あらすじ
ナタリーが大学に入学するまで三週間ほどを残して迎えた初秋の日曜日の午後。鼻持ちならない文筆家の父と、夫への軽蔑を隠さない母が催したホームパーティでの“悪夢”を経て、初めての寮生活を迎えた17才のナタリーは、大きく変わった生活環境に戸惑いを隠せないでいた。同年代の少女への優越感と劣等感の狭間で揺れ動く中、風変わりな女生徒トニーとの出会いによって真の安寧を手にしたかに見えたが……思春期の少女の危うい精神の揺らぎを、残酷さと一掬の愛情を交えて描く。『ずっとお城で暮らしてる』の著者の初期を代表する傑作長編小説。/解説=深緑野分
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Posted by ブクログ
最後どうなってしまうのかとおもった。ナタリーのキャラクター造形が見事で、性暴行のトラウマから回復できないまま、周りの全員を見下して己の尊厳をなんとか保っている。
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文体は読みやすいし表現はうつくしいし、空想に没入しがちの主人公の懊悩の過程は読んでいてたのしいのです。そしてウルフの作品みたいに作品全体に妙な緊張感もあります。それにしても、比喩表現と仄めかしと空想世界の描写が渾然一体となっており、巻末の解説を読んでやっと得心した箇所もままあり。私には難しい作品でした。
Posted by ブクログ
シャーリイ・ジャクスンがこういう小説を書くのか、と思いきや解説まで読んで(読まないと浅学無知な自分にはわからない)、やはり魔女じゃないかと言いたくなった。
どこかしらに不穏さと幻想さが漂う本編は大変良いし、クライマックスまでそれで見せるのはこの作家ならでは。ほかの作家がこれをやると盛大に破綻する。真似にしかならないからだ。しかしこの何とも言えない後味は真に才能である。
Posted by ブクログ
独善的な父親と人生への希望を失った母親の元に生まれた空想好きな少女ナタリー。
ナタリーは両親との暮らしから離れ、大学の女子寮に入る。
やっと両親から解放されたと悦ぶのも束の間、同級生や上級生に戸惑うことになる。
ありがちな成長物語かと思いきや、どことなく様子が異なる。
文章に多くのメタファーが隠されており、読み方次第で解釈も膨らんでくる。
そこばかりに気を捉われると、物語そのものを見失ってしまいそうになる。
こう書くと難しい印象になってしまうが、特に難しい問題を提起しているわけではないため、普通に読んで気づけばそれで良いし、気づかないならそれはそれで問題ないと思う。
物語全体に比喩暗喩が多いため、幻想的な空気が漂っている。
好みは別れる作品かもしれない。
わたしは正直に言うと、そこまで作品の魅力に浸れたわけではないのだが、他の作品はどうなのかという興味は覚えた。
解説で深緑野分さんが、『ジャクスンの作品に惹かれる者は、魔術に憧れているか、魔女見習いであり、あるいは本物の魔女である。』と書いており、そうなのかもしれないと感じたため、恐らくわたしは魔女に憧れていないし、魔女見習いでもなく、もちろん魔女でもなかったということだろう。
主人公ナタリーは17才。それくらいの年頃は、自意識が過剰であるのに自己肯定感が乏しく、理想と現実との乖離に戸惑い悩み、腹立たしく感じるものだと思う。
そういう少女が親元から離れるということは、とてつもない大事件であり、環境に上手く適応できないことも多い。
そういう少女の様子が、作者の文章によって効果的に描かれていると感じた。
ナタリーがやっと出会えた友だちと感じたトニー。
彼女は本当に存在していたのか。
トニーはナタリーの一部、または理想の具現化ではないのか。
そう考えたほうが、ラストへ無理なく繋がるように感じた。
この作品は読むたび、読む時期によって見えてくるもの思うことが変わってくるだろう。
読者自身の成熟度がわかる作品というものは面白いと思う。
暫く経ってから、わたしがこの作品から何を読み取るのか楽しみではある。
こうして献本で、自分では買ってまで読まない作品に出会えることは本当にありがたい。
生きていれば、この先まだ多くの作品を生み出したであろう作家シャーリー・ジャクスンを知ることができて嬉しい。他の作品も探して読んでみたい。