【感想・ネタバレ】人工知能が変える仕事の未来のレビュー

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Posted by ブクログ

よくあるAI本と違い、本質をとらえ正しく表現している良書。とくに「ソフトウェア開発者を建築家、デザイナー、アーティストと見なしてきた欧米、中国と比べると、日本の大企業では…ソフトウェア開発者を工場の組立工のように見なす」は完全に同意(ソフトウェア開発をエンジニアリングと表現すること自体違和感というか、嫌悪感すら感じる)。
最後の方、特に人材教育のあたりがややもすると安っぽいその他の一般論と被ってるように感じられたのが、唯一残念。
やはりこのくらいのボリューム感がないとこの手の話は掘り下げられない、ということか。とはいえ、この分厚さはぱっと見ウッ、となる。今回は著者がJ社時代の先輩?同僚?だったのが影響したが、今後の本選びの指標となった。

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2022年01月28日

Posted by ブクログ

本書が目的とするところは、AI技術の現状を正しく伝えて、「シンギュラリティ」といったような煽り言葉によって持たれるかもしれないAIに対する歪んだイメージを正したいということにある。

著者は次のように書く。
「著者が本書を執筆した大きな動機は、今回のAIブームがバブルとなり、弾けて、前回と同様、産業応用が頓挫することを怖れた点にあります。現時点のAIが人間と同じだとか、人間的な能力、人間的なやり方(本物の意思や責任感が生み出した新発想など)で問題解決する能力で人間を超えたとか、人間が学び得るあらゆることをすでに学べるようになったので、30年以内に全人類の知能を超える、などと喧伝するのも危険といえば危険です」

また、「大したAI技術も使っていないのに普通に検索、レコメンドをした程度で「AI搭載だからすごい!」と発表するような企業によってAIがバズワードとして消費され、いわゆるガードナーの曲線のやま(Hype)を超えて廃れてしまう心配があります」 と言うとき、過去のファジーやニューロといったバズワードが消えていった経緯を思い出している。確かにファジーやニューロはまったくそれが効果を持つ根拠がわからなかったが、AIは、かつて消えていった技術とは違うことは確かである。

著者はAIの議論をする上で、言及するAIをきちんと分類して議論するべきだという。具体的には、「強いAI-弱いAI」、「専用AI-汎用AI」「知識データの量:多いー少ない」の三軸でAIを分類するべきだと主張する。

「実際には何百種類、何千種類の異なる方法、AIがあるのに、実は点義も千差万別ではっきりしない人工知能を、魔法のおまじないのように称するのは、ほぼインチキ臭いといってよい」

現時点では、「強いAI」や「汎用AI」よりも専用型で弱いAIの方が実用的で現在の技術に向いているとし、その精度向上にはデータの量が重要であるが、データが少なければ少ないなりに何とかするというのもポイントのひとつであると指摘するものである。最終的には、上手くAIと共存することができるようになったものがもっともよくAIからの利益を引き出せることができるだろう。実態としては、自然言語処理は難しいが、専用の画像認識であれば人間以上に正確にやれるし、もちろん速度も人間とはけた違いに速い。

著者はいわゆるシンギュラリティ論についても手厳しい。とにかく、シンギュラリティのような夢物語を語ることで生じる誤解やその後の幻滅期について懸念を持っているのである。

「シンギュラリティ論や、「学習」「推論」「感覚的に理解」などの用語をこのように括弧付きでAI専用の定義の下で使わずに、人間の「学習」「予測」などと混同することから生じた未来予測が氾濫しています」

著者がシンギュラリティがすぐには来ないとする理由のひとつが、脳の神経細胞との構造上の違いである。

「3Dの完全立体配線である脳は、ひとつの神経細胞が平均で他の2万個もの神経細胞とつながっており、高々周囲の数個のトランジスタとしかつながれない通常のCPUとは、何桁も複雑度が違います」

もう少し納得感のある説明を挙げると、「ディープラーニングの代表格、CNNやRNNが目下得意とする「パターン認識」は、人の脳内の思考を模した人工知能というより、目や耳からの刺激が何であるかを忠実に判定する視角、聴覚の能力」なのである。

AIの適用を業務でもやっているが、AIにも向いているところと向いていないところがあり、自然言語処理などは相当に難しく、汎用AIの出現は相当先の話であるという考えを共有している。真面目で倫理的な抑制が効いた良本。

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2018年12月10日

Posted by ブクログ

AI普及に対する過剰な期待や危機感をあおることはなく、研究者としての目線で今までとこれからをわかりやすく説明。
今回は第3次AIブームであること、人類値を超える転換点は2045年までにはこないことと明記。
AIの3軸分類 強弱 専用汎用 知識データの量で分類し、ヒトの能力の補佐とヒト脳つくりから超知能までのレベルへと方向性をわかりやすく図示
AIの得意な分野、新サービスの開発、暗黙知での動きをディープラーニング活用など具体例で示している

ラブロックのサービス分類
IBMワトソン
LED電球Hue
JR東日本の空いている車両案内
パナソニック ホスピー

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2018年10月04日

Posted by ブクログ

なぜAIがブームになっているかの作文が必要だったので、参考文献として読んだのだけど、非常によいね。目的を達するために2章を付箋貼って繰り返し読んだけど、こういう読み方もよいね。
内容としても、多数の根拠と事例が書かれているので、非常によいね。
読めてないけど後半はインダストリーごとの活用例が書かれていて、これもまた興味深い。分厚いので今は読まないけど、いつかまた読む。

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2018年05月05日

Posted by ブクログ

全体を「第Ⅰ部 人工知能が変える10年後の仕事と社会」、「第Ⅱ部 人工知能が支える10年後のビジネス」、「第Ⅲ部 人工知能はどこに向かうのか」の三部構成として、それぞれ別々の本を出版しても良いと思われるほど、深く考察されています。

第Ⅰ部では、人工知能の現状を「強いAI―弱いAI」、「専用AI―汎用AI」、「知識・データ量の多寡」の三つの軸から現状の人工知能を解説し、ビッグデータ、IoT、ディープラーニング、FinTechなどの事例を分かり易く解説し、人工知能活用の切り口を明確にさせます。
第Ⅱ部は、人工知能を活用したビジネスの変革を、新規ビジネスから製造業、マーケティング、農林水産業、人事など間接部門について、自社開発の事例も含めて考察します。
第Ⅲ部で、欧州 米国 中国そして日本での人工知能開発の進め方を比較検討し、日本はロボットに分が有るとしつつも、過度の期待感を煽るマスコミに警鐘を鳴らし、『「なぜ」を問い続けることがどんな職業、立場でも機械と差別化できる突破口となる』と説く。

人工知能の研究者でもある著者が人工知能をしっかり捉えかつ経営者としてその活用を図る内容の濃い一冊で、とても勉強になりました。また、著者は、最近話題になっているシンギュラリティ(人工知能が人間を超えるという説)を否定して、人工知能を人間の道具として使うという姿勢で一貫している。人間の意識についての研究でも、情報統合理論や受動意識仮説などあるもののまだまだ解明できていない現状ではシンギュライティは無いとの説に私も一票です。

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2016年12月04日

Posted by ブクログ

AIが仕事にどの様にして入りこむのか、どの様な影響を与えるのかを多面的に考察されている。
とにかく著者は、昨今のAIが仕事を奪うとか、知能を持ち人間を駆逐するとかは全くのデタラメだと言う事を強く述べている。AIは総当たり。いわば力づく。膨大なデータを高速なCPUで処理、判定しているに過ぎない。そもそも【意識】の定義も曖昧にコンピュータが自我を持つ事は現実的ではない。仕組みを考えれば至極当然だ。
「道具は人間の能力の一部を超えていて当たり前」。つまりAIとは当然として道具なのである。

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2022年10月17日

Posted by ブクログ

「強いAI」「弱いAI」という分類がポイント。
今でこそ当たり前の分類だが、本書の出版当時としてはここの指摘は重要だったはず。

ざっくり、人間により近いのが前者で、コンピュータの得意分野(データ処理)に特化しているのが後者。言い換えると、「人間と区別がつかないくらい不完全」なのが強いAI。著者はこの領域は当分先、とみている。計算機としてのコンピュータに画像その他の認識技術を組み合わせ、「ある分野については人間よりずっと優秀」な機械、すなわち弱いAIを追究するのがビジネス的にも技術的にもトレンドだ、と。

人間にとって面倒くさいことを肩代わりしてくれる「秘書的なAI」は、我々の生活をずっと豊かにしてくれるだろう、というポジティブな未来観にも共感できた。

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2019年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

筆者の溢れんばかりの知識が満載。自動運転で、伊藤穣一と同じ論点が提示されていた部分は示唆に富み、今後も注意しておきたい。

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2018年05月28日

Posted by ブクログ

長く中身は濃い。
オチャメな書き方や例があって読みやすくなっている。
非常に深いので、その分野の方には良いと思いますが、入門者には十分すぎる内容かな。

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2018年04月03日

Posted by ブクログ

AIの簡単な仕組み、現状の能力、今後の活用方法等に付いて分かりやすく解説されている。
現状のAIは、筆者の言う通り自意識を持つようなことはないと思われる。ただ、技術の進歩は著しいので、脳のニューロンにもっと近づく物が出てくる可能性もあり、将来の実現性は否定出来ないと思われる。
何れにしても、現状では本書で言うところの弱いAIをうまく活用し、人口減を補い、より効率的で安全な社会の実現を目指すべきである。
一方、自律的なAIの出現等の備えて、倫理的、法的規制等についても検討を進めるべきである。

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2017年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

035 PC能力やxTechで過去にはできなかった大量データの解析可能
037 強いAI = 人間C3PO、弱いAI = 専門職R2D2
060 見て・聞いて理解する事はかなり補完可能
070 情報の収集、処理、蓄積、分析でAIの支援が必要
077 従来の仕事の流れを分解し、AIを取り入れてフローを再構築
082 消費者への対応のリアルタイム化
084 APIを活用し、データとアプリケーションの連携・活用
086 モノからサービスの生産・供給へ「ドリル」でなく「穴あけ」を提供。
086 サービスはその場で生産され消費される。在庫ができない。
093 ホテル宿泊受付 上客が出現する確率が高い時期に予約受付
099 ビールサーバの流量モニタリングで在庫補充自動化、鮮度向上。JRの床上センサ⇒センシングで何がわかるか
106 AIには何をデータ化しないのかが重要
109 AIポジショニングマップによるVoC分析や隠れた相関を見つける
130 認識系AI, 分析系AIがある
200 API活用によるエージェントで仕事の生産性をあげる
255 1本の100万PVより100万本の1PVが作成可能
266 ☆ディープラーニングによる監視業務サービス⇒画像や音による異常判定、オブジェクト認識
286 センサモニタリングによる異常判断
288 JCTシソーラスmapで専門概念の分類
293 監視・見守り・点検はAIで代替
305 住所による保険料の差異 同一価格⇒適正価格
319 製造業が情報産業で効率化⇒情報産業が製造業のセンシングを活用
324 異常検知、監視、抜き取りにAI 人間が見れる複雑な指標ではなく、単純指標の組み合わせで判断
344 マーケティングに基づくe-ビジネスの表
412 アルファ碁:過去対局データ収集⇒自己対局で強化⇒ランダム入れて再度自己対局
425 自治体でのAIユースケース事例
439 ☆自動運転による短車間距離による道路節約⇒自動運転ならではのオペレーション
447 AIは不具合の原因がつかみにくい。不具合の減災や責任の所在明確化必要。
456 AIに変わられる業務とは?
463 なぜを問い続ける事がAIとの差別化

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2017年02月26日

Posted by ブクログ

 最近「AI」という言葉を目にしない日はないが、それが何なのか、よくわからないというのが実際のところ。本書は、AI研究の第一人者が幅広くAI最前線・将来について解説してくれている。


「知能が明確に定義できていないのに、その人造版=人工知能が定義できるわけがない」

「強いAI」とは、…、「人間の脳と同じふるまい、原理の知能を作る」ことを目指すAI研究のことを指します。「弱いAI」は、「人間の能力を補佐・拡大する仕組みを作る」ことを目指す

 人間は人間の得意な新たな判定により機械向けのトレーニングデータという副産物を作りつつ本業をこなし、機械は人間たちの判断に対して、広さ(カバレージ)と精度を補完する。これが人間と機械の役割分担の基本戦略としてよさそうです。

 「APIエコノミー」という表現が2015年時点でかなり浸透している米国では、「APIをもたない企業なんてインターネットにアクセスできないコンピュータのようなものだ。かつてなら電話やメールアドレスをもたない企業みたいだ」という言い方がされています。

・AIの置き換えの実現に際して必要な検討
 ・まず可能な限りプロセス・チェーンのモデルを精密化すること。
 ・少なくとも、人間が担った場合に比肩できる処理の精度、速度、費用対効果を達成できること。
 ・あるイベントやファンクションが生成するデータ量、処理量の規模のバランスが著しく崩れ、無駄な時間待ちが発生しないこと。あるいは、その欠点を補い、ひとつのAIが、複数のプロセス・チェーンに時分割で利用されるように、経済性を改善できること。

 この新知識創造を含む、情報の解釈、理解の仕組みは、常に一定の動きをするわけではなく、その人のその時の願望、情報提供者への信頼、解釈して発言・行動しないと恥ずかしい事態にならないかとの懸念、意識的・無意識的な競争・忠誠・愛などの感情、意識、そして、様々なコンディションによって働きが大きく左右されます。
 これを「ヒトの学習」と呼ぶならば、ディープラーニング流の「学習」とはずいぶん違います。ディープラーニングは、「生データとその正解ラベルや別の生データの対応関係をトレーニング。人間があらかじめ与えた正解を出さずに失敗したときには正解に至る確率を上げるべく、各層間の結合線上の重みを調整する」というやり方で学習が進みます。「学習」と呼ぶより、「調教」、あるいは「トレーニング」と呼ぶのが相応しいでしょう。

 従来存在しなかった、AIを活かした新サービス、新製品は、次の要件が満たされて初めて出現します。
 ・ニーズが存在
 ・AIのおかげでコストダウン、スピードアップ、精度・性能が向上
 ・ニーズとその具体的実現方法を結び付ける技術、サービス提供の仕組みを、利益の出るコストで実現するアイディアの存在

 既存サービスの利用者から見れば、AIによる改善ポイントは、…早い、安い、うまい(高精度・高機能・高品位など)、という3つの形容詞にこめることができます。

 1to1マーケティングで最も重要なのは、身もふたもない次のポイントです。
 1to1マーケティングの目的:
 「新規顧客の開拓は(補充以外)は行わず、既存顧客層の忠誠心を高め、その顧客が死ぬまでの生涯購買金額(=LTV)を最大化すること」

 1to1マーケティングでは個別の施策を考える前に、本質的に次のIDICすなわち、
 Identify(一人ひとり、一社一社の顧客を認識すること)
 Differeiate(各顧客の好み、個別ニーズ、その変化に応じて商品・サービスを差別化)
 Interact(顧客と個別に情報のやりとり、アクションのかけあいを行うこと)
 Customize(顧客に発信する情報や、商品・サービスの提供プロセスをカスタマイズする)
 の4つの行動で、顧客と接するべきことを押さえる必要があります。

 「なぜ?」を考えられる人であれば、よほど完全に機械の部品として仕事させられているような職場以外では、どんな業界、職種、地位であっても生き残れる。そして、純粋に「なぜ?」を発しつづけられるように、子供のように素直な好奇心、上から与えられた現状に甘んじずに、より良い環境や成果物を作り上げようという、人間らしいモチベーションを自ら育成することがAIより優位に立つ上で大事でしょう。

・なぜ働くのかという問いへの回答により、人間とAIの根本的な違いを知る
 1.働くことは、お金をもたらす。工夫すれば楽しさも得られる。
 2.働くことは、明確な目標をもたらす。
 3.働くことは、出会いをもたらす。一期一会の出会いで人生が変わり得る。
 4.働くことは、学びをもたらす。
 5.働くことは、信用をもたらす。
 6.働くことは、自信をもたらす。
 この中のひとつとして、本来の意味で、AIに該当するものはなさそうです。

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

世の中で言われているようなシンギュラリティは、2045年にはやって来ない。シンギュラリティになるには、指数関数的に進化する必要があるが、AIが属するソフトウェア技術は、これまで指数関数的には変化していない。開発ツールの進化やオープンソースの共有によって2次関数的に進化が加速することはあっても、テレパシーを持たない人々の頭脳群の間で核分裂の連鎖反応のように指数関数的に思想、ひとつの思考の産物が肥大することはない。指数関数的な進化が起こった唯一の例外が半導体の高集積化である。いわゆるムーアの法則で、これらをベースにしたハードウェア上で動作させたことで、ソフトウェアが指数関数的に進化しているように見えているだけなのである。内部の基本的な計算手順(アルゴリズム)や、そもそもの計算方式(ノイマン型)の種類が指数関数的に増えたり、進化のスピードを早めたりした、という事実はないのである。

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2017年07月26日

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