【感想・ネタバレ】不道徳な見えざる手のレビュー

あらすじ

経済とは、釣り師とカモの永遠の闘いである!

ノーベル賞受賞経済学者コンビによる、『アニマル・スピリット』の続編。

アダム・スミス「見えざる手」への盲目的な信仰を壊すパワフルな一冊。

賢明で誠実なあの人が、なぜたやすくだまされるのか?
なぜ、不道徳なふるまいをしてしまうのか?

自由市場はすばらしいという「虚構」を明らかにする事例の数々。
すべてのビジネスパーソンに読んで欲しい、本当はこんなに恐い自由市場の話。

●本書の主な主張

・経済システムはごまかしだらけで、みんなもそれを理解するべきだ

・競争市場は、革新的なビジネスヒーローのやる気を引出し報いるのに長けている

・その一方で、誠実とは言い難い行動を促す圧力も奨励されてしまう

・人々は驚くほどしょっちゅうカモとして釣られている

・カモ釣りは、いたるところに存在している

・私たちの「肩の上のサル」は、私たちに深刻な影響を与える

・悪いのは釣り師ではない。釣られる人々でもない。カモ釣りをうながすシステムだ

・結婚式や住宅購入など、特別な買い物はカモ釣りの絶好の機会だ

・最悪の不景気をいくつも招いた最大の原因は、金融市場でのカモ釣りだ

・健康にとって有害な医薬がいまだに後を絶たない理由もカモ釣りだ

・政治(選挙)は最も単純な釣りを起こしがちだ

・カモ釣りとがんには類似性がある

・経済学者の市場理解には問題がある

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 帯の『ノーベル賞受賞者による衝撃作!』に大分釣られました笑。
 私はそこまでの衝撃は感じませんでしたが笑、非常に”大人な”、バランスの取れた経済エッセーであると思います。ただ、全体的にはロジカルというわけでなく、事例集・論説集の雰囲気です。

 本作は、(時に詐欺的ですらある)釣りという行為(合法的な引っ掛け!?)を切り口に、人が必ずしも合理的な選択・自己の厚生の最大化をもたらす選択をするわけではないという点にフォーカスし、警鐘を鳴らします。
ポテチは体に悪いとわかっているのに食べてしまう、広告側も消費者のニーズの有無ではなく欲求を喚起し購買をそそのかす等々。自由主義の下では、合法であるものの道義的に疑義がつきかねない事も広告や政治の世界で起こることを例証しています。

 他方、こうした非合理的な選択ができる自由主義的社会を社会主義よりも評価し、穏健かつ進歩主義的な社会観を唱えているように見えます。確かに完全ではない自由主義だが(だます自由?だまされる自由?)、社会主義と比較すれば全体の厚生ははるかに大きく、それ故に・だからこそ(一定の厚生を維持し行きすぎがないよう)規制当局による公的な制限は必要だとしています。もちろん営利企業やロビー活動により規制当局が篭絡されたり、上部組織から圧力がかかることもあるでしょう。それでもなお、厚生という観点からだと自由主義が良いと言っているように聞こえます。

 このように見ていくと、経済学は、経済モデルの構築や経済そのものの分析という従来の本分から、その経済のメインアクターである人間へと関心を移らせているように感じます。

 自由主義はもはや完璧ではなく、またその不完全さや寛容こそが厚生を増大させる(自動車の普及、インターネットの普及、グローバリゼーション等々)とすると、そうした不完全な社会でもベターな制度やあり方を模索するのが学としての経済学の本分になるかもしれません。ただ、個人的にはそうした社会の在り方もさることながら、先生方は不合理な選択をしてしまう人間の性に関心が移ってきているようにも見えます。

・・・

 さて纏めますと、この経済エッセー(と呼ぶには分厚い)は、内容的も面白く、筆者の人間的な円熟味が感じられる本であると思います。時間が取れる方、人間の非合理的側面に興味のある方、金融や経済に興味がある方にはおすすめできそうです。ただし、専門的な内容も多くややわかりづらく、また専門家的には新たな事実はないとのことです笑(解説参照)。

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2021年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自由市場というシステム自体がカモと釣り師が必然であり、その仕組みを説く。それを克服するための示唆が見当たらなかったが、システムを破壊して、カモと釣り師が発生しえない社会を作るというよりは、個人としてその両者に巻き込まれないようにする、というのが現実的と理解。

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2017年10月29日

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