あらすじ
IT×農業で有力な輸出産業に
第一人者が戦略の全貌を語る
農業を「質」で見ると、これほど有望な産業はありません。日本の農作物は世界中で高い評価を受けており、日本の熟練農家の技は“世界一”と言っても過言ではないでしょう。ただ、その多くは本人ですら言葉にできない「暗黙知」であり、スケールさせることが難しく、そこに課題がありました。
しかしここに来て、状況が変わりつつあります。IT技術の進歩により熟練農家の技を「形式知」にできるようになったのです。国内農家の底上げができるだけでなく、熟練農家の技を「知財」として安全に輸出することも視野に入りました。そうした取り組みを「AI農業」と呼びます。
「AI農業」の「AI」とは、人工知能(Artificial Intelligence)の研究をも包含する、農業情報科学(Agri-InfoScience)を指しています。すなわちAI農業とは、人工知能を含めた情報科学の知見を農業分野に適用することで、社会システムの変革を促す一連の取り組みなのです。
最新ITが「農業」を変革する――。その戦略の全貌が本書に書かれています。
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Posted by ブクログ
農業の標準化・合理化、ITによる暗黙知の利用などを進めていこうという提言
テクニカルな話題はあまりなく、基準つくりや啓蒙活動などの地道な努力の重要性を説く
・世界の農業生産量は1960からの五十年間で約2.4倍になった。農地面積はあまり増えておらず、単位面積あたりの収穫量を増やすことで生産量をふやしてきた。しかし世界人口は2050には90億人に達するといわれており、一段と効率化を進めていくべきだ。
しかし、栄養という観点から見ると1950と2005の比較でほうれん草のVitAは85%、VitCは77%減少している。人参のVitAは81%、VitCは60%減っている。単位面積あたりの収量を無理にふやそうとすると栄養価は低下しやすい。旬を外れた作物では特にその傾向が強い。今後は季節外れの作物で品質と栄養価の高い作物を安定的に供給するということもビジネスチャンスを広げるためには重要
・IT農業では、これまで経験や勘に頼ってきた部分をセンサーやネットで補おうとする。定年後に農業を始めようというひとにとって「水やり10年」はあまりに長い。センサーなどで適切な水の量を決め、熟練者からのフィードバックを受けながらエラーを修正していくという過程が大事になる。全国で使われている言葉の定義をはっきりさせることもIT農業では重要になってくる。「収量」というは収穫した量か、出荷する量か、乾燥後なのか、、、、など様々な意味で用いられているのを統合し、データの比較を可能にする