あらすじ
これが介護業界の深すぎる闇の実態だ!
2015年には65歳以上のお年寄りが26.7%を超え、80歳以上の高齢者は1000万人を超えた。他に類を見ない超高齢社会がやってきたのである。団塊世代が後期高齢者となる2025年には現在の介護職を38万~100万人増やさなければ、パンクするとさえいわれているが、低賃金かつ重労働ということもあり、達成することは難しい。現在、介護の現場で何が起きているのか。
低賃金で介護職だけでは食べていくことができない女性介護職は風俗や売春を余儀なくされている現実がある。その逆に、稼げなくなった風俗嬢が垣根の低い介護業に続々入職してもいる。介護によって精神を壊された男女が集まる「変態の館」も存在する。また、暴力団がその名を隠して運営して、国から助成金を詐取したりするのは当たり前、法務省が刑期満了者を介護職に送り込むなどもうメチャクチャだ。
国は苦肉の策で、介護を重点配分する外国人技能実習制度が始めるが、途上国から集まるだけに低賃金は絶対に改善されない。長生きは幸せなことである―日本ではずっとそのような価値観が根付いていた。しかし、これからは長生きが幸せとは言えない時代が到来しようとしているのだ。
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Posted by ブクログ
風俗業界の書が多い中村淳彦氏、今回は介護業界の取材です。「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」、2017.6発行です。重労働で低賃金、人が集まらない。団塊世代が75歳になる2025年には介護職が100万人不足になると。その介護現場の実体は、崖っぷち状態。介護施設は現代の姥捨て山か。入居者の80%は安全の名のもとに拘束状態(安全か虐待かはどこまでもグレー)。介護職員は奴隷のように働かされ、かつ低収入で貧困にあえぐ。介護では生活できず風俗に。法務省は元受刑者を、厚労省は失業者を介護に。また、暴力団も参入。
2000.4スタートした介護保険制度は機能してるのか。著者は介護のあり方を24h介護から排泄・入浴・食事など最低限の介護にすることと介護報酬をアップして女性介護職の売春を減らすことを提言されています。
Posted by ブクログ
介護市場。大手は飲食大手からの参入だから、同じような低賃金・長時間労働の搾取構造になっている。
優しい人が辞めていく。
疲れ果てた末に起こる老人イジメ、殺人事件。
仕事がハードすぎるし単調なので、出会いもなく、快楽に走る人々。(異常な性欲)
これは自分の経験ですが、いったん育児で、社会からドロップアウトした者にはパートしかない。分野は、介護、飲食、病院、保育。そのどれもが低賃金である。
いくつかの飲食業界で働いていたときに、シングルマザーの多かったこと!女性に限らず、男性も金銭的な苦しさがあったり、それゆえなのか性格的に歪んでいてイジメをしたり、異性に手を出す人もいたり、かなり底辺な業界なのだと実感した。
問題がある人が同じ業界でぐるぐる回っているのは、介護も飲食も同じなんだなぁと自分の経験を通して感じました。救いようがなく、悲しい。
。。。
著者が実際に介護施設を運営していた経験のお話は大変興味深かったです。実際の現場にいた人だからこそ、この本は綺麗事でもなく、実際に近いんだろうなぁと思います。
本を読んだ後は、できることなら、施設に入らず、自分の力で入らずに一生を終えたい!という思いが以前に増して強くなりました。
Posted by ブクログ
低賃金、超長時間労働、パワハラ、イジメが渦巻く介護業界。
筆者が特に訴えているのは、女性職員の処遇改善。
実例として、施設長までなった真面目で優秀なスタッフが勤務中に脳溢血で倒れ退職を余儀なくされ、最終的に熟女デリヘルでその日暮らしへと転落していった47歳の女性が第1章で取り上げられている。
そもそも、あまりもの低賃金で、ダブルワーク、トリプルワークをしないと生活すらできないのだ。女性であれば、風俗とかけもちするのが定番となっている。しかし、デフレ化が止まらず、既にセーフティーネットとしての機能を失った風俗嬢。シングルマザーが無理に働けば、本人は心身ともに壊れ、しわ寄せは子供にいく。
ところが、国の施策で介護報酬の減額と、利用者の負担増。そして、地域包括支援制度のスタート。これは、国が介護を切り捨て、市町村に押し付けたものにほかならない。2025年には100万人の人手不足になるというのに、本当に生き地獄しかないのだ。本書には解決策はほぼ示されていない。逆に、示せたらウソだと思う。
Posted by ブクログ
指摘してることが受け取りにくいのは、事実のややこしさだけではないだろう。ジャーナリスティックな筆致による部分も感じる。外から金を持ってくることと、中で回し外に出さないことがうまくいけば何とかこの100年を乗り切れるかなあ。
エロスとタナトスがつながっている、は共感する。必要なんだろうなあ。
Posted by ブクログ
休みの日に買い物に出かけると、スーパーも商店街もお年寄りが沢山いる。カフェに入っても本屋で本を探している時も同じだ。私は車をよく運転するから、高齢者マークの車も増えたと感じるし、それと同時に近くを走る際はいつも以上に気をつける様にしている。以前信号待ちをしている際に、前を走っていた車が赤信号で停止したが、停止線をだいぶ過ぎて止まってしまったので、後ろに待つ私に向かってバックして来た。バックギアに入れたまま信号待ちをしているので、恐らく青信号と同時に後ろに来るだろうと構えていたら案の定、バックされた時はヒヤッとした。その車も大きなサイズの外車であったが高齢者マークをつけていた。私もそれ程若くはないが、いずれ歳をとり高齢者に分類される。その際に今と同じ様な瞬発力や判断力、認知機能が維持されているか自信は持てない。私自身が大学では法学部に居ながら、高齢社会の税制改革について卒論を書いた経験がある。数十年前に日本の高齢社会の破綻(財源も人手も極端に不足する社会)を研究していた事から、今その様な社会に向き合いながら大きな改善も無く予測した暗い未来に突入した事を肌で感じる日々だ。
本書はその様な超高齢社会に於ける介護現場の実情を描いた作品だ。高齢者の中でも介護保険制度上は、要支援の2段階と、要介護の5段階、合計7つのレベルに分けて、介護保険の支給額や本人たちが受けられるサービス内容が異なる。勿論レベルによって介護や介助に必要な時間が変わるから、介護施設への報酬額も変わる。本書は2015年の介護報酬改定後に多くの介護事業者が破綻し、その後訪れた介護現場の惨状を中心に描いている。介護に従事する人々の負担とかけ離れた低収入の問題、それがもたらす介護従事者の売春や不正請求など問題が多岐にわたる事を説明する。確かに介護に従事する人々は入浴サポートやトイレの世話、昼夜を問わず精神や肉体を削りながら務める仕事でありながら、給料が低いという話はよく耳にする。そして、圧倒的な人手不足は世の中全体の労働力不足よりも、介護業界には遥かに厳しくのしかかっている。介護する側の高齢化も進む。更にはそうした厳しい業界にありがちな労働関連法規やコンプライアンス順守などがまるで無視される様な現実が、多くの介護現場に多かれ少なかれある事は容易に想像できる。
本書はそうした現実を「売春」「暴力団との関わり」「殺人」後半はそうした社会を「生き地獄」さながらの表現で畳みかけ、かなり極端な表現で恐怖心を煽ってくる。だが筆者は実際に介護事業者として事業をしていた経験もあり、程度こそあれ、多くは似た様な現実があったのではないかと思う(極端であり真実か否かは知りようもないが)。中々そうした状態に近い現実があると仮定し、本書を読み進めていくと、これだけでかなり内容の濃い映画作品一本は作れるだろう。それだけ厳しい世界が介護の実態なのだとも考えられる。
私もいつ要介護になるか分からない。更に高齢化が進展し、今後益々、高齢者にとっては住み辛い社会になるかもしれない。出来れば元気に生き生きと老後を過ごしたいと誰もが思うが、誰しも自分自身の健康に絶対的な自信は持っていない。せっせと貯金して老後にホームに入っても周りに迷惑かけないだけのお金を溜め込む。一所懸命働いて貯めたお金が自分の不幸や恐怖の為に支払われたくはない。健康や若さの有り難みをしっかり感じながら、未だ未だ若い層にある内に、こうした社会問題に真面目に向き合いたい。お先真っ暗になる前に。