あらすじ
5年前、遠夜(とおや)の隣に引っ越してきたハルコは特異体質の少女。数十キロにわたり花粉を消滅させるかわりに自分には有毒となるため、宇宙服のような防護スーツを着けなければ外出ができない。通学は遠夜がサポートを続けるなか、事故が起きる。それはクラスメートを巻き込む事件へと発展するのだが。――世界を敵に回してもハルコを守りたい、と願う17歳の決意が迸る圧倒的青春小説!
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匿名
高校生視点の現実
オトナはいつだって、自身に都合のいい情報しか子供に伝えない。
誰が正しく誰が間違っているのかなんてことは関係なく、誠実に現実と向き合っていくことの大切さを主人公は学んだのではないだろうか。
邪魔なもの煩わしいものを排除して蓋をして見ないようにして、自分の生活を脅かすモノがなくなることで平和になったと思う大人たちが間違っているとは言えないのが現実の難しいところなのだと考えさせられる一冊となっている。
Posted by ブクログ
純愛ものとして帯やあらすじを書かれているけれど、この小説のよさはそこではないと思った(出版社の方には申し訳ないけれど)。
いや、純愛要素はたしかにあるし、恋愛小説として魅力的な場面もある。ハルコは可愛い。ふたりの関係は切ない。だけどそれでもわたしにとってこの小説は、怒りと暴力についての物語であって、義憤や、義憤に姿を借りた自己弁護がいかに簡単に人の目を眩ますかという話だ。
人と人は、どうしようもなくわかり合えない。世界は複雑で、人間は複雑だ。だからわかりやすい話に飛びつく。わからないもの、自分に都合の悪いもの、自分を否定する他者を拒絶し、自分の怒りを正当化するために敵を作りたがる。群れて、自分と同じ意見の者に囲まれて安心したがる。それがいかに不毛で、危うく、寂しいことか。これはそういう物語だと思う。
主人公はそれに甘んじない。安易に他者の声に流されることを拒み、自分の怒りに流されることを危ぶむ。自分の守りたいものを見失うことをおそれる。人が理解せずに拒絶するものを見定めようとする。
わたしたちは、簡単に怒って、いちばん大事なことを見落とす。自分を疑えない人間は怖い。