【感想・ネタバレ】乳酸菌、宇宙へ行くのレビュー

あらすじ

一大ブームとなった腸内フローラ。今や人間の健康に腸内環境を整えることが欠かせないのは常識となった。その数100兆個以上といわれる腸内細菌のバランスに大きな影響を及ぼすのが乳酸菌・ビフィズス菌を始めとするプロバイオティクス。腸内フローラを整える働きをもつ微生物を指す。医師も病院もない宇宙空間で長期滞在する宇宙飛行士が乳酸菌を摂取すれば、免疫機能や腸内環境にどのような影響があるか。そんな実験も始まろうとしている。乳酸菌は、果たして究極の予防医学となりうるのだろうか。

科学に基づいた遺伝子レベルでの最新情報とともに、健康を保つために最適な乳酸菌とのつきあい方を紹介する、腸内フローラ研究の決定版。

【目次】
◆ようやく見え始めた腸内細菌の「姿」
◆赤ちゃんの腸内細菌はどこからやってくる?
◆腸内細菌は人間の“味方”なのか“敵”なのか
◆有能な乳酸菌の性質とは?
◆見えてきた日本人の腸内フローラ「標準値」
◆フードファイターはなぜ太らない!?
◆乳酸菌は生きて届かないといけないの?
◆乳酸菌飲料はいつ飲むのがいい?ほか

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

タイトルの、宇宙へ行く!が特に気をひくが、内容は、腸内細菌にまつわる最新情報について。幾つかのコラムが記憶に残った。

・ヤクルトに深く関わる「ヘルシスト」という情報誌の編集だからか、L.カゼイ・シロタ株の有用性が非常に多く書かれていた。ヤクルトを毎日飲みたい気分になり、実際に飲み始めた(笑)ヘルシストも購読してみようと思う。
・活動場所が乳酸菌(→小腸)とビフィズス菌(大腸)の違うこと。
・乳酸菌は死んでいても効果があるとは思っていたが、便秘改善効果については、生きて腸まで届かないと×なようだ。
・L.カゼイ・シロタ株は胃酸に強く、生きて腸に届く菌のようだ。
・科学的根拠・エビデンスを市s雌債に、プラセボという、思い込みを排除する手法が多く使われている事がわかった。

0
2017年06月15日

Posted by ブクログ

タイトルはキャッチーだが、現在の腸内フローラ研究最前線をわかりやすくまとめていて読みやすい。若干、乳酸菌飲料会社のヤクルトに好意的な記述が多い印象だが、ひいきの引き倒しというほどではなく、ほどほどのバランスを保っている。
ヘルシストというのは巻末に紹介されているが、文藝春秋が編集制作している健康情報誌で、書店等では販売されず、年間定期購読形式で発行されているものだそうである。
いずれにしろ、一般向けの健康情報ということで、話題性のあるトピックで興味を引きつつも、非科学的なところまでは突っ走らないあたり、良心的で良質な印象を受ける。

タイトルの「乳酸菌、宇宙へ行く」は、宇宙飛行士の健康管理に関する研究を指す。
乳酸菌を含む腸内細菌からなるプロバイオティクスは、健康によいとされ、特に予防医学の面からも注目されている。一方、宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士は閉鎖的な微少重力空間に置かれる。ひとたび体調が悪くなってもすぐに病院に行くことなどは不可能である。そうした環境で、継続的にプロバイオティクスを摂取することによって、体調維持に役立てることが可能なのかを調べるというプロジェクトである。
まだ端緒についたばかりで、まとまった結果が出るのはまだ先であるようだが、長期的には、こうした研究で得られた成果は、月や火星に人類が長期移住する際に、あるいはもっと身近に地上の人類の日常の生活に役立てられるものと思われる。
至って真面目な研究なのである。

その他、取り上げられているのは、腸内フローラと免疫機能、腸内フローラが脳を初めとする全身に与える影響、そして多くの人の関心を集めそうなダイエットや美肌、老化防止に関する話題。体に「よい」とされる腸内環境を整えるにはどうすればよいのかという「腸内ガーデニング」の手引きなどもある。
ざっくりと、前半は腸内フローラ研究の歴史と概観、後半は実生活への取り入れという構成である。

腸内細菌の数の多さから始まり、腸は「食物」と「異物」を見分けなければならない場所であることという視点がおもしろい。話題の「糞便微生物移植療法」にも触れられている。
腸内環境改善に役立つ微生物を「プロバイオティクス」と呼び、こうしたプロバイオティクスの増殖を助ける食物を「プレバイオティクス」と呼ぶ。2つを同時に摂取することを「シンバイオティクス」と呼ぶ。こうした用語の定義もわかりやすくまとめているところがさすが雑誌編集部といったところか。

前半を読んでいて改めて思うのは、人類が腸内細菌群を見出した過程が、疾患がきっかけであったため、腸内(あるいは共生)細菌が「悪者」であるというイメージがいびつに大きくなっていったことだ。
古くから人類は(他の生物も)体内や表面にいる多くの細菌とともに生きてきており、互いにせめぎ合い、時には一方に利となり、時には他方に利となる関係を保ってきた。ある場合には、どれかが一方的に激しく勝ってしまうこともあり、けれどもまた揺り返しがあり、長い目で見ればバランスが取れていたはずである。
病気は細菌が引き起こす事態の一面ではあるわけだが、そこをクローズアップしすぎて、細菌=黴菌のイメージが強くなりすぎた面はあったのではないか。

腸内細菌が免疫にも大きな役割を果たしていることも徐々に具体的に明らかになってきている。
こうした話を聞いていると、互いに及ぼす影響が、互いの進化に影響を及ぼすこともありそうにも思えてきて、なかなかスリリングである。

本書自体は飛躍的な結論を導いているわけではなく、(後半の実生活への活用も含め)常識的な線でまとめている。
腸内細菌にちょっと興味のある人、健康に関心のある人と、幅広い層に楽しめそうな1冊である。

0
2017年05月28日

「ノンフィクション」ランキング