あらすじ
ぼくと神永、三上、長田はいつも一緒だ。ぼくがまさしにどつかれて左目を腫らしたと知ると、神永たちは仕返しにゲーセンに向かい、教師や先輩からの理不尽には暴力で反抗する毎日。ある晩、酔った親父の乱暴にカッとなった神永は、台所に2本あった包丁を握る。「お前にやられるなら本望や」そう言い放つ親父を、神永は刺すのだが……。
痛みと苦味のなかで輝く、少年たちの青春群像。
◎解説=町田康
「悲しみのなかを漂う優しさには暴力の気配がたちこめる。」
「読者の魂に素手で触れてくるような小説である。」
「私は魂が振れた。」
――町田康氏(小説家)
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Posted by ブクログ
これは私的傑作です
これほど鮮明な少年たちを書けるのかと思うほど
彼らの声、息、歩き方までリアルに脳裏に浮かぶ
篠田、神永、長田、三上の4人を主軸に篠田の一人称で語られる物語
群像劇ではあるのだが、そこが山下さんの妙で篠田の目線で神永の痛みを共有するような予知夢?を見たり
篠田の目は千里眼のように他の人の「今」を語ったりする
夢か現かとはこのことです
神永は家庭環境が劣悪で、篠田家も貧しいとても
その住居環境の周りには暴力や日常茶飯事でそこに悲しみや優しさがある
彼らの心の中に精錬さ深い繋がり思いやりが見える
絶対に裏切らないし見捨てない
混沌雑多な街だからこそ彼らの絆は深いのかもしれない
それがないと自分たちが壊れていくかのように寄り添い合う
そこには哀れみや同情など安い感傷は介在しない
ただ現実を受け入れ粛々とすごす子供なりの乗り越え方
そこには友が全ての小さな世界で
青年期にしか持ち合わせない清冽さに彼らの痛みや慈しみに胸がうずきました
大人ではない不自由さと自由さ
そういう曖昧な時期の空気感が見事な描写で書かれてました
ラストまで人の悲しみに優しく柔らかく包むように寄り添う
素敵な作品でした
私が大好きなエドワード・ヤン監督の作品と似た印象だなと思いました