るほどあっても、本当のことは何も分からない」。このソクラテス行為を真治は仕事と呼んだ。そして鳴海はそれをリハビリと呼んだ。 その日は汚れと穢れの間にある微妙な差異を学習し、大きな前進があったことを報告した。 私はあなたが何故辞書にエクスタシーを感じているのか知りたい 今日は真治の好きな八丁味噌で作った甘辛い麻婆豆腐だ 言分ける度に世界は整理され、少しずつ色褪せていく。 詰問口調 文化包丁を介した相互理解は血肉を撒き散らしつつ、当然ながらコミュニケーション不全に帰結した。ユートピアに憧れるコミュニストのようだった 自分の描く物語が夢落ちで終わらないためにも…いや、それならそれでよいのだが…桜井は単刀直入に切り出した。 映画「トイ・ストーリー」に出てくる三つ目の宇宙人を見付け、桜井は鼻で笑った。「さて、地球の未来を普及聞くとしよう」 志半ば 不貞寝 「それを本当にイメージできるのは私しかいないの。…私から、愛とう概念を奪って」 「いいの!」食わず嫌いの子供を叱るように鳴海は言った。食べたら分かるから、美味しいのが。「分かって欲しいの、帰る前にそれを分かって欲しいの」そうでなきゃ、私はただの親切な女でしかないじゃない。 愛の概念の喪失 乾いた情報に変わってしまうこと 「ありがとう。それを、もらうよ」たった一つの概念で装いを変えてしまった 黒沢清 日常から新しい次元へ 要するに戦争、映画、侵略SF、この三つは腐れ縁のように繋がって 紛れもない予言的侵略SFと呼んでいいだろう

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2018年06月25日

Posted by ブクログ

どんな風に終わるのだろう?と後半から期待しながら読んだ。
納得のいく良いラストだった。
しかし、作者の言わんとすることがきっと全く理解出来ていないんだろうなーという感じ。
文章に慣れず、なかなか頭に入ってこなかった。
少なくとも、好きな文体ではなかった。
けれど、映画は観てみたいと思う。

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2017年12月10日

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