あらすじ
システムから降りて好きなことをしても大丈夫! そこには楽しい人生が開けている。経済成長を追い求める企業でストレスを抱え自分の時間もなく働く人生よりも、小さく自営し、人と交流し、やりたいことをしたい。そう考えた著者の、開業までの道のりと、開業の様々な具体的なコツと考え方、生き方を伝える。文庫化にあたり15の方法を1章分追記。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
本作は、脱サラしてバーの店主をつとめる髙坂氏が、「もうやめちゃいな」と世に疲れた我々を、社畜人生からドロップアウトすることをそーっと誘う良書です笑
・・・
あー、会社辞めたいとか、好きなことだけして生きていけたらいいなあ、とか、そういう気持ちってありますよね。私なんかしょっちゅう笑
でも家族のことを思い出したり(忘れんなよ)、自分のプライドだったり、やっぱり収入は欲しいよねという我儘があったりして、このレッドオーシャンから抜け出せないでいると。
そんな時代にあって、筆者が強く主張するのは、「ダウンシフト」。誤解を恐れずに言えば、身の丈にあった生活にリサイズして(もちろん縮小方面ですよ)、そして自分の好きなことをしよう、というお話です。
・・・
その目玉といえば、半農半Xなる筆者の造語。
つまり半分は自給自足を行い、残りの半分は自分の好きなことを生業にするということです。
筆者のいう自給自足は、耕作放棄地を非常に安価(もしくはただ)で借り受けるなどして利用し、自然に近い形で育てるものらしく、いわゆる商品として育てる農業ではない様子。コメと大豆を植えるそうですが、手をかけすぎないことで、逆に力強い味わい深い実がなるそうです。
こうした主食は、そのまま食べたり、味噌や納豆などにして、余ればよそにあげたり、逆にもらったりして、食の安全を確保しつつ費用を抑えることができるとのことです。
って、これだけ書くと突飛ですが、一冊通じて読めば「ありかも」って思えると思います。ちなみに筆者が借り受けた耕作放棄地は千葉県匝瑳市という所。
・・・
また、身分の身の丈にあった費用(ライフスタイル基準金額)を割り出し、それにあった売上を目指し、それを超えるようならよりサボるよう勧めています。あ、結構飛びますが、すでにサラリーマンを辞めた前提でお話しています。
この頑張らないという視点はとても新鮮で、しかも貴重であると感じました。
儲けるのは悪いことではないし、むしろ楽しかったりするのですが、そこに没入すると自分が何のために生きているのかを見失いがちなんですよね。かなり脱力系の髙坂氏も本作を出版後、生業としている居酒屋の客が増え、売り上げが増えてしまい、倒れたそう。そしてそれ以降、あまのじゃく的に週休三日にし、適正収入に下げたとのこと。
これによりいわゆる機会損失が発生するのですが、氏はこれを「ワークシェアリング」ととらえ、近場の競合店を潤す結果となり、それはそれでよいことだととらえます(自分に必要な売り上げはあるしね)。さらにそうした競合店が逆に、「このお客さんはおたくの方があうと思うから」と紹介してくれたりするようになったそう。
つまり、独り勝ちではなく、コニュニティでの共存という視点なのですね。
・・・
ということで将来をどう生きようかと悩む、うらぶれたアラフィフにはかなり響きました。
近頃、老後2000万円問題とか色々言われますが、著者のいう半農半Xは個人的には実践可能に見え、こうした生き方をすれば、別に年金がなくても貯金もなくても生きていけそうな気がしました。
ここでは触れていませんが、悩める髙坂青年の半生が本の前半に掲載されており、それを含めて非常に示唆に富む本でした。
今の生き方にしっくり来ていない方、果てしない競争に疲れたかた、もっと自然に近い暮らしをしたいかた、大量生産・大量消費に疑問を感じているかた、こうした方々には大いにおすすめできる作品です。言いたいことが全然かけていませんが、私のような人にはめっちゃおすすめできる本です。お前どんなだよ、って話ですが、まあ読んでみてほしいっす。
Posted by ブクログ
減速、そしてダウンシフトという言葉にしっくりした。ゆっくりすることで見える・感じられることがある。
「世間に煽られて消費すればするほど、支払いのために労働時間が増え、余暇がなくなり、自由が奪われます。」
消費と労働時間の関係をここまではっきり気づかされたことはなかった。
モノが増えるほど、それぞれのモノたちを使う時間も減っていく。
荷物が少ない方が知恵が働き、好きなところにすぐ行ける。
より少なくという生き方こそが自由につながる。
スモールメリット。
ホンモノに残ってほしいものにお金を払う。ホンモノは長期で使えるのでトータルでは変わらない。気づき、知恵が得られる。
自然を汚せば、結局、人が汚れる。
幸せはなるものではなく、気づくもの。ないもの探しからあるもの探しへ。
ローンを組んでしまうと人生の選択肢が減ってしまう。
飽きないように、好きで楽しい仕事でも区切りをつけて、休みを確保することが、持続につながる。
過度な消費主義から抜け出し、農を営み自給し、(米と大豆があればなお良し)、自分でつくれるものはつくり、何があっても生き抜ける知恵と安心が得られる。
Posted by ブクログ
自分もいわゆるダウンシフトした一人であるため、ある程度共感というか納得はできた。成長を絶対的是とする価値観しか持てなかった人には良書であろう。
一方で著者の独りよがりに見える部分も多々ある。ダウンシフトが視界によぎる人って、著者のように行動力のある人は少ないのではないだろうか。著者は自分のことを怠け者とか横着者とか言っているが、自営はもちろん自炊や下手したら外出している時点で怠け者ではない。友人も多そうだし、妻帯者で子供もいるようだ。
著者の言うダウンシフトとは所詮生活レベルのダウンシフトであり、意識はむしろアップシフトしている。要は"意識高い系"である。人は、少なくとも自分は、この"意識の高さ"に胃もたれするのである。ブランド物が不要なのと同様に、オーガニック食材も不要なのだ。真のダウンシフトは自炊なんてエネルギーを要求されることはしない。カップラーメンを食べつつ、湯を沸かすのが面倒くさいと考えるのが、真のダウンシフターズの志向ではないだろうか。農業なんて冗談じゃない。疲れるじゃん。
ダメ人間であることを肯定してほしくてこの本を手に取ると、ひどいしっぺ返しを食らう。
Posted by ブクログ
基本的な主義主張には賛同だし、「総自給社会」「社会に不満を言うのでなく自身が望む社会を体現する」など素晴らしいメッセージも多数。
ただ、以下のような世代的な根底の違いも多々感じた。
私は90年代生まれのバブル崩壊後の世代。正社員として働き30代も近いけれど、年収は260万程度。それでもそれなりに日々を楽しくミニマムに生きている。そして私の周りには同じような同世代がゴロゴロいる。そんな世代の自分からすると、『ダウンシフトして年収350万、それでも楽しく生きてます!』という論旨は、逆に驚きであった。年収350万でダウンシフト、稼がない暮らしなのかあ…
解説にも似たようなことが書かれていたけれど、バブル世代の「頑張れば稼げるけど、そんなに頑張って稼がなくていいじゃん」と、バブル崩壊後世代の「頑張ったって稼げないんだから頑張らなくていいじゃん」の違いを強く感じた。
選択肢としてのダウンシフトと、最初からボトムにいる世代の帰農・ミニマム・反資本主義の差は、なかなか大きいのではないだろうか。
20-30代よりも、40代以上ぐらいの人の方が刺さるかもしれない。