あらすじ
私の人生では「新しい」こと、つまりまだ済んでないことがあります。それは死ぬことです。――養老孟司が「死」から話をはじめる、目からウロコの人生論! 「死」について、「自分」について、「世間」について、「学問」について、「現代」について、「日本人」について、「考えること」について――。著者が自身の人生を振り返りながら、生きるためのヒントを語りかけます。目次より:大賢は大愚に似たり。そっくりだけど大違い/自分の死なんてどうでもいい/本質的に変わらない「私」なんて、ない/中庸をとるために極端な理論を立てる/敗戦で私は「だまされた」と思った/「あたりまえ」は意外にむずかしい/自己チューの社会的意味/単純な解答はたいていウソ/「考えないほうがいい」ことなんかない/日本人は「生きて」いない/この国は「自分流より世間流」/日本も、私も、楽観主義でいきたい/※本書は二〇〇四年にマガジンハウスから刊行された『運のつき』(二〇〇七年、新潮文庫)を復刊し、改題したものです。
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Posted by ブクログ
著者のこれまでやってきたことを振り返りつつ、本質的には著者の価値観の形成に大きく影響したもの、そしてなぜそのような価値観が生まれたのかが書かれている。
哲学本ではないが、考えさせられることや、表現が理解しづらいところもあり、一度読んだだけでは全てを理解できないが、自分なりにも考えさせられる著書である。
・「死」を特別扱いしているが、解剖学で常に「死体」をしていた著者からすると、「死」とは全ての人が必ず体験することであり、特別なことでも何でもないもの。
・「死」とは何かと答えのないものを考え続けることに意味がある。「大賢は大愚に似たり」そっくりだが、有事になれば違いがハッキリする。
・著者に大きな影響を与えたものは、母親、第二次世界大戦、大学紛争。これらを通して、自分が普通とは異なること、学問とは何かを考え続けてきたことから、自分の思想が出来上がった。
・日本人だけは、「人」ではなく「人間」と書く。つまり世間の中で生きている。外国から見ると奇妙だが、この特性が世界に誇れる違いを生み出している。ただし、日本人は少数意見を好まず目立った発言をしないために、世界から誤解されている。
・人生には無駄なことはない。住んでしまった苦労を無駄だと思うことほど、無駄なことはない。人生は考え方次第ということ。過去の自分の選択があって今の自分がある。
・今の世界情勢や今後の経済動向などを考えるよりも、歴史の中で数えきれないほど同じようなことを人間は繰り返してきていて、そこには「変わらない」ことが含まれているはずだから、それを追求するのが学問である。
・人は単純な回答を好む。疑問に対してキッパリと歯切れよく答えると格好いい。でもそれは、たいていが嘘である。そういう場合もあるが、ほとんどの場合、その回答で納得しているだけで、本当の答えでないと分かっている。本当の答えを考えるなら、努力、辛抱、根性が必要になる。