あらすじ
【FinTechは失業者を増やすのか?】
ペーパーレス化で人々の働き方はどう変わる?
今後5年間でテクノロジーの進化により世界510万人は失業する――。しかし、人口減少問題を解決するために日本は今以上にデジタル化を推進しなければならない。デジタル化が進む中、これまでにはなかったアナログな仕事も急増している。「消える仕事」と「生まれる仕事」。めまぐるしい変化のなかでFinTechは私たちの生活をどう変えるのか。
【「FinTech×保険業界」の可能性】
“保険版FinTech”は、「何」を変えるのか?
「医療保険」「年金保険」「終身保険」……、何らかの生命保険商品に加入している日本人はなんと約8割! 世界でも類を見ないほど普及している生命保険だが、複雑化する商品と販売チャネルで保険金を受け取れないケースも!?
―50年以上変わらない「崩壊寸前のシステム」が現役で稼動!?
―保険業界では「個々人の外交員の人脈=マーケティング」が常識!?
―保険業法改正で、不要な保険と高い手数料がなくなる!?
国内外の大手生保会社のコンサルティングやCOOを経て培った業界経験のある著者が、保険ビジネスの裏側を徹底解説。
頭打ちの「ネット生保」。転換期を迎える保険業界でFinTech、AI、ビッグデータが与える衝撃とは――。
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Posted by ブクログ
FinTechは保険業界の「何」を変えるか
藤井秀樹×松本忠雄
著者の主張の中で目を引くものは「統一プラットフォームの形成」というものだった。2016年の保険業法改正で乗合代理店の意向把握義務の強化や、比較推奨義務、そしてなんといっても手数料の開示などの諸改正が行われた。代理店が、お客様への適合性よりも保険会社から貰える手数料を基準に保険商品を選別しているのではないのかという前提の下顧客本位の保険営業という一環で手数料の開示等が求められた改正だった。しかし、手数料同様に、各保険会社のシステムの使いやすさ(募集人によるハンドリングの良さ)でも顧客の適合性に反して保険商品が選ばれたりしないかという懸念もある。確かに、募集人は手っ取り早く手数料で稼げる商品の選別を禁止された場合、今度は使いやすく素早く事務がこなせるような、時間を創出してくれるシステムを持った保険会社を選定するのではないだろうか。そうなった時、保険会社はシステム開発に予算を配分し、その予算の財源は付加保険料となり、保険料の上昇につながるのではないか?果たしてそれこそ顧客本位なのか?
そんな疑問がある中で、統一プラットフォームの構想は興味深いものだった。各保険会社共同の、システムやオペレーションを実現するという構想である。こうすることで、代理店が保険会社を選定する際に、真に補償面や保険料の単純比較をするようになるのではないかとも考えられる。
正直、上記についてはFinTechというわけではなく、現状に対する批判でもあるが、実際に著者はFinTechの導入の意義を本の中で書いている。それは、人口減少である。労働者の減少によって生産性の向上が叫ばれているのはともかくとして、人口が減少すると、顧客が減る。今まで新規開拓によって売り上げを創出していたマーケティングは既契約者の多種目化にシフトする必要がある。その際に、既契約者について、いかに情報を収集するのかという点がポイントとなり、それらの情報収集のツールの一つとしてFinTechを活用するべきであるという論考があった。これは確かにそうであり、既契約者を定点観測するようなシステムが出来れば、ロスプリベンションにも役立ち、事故率低下、結果として危険差益の増大ということも見込みことが出来る。
比較的生命保険よりの話であったが、一読に値する興味深い本であった。