【感想・ネタバレ】学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまでのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

薄々気付いてはいたが、私は本のジャンルとしての「自伝」がものすごく好きなのだと思う。
奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』がとんでもなく面白かったのは、勿論内容の素晴らしさもあれど、そもそも自伝一般に私がめちゃくちゃ弱いためもあっただろう。
ふだんは基本的に小説しか読まず、自伝やエッセイといったノンフィクション系はなんとなく避けてきた(フィクションこそ至高、という若気の至りで)のだけれど、そろそろちゃんと自分の好みに向き合ったほうがいいかもしれない。考えてみれば、自分について考えるのが何より大好きで、自分語りが大好きで、他人の自分語りを聞くのも大好きな自分が、自伝を嫌いなわけがない。





『アリスとテレスのまぼろし工場』を観てマリー熱が高まったので、積んでいた自伝を手に取った。軽い気持ちで読み始めたのにめちゃくちゃ面白くて、何度も爆笑したり号泣したりしてしまった。人は子供時代の家庭環境に左右されるんだな、とつくづく思う。お祖父ちゃんと恩師下谷先生の章が特に印象深い。自分の文章に向けられた「批評」の意義について。

『DTエイトロン』から始まるアミノテツローさんとの関係も全く知らなかった。『おとぎストーリー 天使のしっぽ』(2001)も。

自分は秩父に行ったことないのに、母親に「マリーのアニメ観て下さいよ」と言った『あの花』オタクのエピソードが出来過ぎていて勝手に自己投影して感動してしまった。『花いろ』の松前皐月への母の反応も、『ここさけ』の成瀬母の台詞をきっかけにした岡田親子のやりとりも、最高ですね。これを読んで、岡田麿里作品の男性キャラの造形はまた色々と考えてみたいと思った。

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2023年09月18日

ネタバレ

ドラマがとても良かった。
自分は中学の頃の記憶は丸ごといらないと思っていて。
常に主人公の気持ちが、綺麗事抜きの本音、叫びで描かれていて、楽な気もちで見れたから良かった。
一番自信のなかった中学という時期に、皆頑張ろうよみたいな空気は、本当に遠ざけたかった。
先生がいい子と評価するタイプほど苦手だった。



朝日新聞で作者さんの特集記事で、全然写真の表情が無表情で若者に夢を与える表情じゃなかったのが印象的だった。
嘘がなくて、いいと思う。

ずっと鬱蒼としてた主人公が上京して、
壁にぶち、当たっていくのだけど、
殻を破って恋に夢にを形にしてく姿は、見ていて爽快だった。
自分も専門学校時代が人生で一番ワクワクした時期だったので。


 



#エモい #共感する

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

過去と向き合い、乗り越えてゆくこと

2011年のこと、アニメ『花咲くいろは』第一話の冒頭シーン、ヒロインの緒花と母親との会話を聞いて、驚いたことがあります。

> 緒花「ママ、私、ママの子じゃないの。ママの親友が病弱なジャズシンガーで、港にやって来た米兵さんとの間で産んだ子なの」
> 母「あー、あたし女友達いないしー。それに子供から告白する台詞じゃないわねえ、それ」
> 緒花「残念」

 これ、ものすごく計算された会話なんですよ。たったこれだけのやり取りで、
・緒花が現実から抜け出すことを夢見ている少女であること。
・母親がダメ人間であること。
・緒花はそんな母親を嫌ってはいるけど憎んではないこと(憎んでたらそもそもこんな会話はしない)。
 などを、番組開始から40秒で、視聴者に分からせてしまうんです。これには恐れ入りました。普通、こういう設定って、ついつい「説明台詞」で語らせたくなるものなんですが。
 このシーンの脚本を書いたのが岡田麿里さんです。
 それまでも『とらドラ!』とか『シムーン』とかは観てたんですが、「岡田麿里って上手い脚本書くんだなあ」と明確に意識したのはこの一瞬でした。その後も『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(通称『あの花』)や『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』などを観ていて、「あっ、ここ上手い」と感心することがしばしばありました。
 これは天性の才能なのか、それとも誰か名のある脚本家に師事して学んだのだろうか……と、ずっと考えていたんですが、先日、その岡田麿里さんの自伝が発売されました。タイトルは『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』。
 そう、岡田さんはひきこもりだったんです。

 ひきこもりの人の多くは、家から出られなくなった直接のきっかけがよく分からないそうです。この本でもそうで、いろんな小さな理由が積み重なって、岡田さんは学校に行かなくなった。明確な理由がないために、それを取り除けば魔法のように治るということもありえない。
 知らない人からは「さぼっている」「ずる休みしている」としか見えない。でも、本人にとってはすごく苦しいことなんです。タイトルにあるように、学校に「行かなかった」じゃなく「行けなかった」んです。
 その体験は、『あの花』の主人公、ひきこもりの高校生・仁太に投影されています。仁太の描写の多くは、実体験に基づくものだったんだそうです。
 そんな岡田さんが、どうにか高校を卒業して、故郷を離れて東京で一人暮らしをはじめ、下積みの地道な仕事を重ねて、アニメのシナリオライターになってゆく。ついには『あの花』のような話題作を手がけるまでになる。その紆余曲折が描かれています。
 サクセス・ストーリーではあるんですが、決して楽天的ではありません。読んでいると、彼女がどんな努力を重ねてきたかがよく分かる反面、努力をやめたらまたすぐにひきこもりに転落しそうな危うさが感じられ、息苦しいんです。

 後半は、『あの花』の裏話。自分の故郷である埼玉県秩父市をモデルに、自分の体験をヒントにしたひきこもりのキャラクターを主人公にしても、岡田さんはなかなか過去に向き合うことができません。本当は別の町にしたかったけど、ロケハンに来たスタッフが秩父市を気に入ってしまい、現実の秩父市を再現したリアルな背景で描かれるようになります。それどころか実家までも作中で登場することになってしまう。アニメが放映されると、舞台になった場所を訪れるファン(いわゆる「聖地巡礼」)も増える。
 故郷から、過去から逃げ出して東京に来たというのに、その過去が追いかけてくる。岡田さんは否応なしに過去に向き合い、自分の過去に決着をつけることになっていきます。このへんがもう、息苦しいんですけど感動します。
『あの花』が好きだった人なら、読んで絶対に損はないです。僕は読んでいる間、エンディングテーマ「secret base 〜君がくれたもの〜」が頭の中で流れていました。

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2023年10月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「あの花」「ここさけ」「凪あす」「さよ朝」。
私の好きなアニメの数々を生み出したマリーの自伝。

すごい人生でびっくりしたのと、ああ、この経験や性格から「あの花」「ここさけ」ができたんだなと納得した。
ただ、これでなんであんなに女の心情描写がうまいんだって疑問には逆に思ったけれども。

とても興味深くおもしろかった。
特にシナリオライターとして歩みだしてからが。

これからのご活躍にも期待。

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2021年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

題名とおり、「あの花」「ここさけ」を代表作とする脚本家である筆者の自伝。その筆者が、実は小学校から高校まで学校へ行けずに自宅に籠っていた、という驚きの事実から、ヒットメーカーとなるまでの半生記が綴られる。
あらすじだけでも良い話。学校へ行けない、というのがどういう心の動きを持っているのかがわかり、外に向かう展開は感動的である。が、「あの花」「ここさけ」のような感情の震えがあるかというと、そうはならなかった。エピローグを読んでもハッピーエンドかといわれると悩ましい。
大竹まこと氏がラジオで、ゲストの本を最後まで読んだ、でも読めてなかった、わからなかった、という趣旨のことを述べておられたが、同じく自分もこの本を読めきれていない。
筆者の視点は客観的で冷静だ。部屋・秩父の山奥という「小さい世界」での苦境から「外の世界」で羽ばたく、というような流れで感動的に描くこともできそうなところ、そのようには書いていない。そのため、不登校児ではなかった自分には、その境遇に共感することもできない。また学術書でもないから、不登校になる動機などを網羅的に知る、ということもできない(これはあくまで一つのサンプルとしてとらえるべきだろう)。さらに筆者は同年代であるため、(年齢だけを理由に)上から目線で「よく頑張った!」ということもできない。良い話なのに、感情のもっていきどころがない。
筆者が恐る恐る接触を続けていた「外の世界」で、シナリオライターという職に出会い、目標として試行錯誤しながら少しずつ成功を積み重ねていく。「書ききることができる力」を武器に。ここで、これまで比較的冷静的だった筆者の熱量が上がり、感情の昂ぶりに共感するシーンが描かれる。アニメと出会うのだ。
『嬉しくて、わんわん泣いた。・・・
「すごい、嬉しいと涙ってしょっぱくない!」
・・・その作品に関わった皆が、同じように苦しんで、同じ痛みを同時に持つことができる。だからこそ、強烈に幸せを感じられるときも一緒。それは観てくれている人も同じ。観てくれた人が喜んでくれたら、泣いてくれたら。私もこうして涙が止まらないのだ。』
そして、「自意識なんてくそくらえだ」と自ら監督に売り込むに至る。
ここまで自らの人生を駆動させる熱量との出会い、ここがこの本のピークと感じた。

しかしこの本はここでは終わらない。ここからはアニメ制作ならではの出会いもあればトラブルも描かれる。でもそれは筆者が惚れたアニメという仕事の事実なのだろうし、名が知られることの事実なのだろう。でも、一方的に感動的な成功譚で終わらせないこと、それこそが筆者が描きたい光と影の二面性かという気がした。
そして苦しみにぶつかりながらもこの世界にほれ込み、仕事をものしていく姿は、やはり眩しいのだ。

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2019年02月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「あの花」「ここさけ」の脚本家。

よく書いたな・・・というのが正直な感想。
此処まで赤裸々に出しちゃった人って少ないと思う。

私が学生時代はまだ「登校拒否児」というのが珍しかった。
小学生時代は居なかったし、中学でも学年で一人。
著者の時代は、当時社会問題として浮上していたことを覚えている。
会が 軟化してきた と当時はようやく思った。

ある意味、出現できるチャンスで出てきた人。


作品にはかなり色濃く彼女の地元が散りばめられてる。
だからこそ。
アニメであり、共感を呼べるんだと思う。
 アニメは子供のもの というが。
本当にそうなのか。
大人が楽しめなくて、子供が納得するのか?

私の持論だが。
大人が一生懸命作ったものは子供は肌で納得する だ。

できれば。
登校拒否の真っ最中でない人が読んで理解する本かも。

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2018年01月23日

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