あらすじ
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか? 死ぬべきか? いや、しかし、でも……。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか? そして、最後にした決断は――。魂を震わすクライム・ロードノヴェル。
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Posted by ブクログ
こうするしかなかったんだ。
どうしようもなかったんだ。
心の中で繰り返しながら、高速道路を走る男。
東京~新潟~函館~宗谷岬~仙台~四国~大阪~小倉~沖縄。。。2年4か月に及ぶ逃亡生活のなかで、彼が下した決断とは。
彼の人生は、最愛の妻を殺した時点で終わったものに等しかった。自殺することも自首することもできず、何人もの人と関わり、助けられ、騙され、与えられ、盗まれ、魂の旅を続ける。「どうしてこんなところに」と自らに問いかけながら、流れ流され、苦しみのたうちまわる姿がなぜか心を打つ。
仙台での復興の仕事、釜ヶ崎での日雇い仕事、どん底の生活を経て、そこに生きる人々のそれぞれの事情や深い絶望を目の当たりにし、絶望の中でこそ醸成される彼らの本当の優しさに触れる。
長い彷徨の果て、ある決断を下し、沖縄からの船を降りるラストシーンは指名手配犯の逃亡の終わりとは思えないほど希望と光に満ちている。
帯の「魂のクライム・ロードノベル」という言葉がピッタリの読み応え抜群の作品。