あらすじ
中国は理解しにくい。だが理解せずにすむ時代は終わった。変化が速すぎる一方で、伝統中国もまだかなり残る。漢民族が圧倒的に見えても、国土は広く、民族的多様性も無視できない。中間層は増えたが地域間、社会階層間の経済格差も大きい。どの中国が正しい姿なのか。専門研究者・ジャーナリストによる中国研究の最新結果を結集し、中国をバランスよく見る視座を示す。現代史、文化史、思想、社会、軍事、地域研究など分野を異にする十一人が、明快で多彩な講義を繰り広げる。
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Posted by ブクログ
本書のタイトルにあるように、今の中国を知るには私個人的には役に立ちました。
ただ本書は「光田剛編」とあるように、専門研究者やジャーナリスト、それに光田剛さんを含め、複数の方がテーマ別に書かれたものを集めて一冊にしています。そのため、「この人は、こう書いているのに、こちらの人は別のことを書いている」といったような内容になっています。
これすなわち、中国という大国は、簡単に1冊の本では説明がつかないくらいに複雑かつ大きな存在であるということと理解しました。
隣国なのに近くて遠い中華人民共和国。
帯に「知らないでは済まされない中国の真実」と謳っている理由がわかります。
Posted by ブクログ
成蹊大学で2015-16年にかけて行われた行われた寄付講座の講義録を一冊にまとめた本です。中国関係の本は時々読みますが、本書は分野の専門家が、文化、歴史、国際関係の3つの切り口で持論を展開しています。
現在の日本での中国に関する報道ではあまり扱われないトピックや史実にスポットライトが当てられており、興味深く読みました。例えば以下の点です。
- 1972年の日中共同宣言で、中国が日本への戦時賠償請求を放棄していること。一方、日清戦争では清より2億3000両(当時の日本の国家予算の4年分)の賠償を日本が手にしており、これを資金として八幡製鉄所や三池炭鉱といった、後の日本の工業化が推進されたこと。
- 中国ではないが、琉球からの視点として、1972年の沖縄返還は、1879年に明治政府が琉球を強制的に併合した第一回、1952年のサンフランシスコ講和条約でアメリカの統治下におかれることとなった第二回に続く、三回目の「琉球処分」という言い方をされており、沖縄の人々の意思を省みられることなくその帰属が決定されてきた、ということ。
- 欧米では1648年のウェストファリア条約以来、主権国家は対等であるという原則だが、歴史的に東アジアでは、中国を中心とする冊封-朝貢体制の存在が見られ、これが現在の中国の対外政策に影響を与えているのではないか、という点。
東アジアの今後の情勢を考える上で、様々な視点を与えてくれる一冊でした。