あらすじ
2010年の経営破綻から再生を果たし、2016年3月期には過去最高の営業利益を上げた日本航空(JAL)。再生の原動力となったのは、アメーバ経営・JALフィロソフィの導入により意識改革し「燃える集団」となった最前線の社員たちだ。
会長に就任した稲盛和夫氏の教えを採り入れ、客室や整備、空港などの現場は日々の業務を改め、採算性を改善。また、破綻で失ったブランドと信頼をゼロから再び築き上げるべく、各現場は自社のサービスを見直し、空港や客室での接客の改善や世界一の定時運航、驚きや楽しさのある新たな機内食など、サービスの向上につなげていった。
併せて破綻後のJALでは「人づくり」を重視。新入社員教育から年3回の「JALフィロソフィ教育」、客室訓練、女性活躍、働き方改革まで、JALならではの行動哲学を徹底しつつ、全社員が働きやすい環境を整えるべく取り組んでいる。
生まれ変わったJALで、組織と社員の総合力が遺憾なく発揮されたのが、2016年4月に起きた熊本地震だ。二度にわたる震度7の揺れで熊本空港の発着便がストップし、現地スタッフの1/3が避難を余儀なくされるなか、各担当者はどう動いたのか。
雑誌『日経情報ストラテジー』で大きな反響を呼んだ特集記事に大幅加筆し、稲盛和夫名誉顧問へのインタビューも収録。航空業界を長年ウオッチする専門記者が、取材期間1年以上、対象者100人超に及ぶ綿密な現場取材を基に、JAL社員たちの最前線での奮闘ぶりを追い、リアルな筆致で描写したケーススタディ&ドキュメント。
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Posted by ブクログ
2010年にJALが破綻し、会長としてJALの再建を導いたのが稲盛和夫氏。現在はJALの名誉顧問。
稲盛氏は京セラ、KDDIの創業者でもあり、それらの経験を活かし、JALの再建にあたり
・JALフィロソフィと呼ばれる企業理念
・部門別採算制度と呼ぶアメーバ経営
を導入。
特にJALフィロソフィでは、自分の部署だけの業績ではなく、企業全体を律するための考えや各社員の理念となる哲学を子会社含め、会社の隅々まで浸透させた。
さらに、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ことを掲げた。潰れた会社の再建なのに最初の目的が社員の幸せであるが、従業員が幸せになれば必ず株主に報いていけると考えた。
こうした努力が身を結び、今ではJAL皆が心あるサービス、現場からの新たな提案などに繋がっていると感じた。
例として複数挙げられているが、
・機内食で吉牛やモスバーガーを食べるといった、飛行機で食べられるのという驚きの提供
・熊本地震の時、翌日からのフライト再開やJALスカイ九州の社長が全社員への生存確認電話、避難している社員へ定期的な物資調達 など
素晴らしい活動をしている。
個人的には経営者による体験も含めた考えなどを期待していたが、現場の細かい話やアメーバ経営による節約の話など、詳細すぎて中弛みがあったため評価を3とした。
ただ、最後には稲盛名誉顧問や植木社長のエピソードもあり、十分楽しめる著書でした。
Posted by ブクログ
飛行機、空港って、やっぱりワクワクするワードですが、やはり破綻してしまったJALに待ち受けていたのは過酷なものだったのねと。
破綻から再生、現場の裏側などを描いた一冊。
京セラ、DDIの創業者である稲盛さんのアメーバ経営やフィロソフィが、JALの現場の一人一人に浸透していった様子がわかります。
日本を代表する企業が破綻するというのは、ビジネスとか経済とかに詳しくない私ですら、そりゃ大変な事が起きた!と思いましたが、やはり子会社や関連会社の現場を担う社員一人まで意識改革していかないといけなかったんだなと…。
他にも稲盛さんの本やJAL再生の本は読んでますが、この「JALの現場力」の中で一番心に残ったのは、熊本地震の時にとった社員の方々の行動。
イオンと組んで物資を運んだり、臨時便を飛ばしたり、社会貢献という側面でも頑張りながら、被災した身内社員のケアもしていた事に、ジーンとしてしまいました。
会社は株主のものかもしれないですが、利用者(消費者)はもちろん、社員やその家族のためのものでもある!そういう気持ちになりました。
ANAやLCCと共に、正当な競争をしながら更に魅力的な飛行機会社になっていって頂きたいです。
Posted by ブクログ
◯部門別採算
・経営幹部の業績報告会、低い目標なら達成するのは当たり前と叱責され、高すぎる無謀な目標もいけない。自部門の実力を冷静に見定め、責任者が意思を持って数値を上積みし、目標達成に向けた努力をする必要がある。そしてその過程で組織は更に強くなる。それが、全員経営につながる。
・採算表をグループ内で共有し、みんなで採算意識を持つようにした。
◯女性活躍を阻む壁
・ロールモデルがいなければ、パーツモデルを集めよう
・「ブレイク・シーリング」と題し、アンケート調査で実態を調べた。ズバリ尋ねても回答が得られにくいので、上手く潜在意識を引き出すように行った。共分散構造分析。
・女性社員からは、評価への納得感の不足、職場内コミュニケーション不足、育児休業環境、男性社員からは、男性中心の職場風土、に票が集まった。
◯植木社長
・データを集めて推理して、◯◯だろうでも構わない。当社描いた通りでなくても失うものはない。失敗していない人は、人の上に立っても決断できない。若い社員に任せろ、責任を持たせろ、失敗するまでやらせろ、と役員に言っている。
◯フォロソフィ
・フィロソフィーの無いサービスはお客様の心に届かない。
・原点に立ち返り、モチベーションが上がる。
◯植木社長
・目標にどれだけ意思を込められるか。
・不正を起こさないために必要なのがフィロソフィー
Posted by ブクログ
破綻のイメージがなくなり、すっかり元気な会社になったJAL。破綻前から今までの数年間の変化は、外からはなかなか想像ができません。
会社がおかしくなっていること、そしておかしなことがそのままつづいていることを、社内の多くが認識しながら、まさか潰れることはないだろう、と誰もが思っていることの怖さがまず、印象に残ります。
そして、潰れる瞬間からどん底の不安まで、辞める人、残る人、残りたいけれど残れない人、それぞれの人間模様が、それぞれの方の言葉から伝わります。
復活できたのは、JALフィロソフィの力であるとは間違いありません。
当たり前だけれど大切なことが社内で共有され始めます。そして、分かっている、ではなく実際の行動にして互いに競争することが、短期間に会社を変える結果に繋がり始めるようになります。
その転換期間のころの空気感を感じることができるドキュメントと言えるでしょう。
機内食にモスバーガーを提供するための工夫を重ねるエピソード、そしてそれが実現するという結果が、新しくなったJALを象徴しているように感じられました。