あらすじ
漱石をめぐる「謎」の数々を書いた名著が、没後百年のいま、よみがえる。
日本近代文学の巨匠でベストセラー作家、夏目漱石。
その没後、夏目家にのこされた印税覚書をもとに、一連の作品の部数を調べてみると……?
漱石愛用の万年筆をめぐる、不思議なエピソードとは?
漱石最晩年の門下生にして、漱石の長女、筆子と結婚した著者だから描くことのできた漱石の思い出、漱石山房での木曜会の様子、、そして芥川龍之介、久米正雄、鈴木三重吉、菊池寛など漱石をとりまく作家たちの素顔。
漱石関連の八篇と、「新思潮」時代の回想二篇を納めた随筆集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『印税帖』という書名で敬遠すると、大きな損をする。
なかでも「漱石の万年筆」がおもしろい。昭和21年9月、松岡譲(漱石の娘婿)のもとに高岡(富山県)在住の知らない青年から手紙が届く。漱石愛用の硯と万年筆を所蔵しているのだが、親族に安価でお譲りしたいという。何度か手紙を交わすうちに、松岡はそれらが本物らしいと確信する。夏目家に照会すると、硯はなくなっているが、万年筆はあるとのこと。硯と万年筆は、いつどこでどうやって人手にわたったのか。愛用の万年筆は2本あったのか。松岡は、交渉を成立させ、現物を受けとるために(そして謎解きのために)高岡に赴くのだが……
「回想の久米・菊池」もおもしろい。松岡の旧制高校以来の友人で漱石門下、菊池寛と久米正雄のことが書いてある。漱石が亡くなって1年後、菊池寛は写真見合いをし、結婚する。これが微笑ましい。一方、久米正雄は漱石の長女に懸想し、彼女にふられてしまう。そしてその長女こそ松岡の奥さんになるのだが……どこかで読んだことのある恋愛小説のような実話。しかも漱石つながり。
鈴木三重吉のことを書いた「三重吉挿話」もいい。
Posted by ブクログ
夏目漱石の長女の夫、松岡譲の随筆集。
推理小説のような展開の「漱石の万年筆」、
著者の後悔が伝わる「宗教的問答」、
鈴木三重吉のお人柄が微笑ましい「三重吉神話」、
怪文書を見たときの怒りが伝わってくる「回想の久米・菊池」がお気に入り。
めっちゃさくさく読めた。