あらすじ
賢者は、人間はいかなる時でも平常心を失うなという。しかし私にはその「平常心」というやつがどんなものかわからない。ふだんから、「矢でもテッポでももってこい!」という心でいるから、すぐ逆上して突っ走って外から来た苦労を自分で倍にも三倍にもしてしまう。しかし、そのおかげでまあまあ元気に人生への情熱を失わずに生きてこられた。「苦労の数々」に今、感謝している――(本文より抜粋) 60代後半に書かれた原稿の新装復刊である本書には、この60代後半の日々があってこその、93歳を超えて大ブレイク中の秘密が詰まっています。 自分を自然に任せきる(「自然」を「神」と考えてもいい)/病院に行くぐらいなら気絶して痛みを乗り越え自然治癒力を養う/いかなるマイナスにも動じなくなる「株」は人生修行の場/人間万事塞翁が馬。不幸な結婚は私を作家にした/脚長きハンサムな若者には気をつけよ…面白くて元気になる本!
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Posted by ブクログ
<忘備録・ネタバレあり>
1992年刊行を新装復刊したもの。佐藤愛子が70歳前後の時代なので、今とはまた違う古い観念がある。
竹を割ったようなはっきり明快な性格が気持ち良い。また孫に対しては「私は赤ン坊にかまけている。そして泣きしきる赤ン坊に、うるさい、黙れ、と怒っている。」などと容赦なくて笑ってしまう箇所が多々あった。
彼女の生き方の軸になっている考え方が興味深かった。様々な困難があったが怯まぬ努力で乗り越えてきたというわけではなく、ただ受け止めてきた、というのが逞しく、勇気づけられる。
楽天思考は苦労の中で上機嫌に生きるために培われ、それがさらに苦労を増やし、それがさらに楽天思考を強めた…という部分も感慨深い。自分ならめげて僻んで荒んだ思考になってしまいそうなのでめちゃくちゃ見習いたい。
反面、今時の若者は…男どもは…家電の使い方や電車の切符の買い方について…などといった話はどうにも面白がれず、むしろ少しだけ不快に感じてしまった。
株の話で宇部興産がでてきて、ラランドニシダのお父さんの会社だ!ってなった。
▼印象に残ったフレーズ
・確かに私は女にしては波瀾の多い人生を生きている。だが襲ってきた苦労を、何とか打開しようと考えて努力したことは実は一度もなかった。私はただ、苦労を仕方なく受け止めただけである。それから逃げることを考えなかった。ただそれだけのことなのだ。
・ある時「私は男運が悪い」とこぼしたら、遠藤周作さんはこういった。「君は男運が悪いんやないよ。男の運を悪うする女なんや」その考え方は私の気に入った。男運が悪いというと、なにかこう受身の、消極的な人生が浮かぶが、男の運を悪くする女といえば積極的な強い力を感じるではないか。私はすべてにそういう考え方が好きだ。
・いわゆる金もうけのうまい人は、無一文になった時でも、自分自身という金をまだもっているのである」(宗左近訳)私はアランの『幸福論』の中のこの一節を、何度も読み返しては自分を力づけてきた。「われわれ自身の力に依存する幸福は、われわれと一体になっている」私は「めげずに生きようとする力」を自分の財産にしようと思った。そしてそれを私の幸福とする──。そう思うことによって、私は元気を失わずに生きてきたのである。
・まことに人間万事塞翁が馬だ。禍福は糾える縄の如しだ。不幸な結婚は私を作家にしてくれた。借金は金への執着から私を解き放ってくれた。
・私はいつでも上機嫌でいたい人間である。憤怒する時でさえ、私は上機嫌で憤怒する。上機嫌で憤怒するという芸当を薬籠中のものにするには、余計な情念、恨みつらみは捨てなければならないのである。
・私は苦労の中で上機嫌に生きるために楽天家になった。楽天家になったことが更に苦労を増やし、それが更に私を楽天家にした。今は苦しくとも生き続ける限り必ずいい日がくると私は信じて生きている。
・「完全な意味でもっとも幸福な人とは、着物を投げ捨てるように、別の幸福を船外に適切に投げ捨てる人である」とアランは言っている。
「武器によって戦うように、幸福によって戦う」
「倒れようとする英雄にも幸福はある」
Posted by ブクログ
作家が25年前に出したエッセーの新装復刊本。
独特の毒気と昔気質感、お嬢様的なところ、年寄りの甘えと意地的なところも含めて佐藤愛子ワールドを感じた。
世間におもねることなく、しかし相手の立場や想いは見つめ、自分なりの身の処し方の筋を通している点は、自分もそうしかできないと共感した。
17-116
Posted by ブクログ
2017 第1版
戦争という激動の混乱の中を生き抜いてきた、大正12年生まれの痛快エッセイ。二度の離婚を経て物書きとして生計を立てるようになり、友達、家族に呆れられようと世間の逆風を受けようと、良妻賢母の価値観よりも自らの感性を恃み言うべきと思ったことを言う、すべきと感じたことをする。
どんな人間も死ぬときは死ぬ、正直は美徳か、男女の不当な差別は嫌だが差異はあった方が豊かだ、便利なモノを得ようとして窮屈になる。
‥‥
弱っている時、どうしたらいいかわからない時、うまくいかない時、私は常識や他人の評価が気になるということに、最近やっと気づいた。病んでいると集中できてドラマティックな小説などに逃げ込みたいが、今思えば物事を深刻に考えてもいいことはあまりない。面白いか面白くないか、やりたいかやりたくないか、それさえ分かっていれば、別に声高に正義をがなり立てずとも、いずれ収まるところに収まっていく。私の力など高が知れている。これでいいのだ、なんだっていい、そう思える本。
Posted by ブクログ
一見下らない事を真面目なようで不真面目に書いてあるので、こっちも気楽に読める。無責任なようで、そこまで行かず、考えているようで、自分勝手。これこそ理想かと。
Posted by ブクログ
初めて読んだ、佐藤愛子氏のエッセイ。もっと面白おかしく自虐的でゲラゲラ笑える本かと期待して読んだが、内容は、佐藤氏が日常イライラしていることにたいして、怒りをぶちまけている感じである。「上機嫌」というタイトルとはかけ離れていると思った。
大正生まれの佐藤氏は、2回離婚しており、それなりに苦労して娘を育ててきたようだ。娘が巣立ち、講演会などで多忙にしている様子。女性が活躍することに逆風が吹き荒れていた時代を通り抜けてきた貫禄がある。
彼女が書いているとおり、楽天家であることは長生きの何よりもの秘訣だと思う。楽天家で自信家だった祖母は104歳まで元気に生きた。楽天家になろうと思ってなれるものでもないが、理想の生き方だと思う。